前回までの引越遍歴

 

 

 

就職も決まりぬるま湯の学生生活も残りわずか

 

就職した会社は本社は東京にあるものの

本社にはいわゆる穀潰し間接部門のみが所在し

主体となる技術部門の所在は神奈川県内と各地方都市に支社にある

 

多くの会社がそうであるように新入社員は人事部に配属され研修期間に突入する

研修は神奈川県内の技術部門の施設にて実施されるとのこと

 

ここで採用までの背景を説明

首都圏を主とした会社なので採用人数は関東圏が最も多い

加えて前述の支社でも採用活動をしており30%程度は地方採用者となる

 

一方で研修は全新入社員が神奈川県に集められて実施されることから

近県在住者以外は会社の寮を利用する者が大多数を占めることになる

 

ワタシも大学と同じ県内とはなるものの

・卒業と同時に出なければならず

・実家通いは無謀な距離であり

・賃貸を借りる資金的余裕はない

ため入寮一択となるのであるが...

 

寮がこれまた凄まじかったのである...

 

 

 

 

某年4月1日に予定されている入社式が2日後に迫った3月30日

学生時代のアパートからの引越を地元(実家)の友人の助けを借りて実行する

 

大学時代のアパートは継続して妹が入居することになったので

大家への引き渡しなどの手続きは不要となり

生活家電を除いた荷物だけで済むようになったので車1台での移動となった

 

少ない荷物とはいえ1300ccのハッチバック車である

後部座席と荷室に荷物を満載して社員寮までの県内移動

 

ナビもない時代に事前に配布された地図でなんとか寮付近までは到着

時間は18時ぐらいであったが3月なので辺りはすでに真っ暗である

 

川崎市某区の起伏の多い閑静な住宅街の一角を地図は示しているが

いかんせん住宅地なので周囲の見通しが悪く寮っぽい建物は見当たらない

 

付近を2周さ迷った時に助手席の友人が指を差しながら叫ぶ

「も、もしかしてコレじゃない!?」

 

 

 

 

 

その指し示す先にあったのは

どんよりとした巨大木造2階建てアパート

今時(20世紀末)の川崎市にこんな建物が現存するのか!?

 

大学時代のアパートも古い木造アパートであったが

比較にならないぐらいの老朽木造建築物

 

 

間違いなく当時の耐震基準をクリアしてない木造建築

2日後にはここに住まなければらないワタシはもちろんのコト

同行した友人もドン引きである

 

 

とはいえこの土壇場で入寮を覆すわけにもいかず

寮のたたずまいを上回るどんよりした気持ちのまま中に入る

 

 

寮だけあって部屋数はかなりあるようで玄関も広い

玄関横の管理人室を訪ねて諸々を伝える

管理人のご老体は入寮者名簿を確認して部屋に案内してくれた

ガランとした6畳の和室に布団が人組

事前に新入社員は1部屋2人となると聞いていたので確認すると

相部屋となる人が入寮を辞退した模様

 

痛いほど気持ちは理解できる

 

がワタシにとっては不幸中の幸いである

この寮の上、相部屋はハードルが高すぎる

 

 

部屋の鍵を渡された後に寮内設備の説明をうける

(1) 共同トイレ

(2) 共同洗面所

(3) 共同浴場

 

清々しいほどの3Kである

「めぞん一刻」の一刻館を何倍にもして風呂があると想像すると最適解

管理人さんはジジィだけどな

 

 

平常心に回復できないまま友人と荷物を運び入れ

その日はいったん実家に戻るが帰路の車内はほぼお通夜

 

翌3月31日に実家から改めて寮に移動

寮に車を駐車する許可がないので電車での移動となる

 

移動中の車内は大学時代の楽しい思い出をを回想しながらも

入学当初のホームシックとは異なる

どんよりした気持ち

 

を引きずりながら寮に到着

昨夜と異なり今日は昼間だったが

寮は日の光を浴びてもやっぱりどんよりしていることに変わりはなかった

 

昨日の引越しは夢であって欲しい

ていうか今この眼前の光景が夢であって欲しいと思いながら部屋のドアを開けると

荷物は昨日運び込んだままそこに存在しており

無慈悲な現実に引き戻される

 

 

昨夜はバタバタしていたので改めて部屋を確認するも

びっくりするぐらい木造

窓のサッシがアルミではなく木造

鍵はクレセント錠などではなくネジ鍵

 こんなやつ

 

 

戦中か!

 

築100年のじーちゃんの家でしか見たことない遺物を目の当たりにする

 

当然ながらエアコンなどという快適装備はない

電気で動くものは電灯ぐらい

さすがにコンセントはあった

 

 

とまぁここまでは絶望的な感想しか書いていないが悪いことばかりでもない

 

「共同」部分が多いだけに同期との交流が促進されてあっという間に仲良くなる

一方で集団に必ず含まれる変なヤツもいたのだがその話は紹介済

 

 

 

さらに翌日の4月1日に無事に入社、同時に社員研修が始まる

研修は大学での専攻などでクラス分けされて2クラスに別けられる

(1) 頭の良いひとたち

(2) ぬるいひとたち

ワタシは当時

ディレクトリってなに?

という状況だったため必然的に(2)となる

(1)と(2)の差は研修期間で数か月長い設定となる

=よりぬるい生活が保障される

 

入社から1か月ほどが経過した5月のある日

(最後まで存在意義が不明だった)寮長から駐車場の使用許可がでる

駐車場とは言っても寮の裏手の空き地なんだが...

さっそく実家から車を持ってくる人が数人

もちろんワタシも移動させる

 

移動手段を得て暇を持て余していた新入社員たちは活動が活発になる

 

定時退社+休出なしという環境をいいことに金曜日の夜から

唐突に下道で長野に向かって走り出し

 

夜明けに長野駅に到着するもやることなく

ラーメン屋でラーメンだけ食って帰るトカ

 

金曜日の仕事おわりに飲みすぎて終電で小田原駅まで乗り過ごした同期を

携帯電話もない時代に捜索に行ったことトカ(救出には失敗)

 

そんなこんなで不便で大変なこともあったが

合宿のようで楽しくもあり良い経験だった

 

 

そしてさらに数か月後

研修の修了と共にこの寮生活もおわりを迎えるのである

 

続く