電動アシストもどき自転車考(その1) | 旅はブロンプトンをつれて

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先日、自転車で都心の幹線道路を走っていると、道路の歩道に複数の警察官とともに、大きなカメラを抱えた人たちを見かけました。

その向こうには、2代の白バイの姿も。

自転車で道路を走りなれているからわかるのですが、これは交通取り締まりの取材です。

私はこういう場合、運転免許を持っていることもあって、どうしても観察したくなってしまいます。

しかし、よく見ると取り締まりの常道ともいうべき、速度測定器がありません。

ということは、スピード違反以外の取り締まりということで、考えられるのは「ながら運転」とか「シートベルト未着用」などです。

しかし、どうもおかしいのです。

こうも大々的に車やオートバイを対象にして取り締まるのなら、車両を停止していわゆる違反切符を切るスペース、通称「サイン会場」がなければなりません。

ここは主要駅のすぐ近くの繁華街で、路地に引き込もうにもそんな場所がありません。

それに、白バイの手前には、見慣れぬワゴン車までが止まっています。

あのワゴン車は何に使うのでしょう。

すわや自転車が対象か?

それであのワゴン車の中がサイン会場?

そこからペダルを漕ぎながら、ない頭をフル回転させて考えます。

そういえば先日、(早ければ来春から)自転車にも青切符が適用されるようになると報道されていたから、そのテストケースの取り締まり前の警告書を渡す行為を取材させているのかしらん。

自転車が対象だとしたら、信号無視か、通行区分違反(禁止されている歩道を走行すること)だからと思い、車道を走って信号も青だから問題なしと思って目の前を通り過ぎようとしたら、すぐそばの歩道を並走している自転車にはまったく注意を払っていません。

それに、自転車を取り締まるのにわざわざ白バイを待機させているのも変です。

やはりオートバイや車かなぁ、でも警察官の視線は自分も含めた自転車に注目しているんだよなぁと思っていたら、ひょっとしてアレじゃないかと思い当たりました。

それは、電動アシスト自転車を謳いながら、実はアシスト無しでオートバイ並みの走行ができる、ペダルのついた事実上の電動オートバイ(原付)のことです。

アシストを装いながら、実は乗り手は全くペダルを漕がずにフル電動で時速40㎞以上出せる、電動モペットとか、ペダル付き原付などと呼ばれているこの手の自転車は、自分の周りでは急速に増えましたし、今仕事をしている場所の近くでは、堂々と店先に売り物として並んでいたりもします。

主な特徴として、電池を入れるスペースなのか、やたらフレームが太くていかつく、それに合わせてなのか、タイヤも極端なファットタイヤが多く、さらに前後輪にオートバイ用のディスクブレーキまで備えていて、いかにも「スピードが出そうだな」という感じがします。

いや、ちゃんとナンバーをつけて車道を走っている分には、エコな電動オートバイなのでしょうけれど、この重量があってスピードが出る乗り物が、赤信号になったら歩道に乗り上げて、また車道に出てとか、自転車を除く車両通行禁止の場所を、ヘルメットをかぶっていない乗り手が、ペダルも漕がずにウォーンというモーターの唸りを響かせながら、人込みを縫って走っているのをみかけるから、とても危険だと感じていたのです。

それに、車両登録ナンバーをつけていないということは、当たり前のように税金も支払っていなければ自賠責保険にも加入していません。

しかも車両重量が25㎏って、乗っている人の体重を合わせたら、ゆうに100㎏近くなります。

これが時速30~40㎞で衝突してきたら、生身の人間はまず無事ではすみません。

そして運転している人間に支払い能力が無かったら…。

もう泣き寝入りするしかありません。

本人は車道と歩道を往き来しながら走ることで、イケている、颯爽としていると思っているのかもしれませんが、自転車や二輪車に興味のない人からみたら、ただの狂人でしょう。

いや、双方に興味のある自分から見ても、「そうこまでいってしまったか」な人たちです。

でも、本人たちは一向に周囲を気にすることなく、Going My Wayを気取っているようなファッションだし表情だから、周りの目などどこ吹く風といった塩梅です。

来ているものはラフだし、足元もつっかけやサンダルを履いていたりします。

自転車でも、オートバイならなおさらに、あんな履物で乗ろうとは普通考えません。

私がスクーターではなく、跨り系のハンターカブを購入したのも、スクーターに乗る人たちの中には、自己が運転する車両をオートバイだと思っていないような格好の人がいるからです。

電動モペットについて調べると、どうも車両登録ナンバーをつけて法律の範囲内で乗っている合法組と、別種のナンバーをつけたり、購入後に勝手に出力をあげたりして、自転車とオートバイのグレーゾーン車両として乗っている脱法組と、最初から登録する気のない、あくまでも自転車です(でした)と言い張って乗る違法組に分かれるようです。

ということは、販売する側もちゃんとナンバーをとって、原付バイクとして引き渡す店があれば、対照的に自転車として売っておいて、お客様には「ちゃんと自分でナンバーをとってくださいと言いましたよ」として売る店と、ネットなどで最初から買い手が違法で乗る意図でいるのを織り込み済みで、けれどもそれは購入した人の責任ですからと売る業者と、それぞれが存在するのだと思います。

これ、買う方も売る方も、法律を知っている知らない、知っていたとして守る守らない云々の話ではなく、人としての生き方の問題だと思います。

人間は楽をすればするほど、本来使わねばならなかった脳や神経、筋肉が衰えるといいます。

一度漕がなくても進む自転車に習慣的に乗って慣れてしまえば、アシスト自転車はもちろん、普通の自転車にもいまさら乗る気がしなくなるでしょう。

それで年をとって運転免許を返納せねばならなくなった時に、どうするのでしょう。

そんな先のことは考えられないのかな。

私も若い頃はそうでしたし。

同じ通りでは、よくインバウンド観光客の公道カート(いわゆるマリカー)による集団走行を見かけます。
コロナ下で一時期インバウンドの観光客が入ってこなかった時期に消滅しましたが、コロナ明けとともにまた復活して見かけるようになりました。
あれは原付に分類されるし、4輪だから、ナンバーさえとればヘルメットの着用義務もなく、国際免許証さえ持っていれば運転できるのだそうな。
私はかつてヨーロッパの複数の国々をレンタカーでドライブしてまわりましたが、その当時はEU発足前で国ごとに交通標識が違いましたから、とくに言葉の通じないハンガリーやチェコスロバキアでは、運転に気を遣いました。
運転していないですけれど、お隣の韓国や中国はバスやタクシーの窓から交通状況を眺めていて、運転できるといっても絶対に運転できないと思いました。
運転技術がどうこうではなく、日本の交通常識が全く通じないと思ったからです。
私がインバウンド観光客の立場だったら、絶対にマリカーのツアーには参加しません。
たとえその国では合法で楽しい乗り物であっても、自分で運転するような場合、私が旅人なら、その国の人が眉を顰めるような乗り物に乗って観光をすることを、自己の矜持から絶対にしたくはありません。
だってそのような行為は自分を貶めることになるから。
それは海外での合法賭博や銃射撃体験ツアーにも同じものを感じていました。

(その2へ続く)