仕事帰りのスキー旅行にブロンプトンをつれて(青春18きっぷで白馬まで) | 旅はブロンプトンをつれて

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ブロンプトンを活用した旅の提案

(町田駅)

むかし会社に入ったばかりの頃、大学時代にスキーのアルバイトで一緒して、1年早く同じ会社に入った知り合いが札幌の支店に配属になったのを聞きました。
その当時、会社の札幌独身寮は街を見下ろす藻岩山の下にあり、ロープウェイの駅が歩いてすぐの場所にありました。
まだバブルがはじけておらず、冬期のロープウェイと藻岩山スキー場は毎晩ナイター営業をしていた(藻岩山山頂は、夜景の名所でもあります)ので、彼は仕事が定時に終わった日には、仕事帰りにナイタースキーができると言っていました。
もっとも、旅行会社も忙しい時代で、定時に帰れる日が年に何日あったことやら。
私が2年目の夏に、こちらは高校の北海道修学旅行、あちらは中学の青森修学旅行に添乗していて、函館駅の構内で偶然すれ違ったときに、少しだけ会話を交わして「お互い大変ね、アルバイト時代が懐かしい」みたいな話をしました。

(八王子駅)

(高尾発小淵沢行きは中途半端な時間なので空いていました)
もっと前の高校生の時、アルバイトやスキー教室に通う時には、終業式の終わった学校から帰ってきて夕食を食べ、20時くらいに家を出て新宿や上野を22時~23時に出発する夜行の急行列車に乗っていったものです。

中央線の場合、冬山用の重装備を抱えた山男さんたちと一緒になり、運悪く禁煙車両が取れなかったりすると、彼らは寝酒を煽りながら寝煙草をふかすので、電車が八王子を出発する頃になると、車内は煙でかすみ、そんな状態で何時間も列車に揺られて眠るものだから、白馬に到着する頃には髪の毛からスキーウェアからみな煙草臭くなってしまい、現地に迎えに来た良識ある大人から、「高校生のくせに酒やたばこをやるんじゃない」とお小言を言われたこともあります。
冬だから、暖房の効いた列車の窓を開けて換気するわけにもゆかず、人と荷物で通路は塞がっていたので、禁煙車両のデッキまで移動することもできません。
彼らのうち半分は松本で、もう半分は有明、穂高、信濃大町で下車し、そこから先は殆どがスキー客でしたが、松本まではトイレへ移動するのもひと苦労でした。

(裏高尾の旧甲州街道沿いには桜が咲いています)

(上野原駅付近)
こんなスキー旅行を繰り返していたから、車でスキー場を往復する大人が羨ましく、社会人になったらいつかはお金を貯めて四輪駆動車を買い、それを運転してスキーに行くのだと、映画“Back to the Future”のMarty McFlyみたいなことを考えていました。
もっとも社会人になって3年目にはクロカンの四駆を入手し、映画『わたしをスキーに連れてって』で冒頭に描写された通り、就業時間が近づくとソワソワし、定時にこっそり抜け出して車に乗り、夜の高速を飛ばしてスキー場に向かうということは何度もしました。
会社の近くに車を停めておいて、途中で友だちを拾って、途中銭湯に寄ってお風呂を済ませてから夜中のスキー場に乗りつけて、車中泊して朝を迎えることもありました。
あの頃は週末の夜中の間ずっと高速道路が渋滞していたために、マイカーやスキーバスを使わずにJRのシュプール号で行った方が時間は読めたのに、お金を節約してその分何回もスキーに行きたかったから、マイカーばかり利用していましたし、若くて元気があったから、往復の運転も苦ではありませんでした。
しかしこの歳になって、やはり片道250㎞以上、往復500㎞を越える車の運転(とくに夜中の)は、昔より車が良くなったとはいえ、辛いものがあります。
それに、ここのところは車が故障続きで、万が一スキー場で動かなくなった場合、修理代金がべらぼうに高くなると知っていたので、余った青春18きっぷを使って、これまで一度もやったことの無い、各駅停車による仕事帰りのスキー旅行をやってみようと思い立ちました。
夜行でこそないものの、ペース的には高校時代に繰り返していた急行列車によるスキー行に近いものになるのではないかと期待したのです。

