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日本語には敬語という独特の言葉の文化があります。

敬語の中には、尊敬語、謙譲語、丁寧語の3種類があり、ケースによってそれらの敬語を使い分けるという言葉の歴史があるのです。

しかし最近、少々違和感のある敬語遣いが目立っていると思ったことがありませんか?

たとえば、
「~させていただけないでしょうか」

「~と存じますが如何でしょうか」
「~と存じますが如何でしょうか」
といった遠回しな表現の敬語です。

こうした言葉遣いは、必用以上にへりくだった印象で敬語というよりも卑屈さを感じさせるような表現だと思うのです。

このような言葉を遣うその意図は、決して「丁寧」でも「謙譲」でもなく、ましてや「尊敬」ではありません。その意図はズバリ保身です。

相手に嫌われたくない、責任を取りたく無い、といった「保身」が言葉を必用以上に歪め、卑屈な言い方にしてしまっているのです。

このような卑屈っぽい表現はビジネスに限ることではありません。ワイドショーでは、芸能人が「私事ではありますが、結婚をご報告させていただきます」とやっています。

様々なソーシャルメディアにおいても、意識高い系のビジネスパーソンが「アマゾンランキングで一位を取らせていただきました!」などど変な感じでドヤっていませんか?

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こんな卑屈っぽい言葉遣いが蔓延してしまった理由は、ただひとつ。「嫌われないこと」を最優先する人が増えたからなのです。

特にビジネスの現場では「エンドユーザーを満足させること」が「取引先企業の担当者」を満足させることと同義ではないことが多いものです。

短期的な顧客満足と長期的な顧客満足が異なることも多く様々なしがらみや事情が絡むことも多いものです。

結果、多くのビジネスパーソンは「エンドユーザーを満足させる」ことではなく、「取引先や上司に嫌われないこと」を目的にしてしまうのです。

部下からもバカにされたくないと思っていてストレスも溜めています。

仕事相手に嫌な指示をしなくてはならない。でも嫌われたくは無い。

だから「やってください」ではなく「ご相談させていただけないでしょうか」となってしまうのです。

判断しなくてはいけないけれど、責任は取りたくはない。なので「本案でお願いします」ではなく「本案でのご採用をご検討いただけないでしょうか」となる。

卑屈っぽい言葉遣いのデメリットは単純で、ビジネスの生産性を著しく低下させます。

先ず書くことに時間が掛かります。あれやこれやと逡巡しながら考えたメールの文面は回りくどくて長く、読むのにも一苦労してしまうのです。そもそも真意が中々伝わらないのです。

確かに卑屈っぽい言葉を使えば、嫌われることは減るのかもしれない。しかし、その代償は相手に足元を見られて舐められてしまうのです。

そして次から次無理難題を要求され、値切られることにも繋がります。

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では、どうすれば良いのでしょうか。

まず「させていただく」という言葉を使わないようにしましょう。「させていただく」は「いたします」で十分です。これだけで卑屈っぽさは無くなるものです。

また、よくありがちですが、単語の頭に「お」や「ご」をやたらと付けない事も大切です。メールを「お送りします」であるとか、「お打合せ」とかの表現です。

私も自分のメールを読み返してみると「メールをお送りいたします」などの書き方を多用していることに気付きました。今では、「送ります」とさらっと書くように意識しています。

卑屈っぽい言い方、書き方の隆盛には、ソーシャルメディアの普及との因果関係が深いのではないかと思っています。

そうです。
「いいね」ボタンの浸透です。誰もが全世界に情報発信できる時代で、「いいね」も記号化されて世界共通です。

「嫌われたくない」と慎重になりすぎて、卑屈っぽい表現が当たり前となってしまったのです。

しかし、これから本格化するテレワークの時代には全く合わない考え方となります。

オンライン会議やチャットツールでは、相手の表情や場の空気、行間のニュアンスといったものは重要視されません。

短時間で端的なコミュニケーションが重要視されるのに、いちいち「~いただけないでしょうか」などと送信したら単なるブレーキとなります。

これからの時代、ことビジネスの現場においては相手に多少嫌われてもビジネスの目的を達成できればOKと割り切りましょう。

卑屈で回りくどい表現のコミュニケーションは帰って相手の機嫌を損ねてマイナスの評価となってしまう時代が来ているのです。