何やら結構な話題になってましたね、これ。
すごく怖いと言う人がかなりおられた様に思いますが、私はどっちかと言うと怖いよりも「何かしっくり来ない気持ち悪さ」みたいなものが最後まで付きまとっていて、違和感に落ち着かない映画と言う感じがしました。
だって最初っからぶっ壊れてるじゃないですか、この人たち。そっから更に念入りに徹底的にぶっ壊してみましたって映画ですよ、これ。そこら辺でキューブリックの「シャイニング」を思い出しますが、まだあっちの方がハロランとかいるし、ダニーは普通に可愛いので救いがある。大体、家族に見えないんですよ、何でピーターだけ中東系(アラブ系?)な顔してるの、おまけに妹のチャーリーも所謂「可愛い女の子」ではない相当クセのあるルックスで、それだけでもそこに何かあるんじゃないかと思ってしまうくらいです。おまけに複雑な理由があり祖母に懐いていて家族からとちょっと離れている感じが見えて取れます。
物凄く嫌な家族です。
母親のアニーはその母であるエレンが解離性同一性障害、父親は統合失調症、兄は被害的な妄想を抱え自殺と言う家系で自分も夢遊病に悩まされていて、不安だらけ。息子が生まれた時も普通に喜べなかったとピーター本人に告げてしまうシーンもあります。
ピーターは普通の高校生って感じでしたが、始まって早々にとんでもない事故を起こして変になってしまいますし、唯一穏やかでまともそうなお父さんですが、何かよそよそしくて、家族の色んな事に対してまるで他人事みたいですし、落ち着く所が無いんですよ、どこにも。
じゃあ、周りはどうかって言うとこれまた親切な隣人とか親身になってくれる同級生とかいなくて全く救いがありません。エレンが通っているカウンセリングのグループで親切そうに近寄って来たジョアンですが、実は最悪な人物だったことがわかります。
そんな中で家族全体が追い詰められて行く様な息苦しさがあります。しかも皆ヤな死に方するんですよ、また。基本、首が取られます。それには理由がありました。
諸悪の根源は、映画の冒頭で亡くなったアニーの母、エレンが悪魔キング・パイモンを信仰するカルト教団の王妃であった事なんですが、これがキングパイモン。
首が3つ下がっています。
最初の首は亡くなったエレンの遺体から。
次は、ピーターが起こした事故でチャーリーの首が。
アニーが無理矢理ピーターと一緒にパーティーに行かせて、そこで食べたケーキのナッツが原因で、ナッツアレルギーのチャーリーは呼吸困難に陥ります。ここでも何であんなに嫌がるチャーリーをパーティーに行かせるのかと思いますが、これは既にキング・パイモンによって決められていた事だったと言うのがわかります。パーティーへ行く途中で映る電柱にはキング・パイモンの紋章が。で、ピーターは、車で病院へ急ぐのですが、チャーリーが苦し紛れに車の窓から顔を出したのが運の尽きでした。
そして3つ目は母、アニーの首です。アニーは夫に暖炉の火が燃え移ってあっと言うまに黒焦げになってしまうのを見て、すっかりおかしくなってしまったのでした。
まあ、このアニー役のトニ・コレットの演技は凄いです。何が怖いってアニーの顔ですよ、それこそ「シャイニング」のシェリー・デュバルと良い勝負が出来そう。
そして残ったピーターの肉体はキング・パイモンのための依り代として差し出されるのでした、と言うまあ悪魔と言うかカルト教団と言うか、そう言う映画はたくさんありますけど、これはかなりスッキリしない部類に入るんじゃないでしょうか。ピーターの肉体を手に入れるためにそこまでせんならんのですか、やれやれって気がしないでもないですが、「継承されるもの」つまり「逃れられない運命」とすると普通にある事で、例えば親の嫌なとこが似ちゃったみたいな小さい事も入ると思うんですよね。スッキリしないのはそのせいかな。
ところで、チャーリー役のミリー・シャピロちゃんですが、普段もあの調子だったらどうしようと思いますけど、ご安心召され。普段はこんなに可愛い女の子でした。結構経歴も凄いのよ。安心したねえ〜(´∀`*)
めでたし、めでたし。
†††アリ・アスター監督作品
アニー・グラハム:トニ・コレット
スティーブ・グラハム:ガブリエル・バーン
ピーター・グラハム:アレックス・ウルフ
チャーリー・グラハム:ミリー・シャピロ
ジョアン:アン・ダウド
†††2018年 アメリカ
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