あんまり笑ってるイメージの無い女優さんです。いや、もちろん笑ってないことは無いはずなんだけど、笑顔が全然印象に残ってなくて、どっちかと言えば眉間にシワを寄せた顔とか、不機嫌そうな顔のイメージが強い。それが最大限に活かされた映画かも知れない、彼女演ずるインディアはちょっと気難しい変り者と言った雰囲気の少女です。
このワンカットを見てもわかる様に映像は非常に美しいです。ちょっとダークな耽美テイスト、邦題の「イノセント・ガーデン」は原題の「Stoker」とは全く関係の無い言葉ですが、案外悪く無い。因みに「Stoker」はここに出て来る家族の苗字、つまり「ストーカー家の物語」(ホラーで、ファミリーストーリーでサイコスリラー)なんですね。このストーカーは「吸血鬼ドラキュラ」のブラム・ストーカーから取ってるそうです、脚本家の趣味らしい。良い趣味ですね。
彼女はお父さんっ子です、母親には余り懐いていない感じ。父親は毎年彼女の誕生日に庭にプレゼントの靴を隠しておいてそれを彼女が探す事になっています。しかし今年のプレゼントは鍵。インディアは何の鍵かわからないままペンダントとしてそれを首にかけておきます。毎年同じデザインの靴なんですよ、これがなかなか象徴的なアイテムとなります。
その矢先、父親は事故で亡くなり入れ替わる様に長年旅していた叔父のチャールズが帰って来ます、この登場の仕方でかなりアヤしい、タダモノでは無い予感です。この叔父の役、最初はコリン・ファースがやる予定だったそうですが、コリンが降板したためマシュー・グッドに。このマシュー・グッドがまるで獲物を狙う爬虫類みたいな目をしていてなかなか良いです。
しかも、夫を亡くしたばかりだと言うのに、母親はこの叔父と何だか良い感じになってしまうんで、ますますフクザツなインディア。この時点ではチャールズの目的もよくわかりません。
食事のシーンなんかかなり緊張感あってですね、嫌だなあ、こんな食事
母親のイヴリンにかなり接近したと思えば急にインディアに方向転換するチャールズ。彼の目的は最初っからインディアだったんですな。インディアには自分の正体を知らせようと仕向けるんですが、彼女はなかなか気づかなかった、その過程がこの映画のストーリーなんです。父親はインディアの資質を見抜いていて、それを上手く世間と馴染ませる様に彼女に狩猟を教えていた「時々悪いことをすれば、最悪なことはしない」から。しかし、チャールズは違いました、自分と同じ資質を持つインディアを目覚めさせようとし、それに成功するんですが、それは同時に自らの死でもあった、そこにチャールズが気づいていたかどうかはわかりません。
チャールズの正体を知るストーカー家の家政婦、何故か彼を恐れる大叔母のジンが姿を消し、そしてインディアの同級生……インディアは鳥ではなく人を殺める快楽に目覚める、そして父親の残してくれた鍵で全てを知ってしまいます。そしてチャールズはイヴリンも……でもこの時、インディアは母親のイヴリンを助けたのでは無いと思うんですよね、多分、自分が目覚め、全てを知ってしまった以上、チャールズはもう彼女にとって用済みになってしまった、ましてやチャールズはインディアにとって憎むべき相手でもあったはず。
そしてあの保安官は彼女にとって獲物と同じ、実に楽しそうに獲物を狙うインディア。これからの彼女の生き方を表したシーンでしょうか。
美しくて最凶のサイコパス誕生です。
あ、ポスター等のビジュアルが非常に綺麗なので、ついでに貼っておきますね。
†††パク・チャヌク監督作品
インディア・ストーカー:ミア・ワシコウスカ
イヴリン・ストーカー:ニコール・キッドマン
チャールズ・ストーカー:マシュー・グッド
リチャード・ストーカー:ダーモット・マローニー
グウェンドリン・ストーカー:ジャッキー・ウィーヴァー
ホイップ・テイラー:オールデン・エアエンライク
マクガーリック夫人:フィリス・サマーヴィル
ハワード保安官:ラルフ・ブラウン
†††2013年 アメリカ・イギリス
******** ********