現代の水攻め(ダム破壊)は罪! | cynthia-dr-murazumiのブログ

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ウクライナの南部ヘルソン州で起きたカホフカ水力発電所の巨大ダム決壊によって生じたドニプロ(ドニエプロ)川の洪水によって、30の集落が浸水し、うち10集落がロシアの支配地域にあると伝えられています。今後さらに浸水地帯が拡大しそうです。ダム下流域は川を境に北側がウクライナ、南側がロシアの支配地域になっていますが、洪水によって大きな被害を生じているようです。

ダムの破壊はロシア軍の仕業と考えられています。洪水によってこの地域でのウクライナ軍の反攻を阻止するためと思われます。

 

ドニエプル川のダム破壊は第二次世界大戦(WWⅡ)中の1941年8月にもありました。

同年6月下旬にバルバロッサ作戦が開始され、ドイツ軍がソ連に侵攻しました。スターリンはドイツ軍の進軍を止めるためにダム破壊を命じて実行したのです。このダム破壊によって、ドイツ軍は発電所を占拠して電力を確保できなくなり、、また進軍を阻まれたのでした。ただし、この人為的洪水による死者はドイツ軍よりも、ソ連軍と民間人の方が多かったのです。

スターリン崇拝者のロシア大統領が、このダム破壊・洪水に触発されて、今回のダム破壊を命じたのではないか言われていますが、狂気の沙汰のひとつと言えるでしょう。

 

同じくWWⅡの1944年6月、連合軍によるノルマンディー上陸作戦が行われました。ドイツ軍占領下のフランスに空と海から攻めたのですが、米軍空挺部隊が担当した地域では、空挺部隊の作戦行動を阻むためにドイツ軍は川をせき止めて人工的に沼地を作っていました。このためこれらの沼に誤って降下し、溺死する空挺隊員が少なからずいたのです。

こちらはダム破壊ではなく、逆に川をせき止めて水を貯めたやり方での水攻めです。

 

この上陸作戦から1年ほど前にさかのぼる1943年5月、英空軍のランカスター爆撃機が、ドイツ最大の工業地帯ルール地方の電力を供給するダム群の爆撃を行っています。夜間に特殊爆弾を投下して2か所の大型ダムの破壊に成功したのです。特殊爆弾を搭載するために改修された機体は「ダムバスター」、作戦に従事した飛行隊と指揮官は「ダムバスターズ」と呼ばれたのでした。

 

ドラム缶に似た反跳爆弾を投下した瞬間を描いた模型のボックスアート

 

レベルからもボックスアートを替えて発売され続けています

 

これらのダムの破壊によって下流域に水害を引き起こし、死者1200名以上、死亡家畜6500頭以上、流出した橋25カ所、操業不能になった軍需工場125ヵ所、耕作不能となった農地約3000ヘクタールと大きな被害をもたらしたのです。

 

フィクションですが、WWⅡ中の戦いを描いた戦争映画の名作「ナバロンの要塞」(1961年)の続編として製作された「ナバロンの嵐」(1978年)では、ドイツ軍の進撃路に架かる橋を破壊する目的で、その川の上流にあるダムを爆破・決壊させ、流れ出した水の勢いで、その目的を達成しています。

これが現実だったら、洪水によって下流域に住む民間人などに多大な被害が出ることになります。

 

「スター・ウォーズ」(1977年)で一躍スターになったハリソン・フォードも出演

 

とても古い話になりますが、日本での水攻めと言えば、豊臣秀吉が行った「日本三大水攻め」が有名で、備中高松城の戦い太田城の戦い忍城の戦いがあります。

中国の三国志にも水攻めがあるようです。

 

今回のドニプロ川のダム破壊ですが、ジュネーブ条約に代表される国際人道法に違反している可能性があるそうです。1977年にジュネーム条約に追加議定書として加わった内容に「ダム、堤防、原子力発電所については、住民の間に重大な損失をもたらす場合には、攻撃の対象にしてはならない」とあるからです。

この議定書以前はダムを破壊してもお咎めなかったわけですから、WW2時でのダム破壊は英雄的行為として称賛されていたのでしょう。

とは言え、映画「ナバロンの嵐」が公開されたのは、この追加議定書の後ですから、WW2を舞台にしているとはいえ、非難されなかったのでしょうか?

 

とにかく現代では良い大人(子どもでは無理)はダム破壊行為を真似してはいけないのです。