(甲斐大和駅の桜)

(勝沼ぶどう郷駅の桜)
私はいつも朝の5時半より前にお寺へきて掃除を始めているので、早ければ13時半には帰ることができます。
仕事帰りにブロンプトンをつれて鈍行を乗り継ぐにあたって、白馬までの経路を考えてみます。
藤沢から中央線の鈍行に乗る場合、3通りの方法があります。
①    湘南新宿ラインないし小田急線で新宿に出る
②    小田急線で町田へ出て、そこから横浜線に乗り換えて、八王子に出る
③    東海道線で茅ヶ崎へ出て、相模線で橋本に行き、横浜線で八王子に出る 
これらを比較すると、①は新宿に出るので戻る形になり時間をロスし、③は相模線が単線の為距離のわりには時間がかかるということで②がもっとも効率よい中央線への乗り換えになります。
もちろん、スキー道具は半月前に行った時に宿に置いてきて、着替えなどは宅急便で送ってのことです。
昨年の今頃に、早朝に自宅を出て白馬まで行った時(https://ameblo.jp/cum-sancto-spritu/entry-12732621410.html)と比較してみると、到着時間は遅くなるものの、仕事帰りを移動にあてることで、時間の節約と格安で交通費をあげることがでるはずです。
しかも、白馬駅から宿まではタクシーを使わずにブロンプトンで行くため、高速バス(片道3700円~)よりも安い片道2410円だけで済みそうです。
何よりも、自分で運転しなくて良いから本を読もうが居眠りしようが自由です。
また、高速バス(https://ameblo.jp/cum-sancto-spritu/entry-12511158083.html)利用時のように、下道に入ってから読書していると気持ち悪くなるという心配も無さそうです。
さらに、車窓からの景色はバスよりも楽しみです。

(こういう車窓はマイカーや高速バスにはありません)

(塩山から奥秩父の山なみ)
ということで、当日は早目に帰るつもりだったのですが、電話がかかってきたり急に頼まれごとを受けたりして、結局お寺を出たのは14時45分くらいでした。
藤沢駅まで2.3㎞をブロンプトンで必死に走り、14時53分くらいには到着しました。
藤沢14:57発急行新宿行き~町田14:21着/14:33発横浜線快速八王子行き~八王子駅14:44着となりました。
小田急は始発なので余裕で座れ、横浜線は運よく乗り込んだドアの近くが空いたので、滑り込みで座れました。
八王子で14時52分発の中央快速高尾行きに乗れば高尾着14時58分で以下の乗り継ぎは次のようになります。
高尾15:00発(小淵沢行き)~小淵沢17:29着/17:35発(長野行き)松本19:02着/19:15発(信濃大町行き)~信濃大町20:08着/20:20発(南小谷行き)~白馬20:57着
これが高速バスだとバスタ新宿15:05発なら八方バスターミナルに20:18着(実際には遅延するのでJRと大差なし)になるのですが、それに乗るためには藤沢を13:57発湘南新宿ライン(新宿14:47着)か、同時発小田急線急行新宿行き(14:54着)に乗って、新宿でダッシュしないとバスには乗れないのでまず無理です。

次の新宿19:05発~八方24:27着という深夜便は現実的ではありません。

(韮崎駅前七里岩突端に立つ観音像)

