『宗教の起源 私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』ロビン・ダンバー

 

『宗教の起源 私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』ロビン・ダンバー、小田哲(訳)、白揚社

 様々な書評が書かれているので、興味がある方は、検索していただければ充実したものが沢山読めると思いますので、今回は思い切ってかなり意訳的に要約するとともに、個人的な関心事について箇条書きでまとめました。

・霊長類はグルーミングによって親密な関係をつくり、集団として外的から身を守る結束社会集団をつくるが、その上限は50

・これ以上の集団生活ではストレスが多くなり、メスの繁殖能力が下がるので生存に適さない(p.91)

・サルがグルーミングに寄って親密な集団を維持できるのは50頭だが、ヒトがこれ以上の社会集団を維持して発展していくためには、グルーミングに変わり、宴を開き、歌って踊って宗教儀式でハイになり、エンドルフィンを脳内に分泌させることが必要(p.124-)

・(感想)合唱団は人数が多いほど、エンドルフィンが多く分泌されるというのは、日本の年末で第九が公演されている理由だろうし、宗教的な感情が恋愛感情と似ているという指摘は、旧約聖書の詩篇にエロチシズムを感じさせる歌が多く含まれているのを思い起こさせてくれます

・エンドルフィン(endorphin)は内因性モルヒネ(endogenous morphine)の略(p.308)

・ヒトが真に親密性を感じて暮らすことができる集団のサイズの上限は150人で、これは「ダンバー数」として広く認められている

・《原理主義的な宗教共同体では、大人数のまま共同体を保つことは難しく、秩序が乱れて混乱するため、あえて分けるのだという。大人数のまま共同体を維持するには、正式な法体系と法執行の仕組みが必要になる》(p.112-)

・(感想)宗教団体が内部にセクトを発生させ、分裂と抗争を繰り返すのはダンバー数が関係しているのかもしれません。吉本隆明さんは宗教も政治団体も同じようなものだと言っていたと思いますが、左翼だけでなく、自民党の派閥も似ているな、と感じました。田中派も経世会も安倍派(清和会)も100人を超えて最強になったな、と思ったら分裂、瓦解しましたから(安倍派は現在進行形でしょうけど)

・150人の共同体は50人のバンド3つで構成され、500人程度のメガバンドは3つの共同体から成り立つ

・ヒトが関係を深めるのは言語、出身地、学歴、趣味と興味、世界観(宗教、道徳、政治の立場)、音楽の好み、ユーモアのセンスという「友情の七つの柱」(p.129)

・意外にも個人の社会的ネットワークの70%は女性だけ、あるいは男性だけ(p.299)

・宗教は今でも貧困地域や格差の激しい地域で盛んに信仰されている。世俗宗教で唯一、カリスマ指導者が新たな未来という幻想を描きだして、大規模な熱狂を生み出したのはナチ党だけだった(p.285)