時期: 2021年10月初

 

秋野不矩美術館に行ってきた。ちょうどその頃に旅先で知り合った方の写真展がここで開催されており、それを見てきたのだった。

 

ここを訪れた目的はもう1つある。前から気になる存在ではあったけど、ここは藤森照信氏の建築物なのだ。藤森照信の建築はなかなかにユニーク。八ヶ岳に登った時に、JR茅野駅前にある図書館に寄ってみると藤森建築の写真集を見られる。ただ、実際に氏の建物を直に見るのはこの時が初めてだった。

 

<急坂の斜面に立つ美術館、少し上がっていくと>

 

 

阿蔵山を回り込むように登っていくと、徐々に美術館がその姿を現す。これって山城みたいだ。今になって振り返ってみると2023年に歩いた高根城址を想起するものがある。

 

※参考ブログ

 

<三本足に支えられた茶室(2)>

 

 

得体の知れない構築物もある。ハシゴを使って登る茶室だ。四角い板がヨコにスライドするように作られているので、おそらくあれが窓なんだろう。

 

<正門に向けて、寄っていくと>

 

 

まだ暑い10月。草いきれがする。氏の建物はシンプルに四角形を足し合わせるような構造でないのがいい。四角形を45°回転させて連結している形だ。建物が生きている感じとでも言うべきか。

 

<建物を突き抜けた木材、見晴らしのよさそうな展望スペース>

 

 

梁に使われている材木が壁を突き破って外界に触れているのがいい。これも氏の建築物の特徴だ。

 

この建物に関しては弊旅行記のマリ共和国編で簡単に触れている。そう、西アフリカの泥壁のモスクと似ているな、と感じたのだ。ちょっとドラフト原稿から抜粋してみよう。

 

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改めて泥壁のモスクを見上げてみる。中東の有名なイスラム建築と比べるとあまりにも地味でどうにも同じ宗教とは思えないし、およそ宗教的な建物には見えない。泥で塗り固められた淡い土色のモノトーンだが、造形としてはいかにもユニークだ。

……(中略)……

実は、こうした梁が突き出た建物が日本にもある。静岡県浜松市天竜区の秋野不矩美術館だ。この建物は阿蔵山の裏手にひっそりと造られており、正面から見ると木の梁が2ケ所ほど出っ張っている。常設展示室の天井には天窓があって、これもアラブ世界のハマムに入り込んだようなフワッとした開放感に包まれる。上からこの建物を見ると、四角い構造体が直結しているのではなくて、45度回して接合しているのも特徴的だ。この歪みが立体的広がりを持たせてくれる効果を持っている。

この建物を設計されたのは木の上の「高過庵」、UFOみたいな「空飛ぶ泥船」(いずれも長野県茅野市)など奇抜な木造建築で有名な藤森照信氏だ。

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(拙著p.51~52を参照)

 

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※参考