(日野春駅から見る甲斐駒ヶ岳=右)
八王子から高尾までは二駅なので立っていても問題なく、高尾駅でスムーズに乗り換えられるよう、真ん中あたりの車両で立っていました。
15時ちょうどに高尾から小淵沢行きに乗車した際は、乗り換え時間が少なかったもののまだ明るくて十分外が見えました。
笹子トンネルを抜けて、上日川峠へのバスが発着する甲斐大和駅では16:01~16:12まで11分間の特急通過待ち停車があったので、トイレついでに改札口まで行ってみると、掘割状の駅を囲む桜の花が見事でした。
それは次の勝沼ぶどう郷駅も同じで、夕日に照らされた甲府盆地を背景に、逆光の桜が美しく輝いていました。
塩山付近からみおろす甲府盆地は雲があるものの、ちゃんと南アルプスや奥秩父の山々は見えています。
この電車は甲府駅でも8分停車でしたが、食事をするだけの時間はありません。
甲府からは、夕日に照らされた南アルプスを前方に眺めながら電車は七里岩をのぼってゆきます。
終点小淵沢に到着すると、雲は多いものの、甲斐駒ヶ岳がちゃんと頂上まで見えていました。

(小淵沢駅での乗り換え)

(八ヶ岳)
6分後に発車する長野行きに乗り換えるべく、ブロンプトンを抱えて階段を上り下りし、別のホームへ移動です。
乗り換え客は少なく、余裕で席を確保できました。
座って出発を待っていたら、小海線が到着しました。
一部の乗客はこちらに乗り換えてきましたが、大半の人たちは私が今乗ってきて折返し高尾行きになった電車へと跨線橋を渡ってゆきました。
長野行きは八ヶ岳を右手に望みながら次の信濃境駅手前で長野県に入ります。
富士見から下り坂で駅前に何もない青柳駅で10分停車したので、またも駅のトイレに行きます。
少し離れたところにみえる国道20号線ですが、旧甲州街道を踏破した人ならしっている金沢宿手前の街道筋が遠望できます。
18:02に列車が青柳を出て、茅野、上諏訪、下諏訪、岡谷と諏訪湖を望みながら諏訪盆地を抜けるうちに、会社帰りの人や学生で車内が混雑してきました。
塩嶺トンネルを抜けて塩尻から松本にかけてはもっと乗ってきて、立っている人もかなりいる状態になりました。
けれどもこちらは座っているので問題ありません。

(青柳駅に停車中の長野行き)

(一段高い場所に旧甲州街道=信州往還が通じています)


松本19:02着で、13分後に出る大糸線信濃大町行きに乗り換えようとホームを移動したところ、予想した通り、座席はすべて埋まっていて、立っている人もかなりいる状況でした。
しかしわたしは東京の朝8時台のラッシュ時に、列車と乗る車両を選ぶことでブロンプトンをつれて雨の日は通勤していたので、それに比べれば大糸線の混雑など大したことはありません。
それに外は真っ暗になったので、ドアの片隅に立って外を眺めた方が外の様子はよくわかるのです。
これまで八王子からずっと座ってこれたので、もってきた本を読みながらチラチラ外を眺めていたのですが、電車から降りて暗い中家路を急ぐ人の背中や、駅前で寂しく風に揺れる飲み屋さんの提灯が印象的です。
座れたのは終点信濃大町に近くなったあたりで、安曇野の人たちは電車で松本に通っている人が多いのだと改めて認識しました。
大糸線は夕方でも毎時2~3本で、その他の時間帯は1時間に1本しかないから、この電車で通勤や通学はさぞかし大変だろうと思います。

(信濃大町駅で最後の乗り換え)

