仕事帰りに車でスキーに行ってみました(その1 往路編) | 旅はブロンプトンをつれて

旅はブロンプトンをつれて

ブロンプトンを活用した旅の提案

私はこの歳になって、比較のためになるべく色々な方法で同じ目的地へ旅することを試しています。
尺取虫方式の歩きや折りたたみ自転車で京都へ行ったら、京都という街の存在がかわっただけでなく、その往復経路の印象も変化しました。
その前から何度も東海道新幹線に乗って往復しているのに、歩いたり自転車で行ったりしたあと新幹線の車窓から景色を眺めると、同じ風景なのに立体的に見えて、えらく親しみがもてるようになりました。
これはおそらく、歩いたり自転車で走ったりと、自己の身体で距離を感じることができたからだと思います。
2年前の夏から秋にかけて、とりあえず旧甲州街道をブロンプトンで走ってみました。
「とりあえず」というのは周囲に寄り道などせず、旧東海道同様ひたすらゴールを目指して前に進むことを言います。
(とはいえ、目についたものを眺めるくらいのことはしていました)


旧甲州街道の終点は、中山道との接点、下諏訪宿です。
前に中山道は日本橋から塩尻まで走破していたので、下諏訪は既知の宿場でした。
そこでゴールにするのも何だかと思い、最終目的地を長野県白馬村に延長しました。
旧甲州街道をブロンプトンで走りながら、或いは尺取虫方式ゆえに中央線を使って行き来しながら、中学生の頃から国道20号線(当時中央自動車道・長野自動車道は殆ど未開通でした)や中央本線の急行アルプスで往き来していたのは、スキー場のある八方尾根や中学校のスキー教室が開催された鹿島槍スキー場でしたから、諏訪湖でおしまいというのは、何か中途半端な気がしたのです。
結局、下諏訪から中山道に入り塩尻峠を越え、塩尻宿から五千石街道というバイパスを通って善光寺西街道の城下町松本へ、そこから日本海より塩を運んでいた千国街道(通称塩の道)を通って白馬までゆきました。
もちろん、旧東海道同様に廃道になっていない限りできるだけ旧道に忠実な道を選びました。


白馬は京都よりはずっと近かったけれど、京都以上に思い入れのある場所ですから、自分の足をつかって自転車で行けたというのは、京都以上に感慨深いものがありました。
小中学生の頃は、下道の国道20号線と148号線を延々と走るルートでしたが、かつての国道が廃道となって、今は旧甲州街道を歩く人しか通らない苔むした道になっている区間がありましたし、中央本線も線路の付け替えで廃線となっている箇所がいくつか見られました。
そうかと思えば、昔ながらのスタイルと名前で営業しているドライブインがあったり、駅舎は昔の姿のままだったりと、往時をしのばせるような風景にもたくさん出会いました。
かつて往復していたのが冬から春にかけてだったこともあり、今度は寒くて積雪があるのを覚悟したうえで、冬に辿ってみようかなと思ったほどです。
箱根や鈴鹿など、山越えは一部区間に限定される東海道に対し、山がちな地域をいくつもの峠を越えて進む甲州街道や中山道、千国街道は夏と冬では全く景色が違います。
ブロンプトンではなく、かんじきやクロスカントリースキーが必要かもしれませんが、天候を選んで本格的に山に入るのでなければ、それも楽しそうです。


先日は、ブロンプトンをつれて、仕事帰りに青春18きっぷをつかって白馬へ行った旅をご紹介しました。
折りたたみ自転車による走破を経験した後に旧甲州街道沿いを自転車以外でゆくのであれば、あと残っている移動方法はハンターカブ(原付)、マイカー、高速バス、中央線特急(あずさ号)ですが、このうち今回はマイカーを使って往復してみることにしました。
車は小型車になったけれど、独りで往復するならそれで充分ですし、マイカーもまた、青春18きっぷ同様に仕事帰りにそのまま白馬へ直行できます。
しかも、現地では宿とスキー場の往復が可能ですから、スキーには便利なのです。
折りたたみ自転車+鉄道とどれくらいのギャップがあるのかについても興味がありました。
ただし、単純にマイカーで往復するのでは面白くないので、NEXCO東日本と同中日本が連携企画している「信州めぐりフリーパス」という割引プランを利用してみることにしました。
予めねっと登録した自分のETCカードで、日付指定で申し込むと、往復の高速道路代+周遊エリア(長野県)内での高速乗り降りが何度も自由になるということで、2泊3日の9700円に申し込んだのです。
ただ中央道+長野道で白馬に近い安曇野インターチェンジを往復すると1万円ちょっとなので、中日にスキーをして高速道路を利用しない自分にとってはあまり意味のない割引制度なのですが、それでも途中で降りて食事をしたり、日帰り湯に立ち寄ったりすれば、多少はお得かなと計算してのことです。


