本日のネタは前から疑問に思っていた件。先月、中日新聞に関連記事が出てきたので投稿してみる。
(1)東海3県って何?
東京に住んでウン十年になる。ただ、コロナ禍でなんとも東京暮らしが難しくなってこのかた、遠州地方の実家にコロナ疎開している期間が長くなった。
その中で気になるのが「東海3県」ってワードだ。岐阜県はいにしえから近江、美濃、飛騨、信濃、上野と続く東山道のルートがしっくりくるし、個人的にもこれまで岐阜県で関わりがあったのは飛騨古川と西穂独標くらいだった。なので、東海3県って太平洋に面した愛知県、静岡県、三重県じゃないの、濃尾平野が続いているから東海4県だと岐阜県も加えるんだろうな、と疑う事なく信じ込んでいた。
なのに、TVから聞こえてくる声はそうでもない。NHKの天気予報は東海・北陸地方の天気をこんな風に伝えている。
1枚目:東海地方=愛知県、三重県、岐阜県
その次:静岡県
ラスト:北陸地方=富山県、石川県、福井県
確かに静岡県は伊豆、駿河、遠州とヨコに長いし、遠州灘、駿河湾、伊豆と海域も異なるので詳しく伝えてくれるのはありがたい。納得だ。
でも何故、愛知県は岐阜県と三重県で固まって行動するのだろうか? 県庁所在地の名古屋市と岐阜市が地理的に近いせいだけだろうか。これは新型コロナの緊急事態宣言や蔓延防止策の申請を報道している時にも違和感があった。飛騨地方はともかく美濃地方が中京経済圏として名古屋と一体化しているのは分かるんだけど。
(2)中日新聞東海本社の記事
さて、そんな事をボンヤリと考えていたら、2/24付け中日新聞の社会面の「YourScoop(ユースク)」欄にある記事が載っていた。
「東海三県 静岡だけ別は・・・寂しいよ」
<中日新聞2/24版>
やっぱり同じような疑問を抱えていた人がいたのだ。投稿したのは磐田市出身の女子大生だと言う。私は高校生の頃まで遠州地方で育ってきて、当時は何の疑問も思ってなかった。コロナ禍の生活環境の変化でなんとく遠州地方で寝起きする日が多くなって、最近になりモヤモヤとしっくりこない感情を抱くようになったものだ。
ちなみに、中日新聞の東海本社は浜松市にある。遠州地方に東海本社を置く中日新聞の記事では、官公庁の管轄にその解を見出している。それも1つの説明だと思う。果たしてそれでスッキリ納得できるか?
(3)テレビが及ぼす一体感
東海地方としての一体感を示すものを挙げてみよう。中部電力もJR東海も静岡県が含まれている。ただ、熱海から先の伊東線だけはJR東日本になっていてSUICAとTOICAの融通が利かないのが煩わしい。ここ最近で物議を醸したセンバツ高校野球の東海地区も同様だ。
静岡県だけ別のモノを考えてみよう。判りやすいのはテレビ局だ。静岡県にはSBS静岡放送やテレビ静岡など在京キー局に対応した地方局が4局運営されている。ただ、最近になって三重県でTVを付けるとメーテレや中京テレビが映る事を知った。唯一三重テレビが営業しているけどここはキチンと把握できていないので割愛。岐阜県も完全に愛知県のテレビそのままだ。
<県別の系列局を一部抜粋>
※出典:
https://ouenbu.com/life/tv.html
このテレビの文化圏とぴったり合わせてきたのがJR東海の「さわやかウォーキング」だ。JR東日本では東日本エリア丸ごとで「駅からハイキング」を展開しているのと比べて、JR東海は静岡県(+身延線エリア)とそれ以外(関西や長野県を含む)で完全に線を引いている。愛知県豊橋市と静岡県湖西市は同じ経済圏になっているのに、これは気になる分断だ。
<名古屋・関西地区、静岡地区(2)>
1つ変わった例を挙げると、東海地震の震源域が静岡県だろうと言うのはおそらく全国共通の認識になっている。
(4)東海道五十三次
これまで縁が無かった三重県鈴鹿山系のヤマに登山するようになり、四日市が名古屋から至近距離にある事を知ってビックリした。確かにここは中京圏だ。近鉄の路線網が張り巡らされており、その先の奈良県のヤマにも手が届くと知った。大台ケ原も近いじゃないか。
今年は御在所岳の樹氷を見ようと、中道登山道を登ってみた。山頂で標高1200mあるとは言え、静岡県よりも南に位置する御在所岳にこんなに雪が積もっているとは思いもしなかった。