(完全に夜汽車の雰囲気です)
信濃大町駅に到着したときに外はだいぶ寒くなっていました。
松本から乗ってきた客で、この先の南小谷行きに乗る人は10人くらいしかいません。
大糸線も、信濃大町以北は手前の区間以上のローカル線です。
この20時20分発の次は22時08分発で、それが最終電車になります。
よく見ると、この電車はロングシート仕様を無理にクロスシートに変換したのか、窓枠の位置とシートが合っていません。
私は車両鉄ではないので知りませんが、たしか通勤電車をローカル線用に改良した車両があったと思います。
その不思議なローカル線車両は暗い中を走りだします。
この列車はワンマンカーなので、無人駅で下車する時は定期券や切符を運転手に差し出す決まりになっているみたいですが、殆どの人は降りませんし、寒さ対策で閉めたままのドアを、わざわざボタンを押して開扉して乗車してくる人もおりません。
それにこんな寒い中、雪の積もった無人駅ホームから誰か乗ってきたら、それこそ足がついているか確認しそうになります。
これまでと景色が大きく変わったのは木崎湖より先で、急に車窓の灯りが外に積もった雪を照らし出しました。
外の景色も雪の反射で幾分明るく見えるようになりました。
そして無人の駅に停車しては、誰も降りず誰も乗らずと、何やら宮崎アニメのような雰囲気になってきました。
やがて定刻通りに下車駅の白馬が見えてきてほっとします。

この駅は町だから下車する人が多いのか、ちゃんと車掌さんがドアを開けてくれました。
因みに白馬駅は有人駅なので切符は駅員さんに見せます。

自分と一緒に下車した何人かが迎えの車に乗り込んでしまうと、駅前には客待ちのタクシーのほかは誰も居なくなりました。

(白馬駅前)

(別荘地をぐいぐい登ってゆきます)
ブロンプトンを展開しましたが、路面に雪はないものの吐く息は白く、ここはまだ冬です。
「雨が降ったら電話するので迎えに来て欲しい」と頼んでおいたのですが、空には星が瞬いていて、その心配はありません。
革手袋をしてブロンプトンに跨り、街を背に別荘地内にあるペンションへと自転車で登ってゆくと、すぐに身体は暖まりはじめました。
正面の八方尾根スキー場は、明日のために複数台の圧雪車が動き回っているのが見えて、その音まで聞こえてきます。
後立山連峰は雪をいただいているので、暗い中でも目を凝らせば見えます。

こんなに暗くなってから、午後までいた鎌倉とは遠くて別世界の白馬村で自転車に乗っている自分はシュールだなと思いつつ、森の中に佇むペンションの玄関前に到着したときには、21時20分になっていました。
結局夕食は食べられませんでしたが、いつも殆ど食べていないので、一食抜いたくらいどうってことはありません。
それに、電車の中では時々居眠りしてても、今しがた息を切らせて坂を登ってきたせいか、このままお風呂に入って身体を温めればぐっすり眠れそうです。
鈍行乗り継ぎといい駅から自転車といい、まるで中学生のスキー旅行ですが、そこがまた高速バスやマイカーには無い旅情があって良かったですし、これが雪の降る冬でも、スキーウェアを着てスパイクタイヤのブロンプトンに跨り、バッグは防水性能の高いものを選べば、同じように鉄道+自転車でスキー旅行ができるのではないかと感じました。

また、青春18きっぷを敢えて使わずに特急あずさに乗る場合ですが、八王子14:31発~松本着16:39/17:01(信濃大町行き)~信濃大町18:00着/18:03(南小谷行き)~白馬着18:40で、2時間ちょっと早くついて運賃が4,840円、松本までの特急料金が2,240円の合計7,080円って微妙ですし、北陸新幹線長野経由でもこれより20分くらい早くなるだけで運賃はさらに嵩むので、結局18きっぷの利用期間ならこちらの方が断然お得です。
問題は、翌日以降の宿からスキー場までの移動ですが、以前書いた通り、白馬は各スキー場が無料のシャトルバスを運行(但しシーズン最後のこの時期は終了していました)しているので、それを利用すれば何とかなりそうです。

(この時はすでにシーズン末期でシャトルバスの運行は終了しており、森の中をスキーで滑った後は延々と板を抱えて道路をスキー靴で歩く羽目になりました)
今度機会があったら冬に挑戦してみたいと思います。

(なんか凄く「たどり着いた感」があります)