さて、例によって14時くらいに鎌倉市を出発します。
むかしは横浜方面に戻って16号バイパスを八王子に出なければ中央道には乗れませんでしたが、今は圏央道という便利な道があります。
お寺の近くの安いスタンドで給油を済ませ、江ノ島から湘南海岸沿いの134号線を西進し、サザンビーチを横目で見ながら、相模川河口に近い茅ヶ崎海岸ICから高速道路に乗りました。
ここまで30分ほど。
割引プランは首都高速を除くどこのインターチェンジから乗っても良いわけで、できる限り仕事場に近い場所から高速利用した方が得になります。
そこから圏央道を経由して、高尾から中央道に入ります。
ここまでちょうど1時間くらいで、旧甲州街道と同じ裏高尾に出ました。
時刻はだいたい15時です。
バスタ新宿を15:05に出発する高速バスが八方バスターミナルに着くのは20:18です。
いっぽう15時ちょうどのあずさ号に乗ると、松本で大糸線各駅停車に乗り、信濃大町でも乗り換えて白馬駅到着が20:05です。
先日仕事帰りに青春18きっぷで白馬へ行った時は、高尾15:00発の鈍行で、小淵沢、松本、信濃大町と3回乗り継いで20:57に白馬へ到着しましたから、今回はせめてそれよりは早く着きたいと考えます。


圏央道から中央道に入ってすぐ、小仏トンネルを越える左手にちょっと凹んだ鞍部がみえていて、そこが旧甲州街道の小仏峠です。
トンネルを抜けた後も、相模湖から勝沼インターあたりまでは、旧甲州街道は中央自動車道とちょろちょろ絡みます。
その象徴的なのが、上野原インターの先で鶴川を渡ってから続く登り坂と、談合坂サービスエリアのすぐ裏にある野田尻宿、そして山の中腹に遠望できる犬目宿です。
この長坂と呼ばれる登り坂は、かなりの区間が旧道と重複していて、高速道路建設の際に旧道が失われたせいか、その側道を辿ることになります。
また、旧甲州街道を走破している際、トイレに行きたくなって、山の中ゆえに公園などの公衆トイレや店もないので、裏口から談合坂サービスエリアに入ってトイレを使いました。
その先も、大月でみえる岩殿山は旧甲州街道のランドマークでもありますし、笹子トンネルをくぐる際は、進行方向左手にチラッと笹子峠が望めます。
山あいの区間なので、中央自動車道の下に旧道が見えることもあれば、ずっと山の上に見える場所もあるわけで、これが旧東海道だったら、高速道路の上を跨いだりする際の僅かな区間や、薩埵峠のような象徴的な場所でしか旧道を意識できないわけで、同じ旧街道でも甲州街道の方が今も昔も大して変わらない景色なのかもしれません。
なお、この日は大月インター手前で工事による車線規制があり、30分間ほど渋滞にはまりました。

笹子トンネルを抜け、勝沼インターを過ぎると中央自動車道は甲府盆地を左手に見下ろしながら大きく南方向へ迂回します。
おかげで、石和温泉や甲府城は殆ど見えません。
旧甲州街道と中央線は北の縁を進むのに、中央自動車道だけが街の中心部を大きく迂回しているのは、地盤の関係だったときいています。
南アルプスが正面から進行方向左方向に移る甲府昭和インターから双葉サービスエリアにかけてより、中央自動車道は旧甲州街道と沿いだしますが、もちろん車の車窓からは見えません。
その先、中央道は茅ヶ岳や八ヶ岳の中腹を、旧甲州街道は釜無川の谷間をゆくので、再び離れてしまいます。
そして中央道最高地点を過ぎた諏訪南インターから茅野インターにかけて、再び両道は接近しますが、その後高速道路は諏訪湖の南岸へ、旧道は北岸へと分かれます。
こうしてざっとみると、旧道に沿っているのは中央自動車道よりも国道20号線やJR中央本線の方です。
その後、長野自動車道に入って塩嶺トンネルで塩尻峠直下を抜けるわけですが、旧道のような大分水嶺越えという感じがまったくありません。
松本盆地に至って、広丘付近で長野自動車道は五千石街道に沿いますが、同街道は脇往還の短絡路ですからですから、実際に辿った人でないと分からないでしょう。
結局松本インターに17時ちょっと前について、帰宅ラッシュ前にファストフード店でサッと夕食を食べ、お隣の安曇野インターまで1区間乗って降りたら17時40分くらいでした。
そこから下道を信濃大町に向かうのですが、すでに北アルプスの山々はシルエットになっています。