<2022.2御在所岳山頂にて>
江戸時代の東海道五十三次では相模の国(神奈川県)から西へ静岡県、愛知県、三重県と歩いて滋賀県に続いていく。宮宿(熱田宿)の次は木曽三川を一気に跨ぐと桑名宿に飛べる、その隣りが四日市宿になるのだ。これは漫然と地図を見ているだけでは判らなかった。とにかく登山をキッカケに西を攻めて初めて、名古屋から四日市まで一級河川をいくつも飛び越えていく事に驚いた。
ついでに言えば、JR東海道本線が名古屋以西に岐阜、大垣、関ヶ原、米原と続いているので、恥ずかしながら東海道五十三次も同じルートを辿って京に続いているものだと信じ込んでいた。でも、岐阜県は東海道五十三次に登場していないのだ。東山道と同じく中山道だった。
<東海道五十三次>
※出典
http://home.h01.itscom.net/tokaido/chizu.html
(5)他の都道府県で紛らわしいケースは
こうした地域分類で中途半端な扱いに陥りやすい県は静岡県以外にもある。それは新潟県だ。甲信越で括られたり、北陸地方に嵌め込まれたり、統計によっては「東北6県+新潟県」ってカテゴリも目にした事がある。新潟県と静岡県の共通点を探すと、おそらく2つある。
1つは政令指定都市があって地方都市と言うには経済規模が大きい事がある。聞きかじりの知識だが、かつて新潟市の人口が全国4位だった時代があるとか。残念ながらこの件の正誤を確かめられない。ただ、ちょっと検索すると明治時代の1874年~1896年の間に何度か新潟県の人口が全国一だったと確認する事ができる。
※参考
https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/1167/
確かに現在でも新潟市の人口は81万人で、日本三大花街の1つと言われた古町が新潟市の中心部にある。現在でもJR新潟駅から万代橋を渡って信濃川の向こうに進むと古町のアーケードがずっと続いており、往時の栄華を偲ばせる風情がある。
もう1点の共通点は、海岸線に沿って距離が長い事だろう。結果として、新潟県にも静岡県にも新幹線の停車駅がたくさん作られてきたし、越後湯沢や静岡などはギリギリ首都圏まで通勤できるエリアでもある。
新潟県: 新潟、燕三条、長岡、浦佐、越後湯沢、上越妙高、糸魚川
静岡県: 熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松
(6)県境は1つの目印に過ぎない
三河と遠州、駿河の一体感を意識させてくれるのは、何と言っても400年前に没した徳川家康の存在だ。つい数年前にも岡崎―浜松-静岡で「家康公四百年祭」が開かれていた。現代においてもトヨタ自動車が愛知県の企業になっているが、始祖の豊田佐吉は静岡県湖西市で生まれており、豊田佐吉記念館は同市にある。
なので、静岡県が「東海3県」に入っていないって捉えるよりも、「東海4県」と「中京3県」に正しく括り直すのが相応しいなのではないか。
付言すると、中京3県の一体感が大事なら関東甲信越の方が何かとマーケットが広いので、静岡県がそっちのグループに移籍しても構わないのでは。今ではヨコ長のテレビのお陰で東京圏の天気予報で静岡県はしっかり画面に納まっており、移籍条件は整っている。
昨年、長野県飯田市に泊まって朝のニュースを見ていると、東京と同じ地方ニュースが流れているのに驚いた事がある。東京との時間的距離がこんなに隔たっているのに地域ニュースだと長野県の南端なので関東甲信越の枠になっている。
まあ、むしろそうした分け隔てに拘るよりも、三遠南信が実体的に1つの経済圏、観光圏として活性化していけばいいと思う。私も、コロナ禍があったからこそこのエリアを転々と開拓しているのだ。ヨコの道は何も新幹線と東名高速道路だけではない。東海道に姫街道(本坂道)、東海自然歩道、秋葉道もある。タテの道も古くは伊那街道(三州街道とも云う、豊橋~塩尻)、秋葉街道(相良~秋葉神社~諏訪)を通じて往来があった。現在でも飯田線がゆっくりと北上しており、三県を貫くように三遠南信道も部分的に開通しているのだ。それを使わない手はない。
※参考(弊ブログ)