大町手前のホームセンターで忘れてきたバスタオルを買う頃には真っ暗になり、市街をぬけた先にあるゆーぷる木崎湖という日帰り温泉施設に着いたのは19時20分でした。
このままお風呂に立ち寄らずに白馬へ向かえば、特急あずさ号とほぼ同じ時間に着きますが、せっかくの車だから立ち寄ります。
お風呂は19時半受付終了20時迄なので、急いで受付を済ませて湯船に向かうと、数人が入っているだけで空いていました。
ここのお風呂は露天風呂があまり加温していないわざと温度低めの設定で、それが却って内風呂とのギャップで気持ちよく感じました。
営業終了時間ぎりぎりにお風呂からあがって着替え、車に乗って国道147号線を走り出すと、偶然大糸線の下り列車と並走する形になりました。
あれは信濃大町20:20分発南小谷行きで、前に青春18きっぷで白馬へ向かった時と同じ時刻の列車です。
田舎の国道とはいえ、さすがに赤信号のない列車の方が早いだろうと思っていたら、国道を走るこちらの方が駅で停車しない分早く進み、あの列車が白馬に到着するより10分早く宿に着いてしまいました。
これでは、地方の鉄道利用が進まないわけです。


今回、食事とお風呂を省いたら19時過ぎには白馬に着いていたわけで、特急あずさ、高速バス、青春18きっぷ利用よりも1時間から2時間早く到着することが分かりました。
時間だけ考えると、同じ時間に出て車より早く着くのは、別経路になりますが、東海道本線に乗って東京駅に出て、そこから北陸新幹線に乗り換えて長野駅で下車、特急バスで八方バスターミナルへ向かうというものですが、これも到着は19時35分になるので、マイカーの方に軍配があがります。
ただ、列車やバスは自分で運転しなくて良いから弁当という移動しながらの食事がありますし、お風呂だって宿に入って入るという選択肢があります。
そして、高速料金(片道4,850円+ガソリン代片道2500円程度=7,350円)+運転する労力を考えると、青春18きっぷ(町田から2,410円)、高速バス(新宿から5,800円)、JRあずさ号利用(新宿から8,500円)、JR北陸新幹線利用(新幹線8,340円+特急バス2,200円=10,540円)を考えると微妙です。
鉄道の利用の場合、ブロンプトンをつれていることもあって、往復スキー宅急便を利用せねばならず、割引を利用しないと往復5000円弱(スキーは板と靴があるから、それに着替えなどを含めると高くなります)かかりますが、それでも安全ということを考えると、昔ながらの高速バス(ツアーバス)が最もバランスが良いのかもしれません。
ただ、マイカーは運転しなければいけないから尚更ですが、高速道路を走るとどうしても「やっつけ移動」みたいになってしまい、鉄道のような旅情がありません。
また、鉄道のように車窓から自転車で走った旧道を眺めるという楽しみも、殆どありません。


なお、今回朝4時起きしたうえに仕事帰りに車を独りで長時間(といっても正味4時間半ほど)運転するので、眠気覚ましの飴を用意し実際にお世話になったのですが、食事をとり、お風呂にも入りと、運転中眠くて危険を感じ、仮眠をとらねばと思うことはありませんでした。
ブロンプトンを後ろに積んでいて、眠くなったら車を停めてサービスエリアの裏から出て自転車でひと走りして目を覚まそうと本気で考えもしていたのですが、その必要もありませんでした。
何度も往復した道ですし、車での往復にも思い出がありますが、旧道を自転車で走破した後で、マイカーで同じルートを走った感想については、復路のレポートで改めて書きたいと思います。
また、今回車が大幅に変わったとか、結局雪道など1mも走らなかったとか、ほかにも色々感想はありますが、自分は最近とみに自動車とその運転に対する欲を失ってきている(こんなものにばかり乗っていたら、自分がダメになってゆく、地獄への道は善意と欲望で満ちていると本気で感じています)ので、今回は省きたいと思います。
往路については、運転は全然運動にならず、これがスキーのためではなくただのドライブだったらと思うとゾッとしました。
朝が早かったせいもあって、ベッドに入ったらすぐ寝入ることはできたものの、日常的にブロンプトンで走っているからなのか、やはり全く身体を運動で動かさない一日というのはどうなんだろうという感想を持ちました。

(つづく)