きゅーさん’ず☆わーるど -2ページ目

千のナイフ(3)

 
「それから《白色》が出現する。完全な白色だ。あらゆる白さという白さを超えた白色。白色の出現の何という白さ。白以外の色とは全く妥協の余地のない、白以外の色をいっさい排除し、完全に根こぎにした白色。興奮し、激昂し、白さで絶叫している白色だ。熱狂的で、猛り狂い、網膜を突き刺して、無数の穴をあける白色。残忍で、執念深く、人殺しの、電流のように素早い白色。白色の疾風のような白色。《白色》の神。否、神なんかじゃない。わめき立てる猿だ。(わたしの細胞が破壊せずにすめばよいのだが。)
白色が停止する。わたしは、白色というものはわたしにとっては何かしら過激なものだという印象を、長いこと持ち続けるだろうと感じる。」





白色とは





何を意味するのか





小学生だった頃の私には





ただ





ただ





意味のわからないものでしかなかったが





私の中の感覚では





白色とは





心地よいものだった





心地よい





というのは





何でも描ける





画用紙のこと





幼い頃から





あまり手のかからない子供で






新聞広告の白裏紙を与えておけば





昼下がりの微睡むとき





母は





居眠りをして





私は





白い広告の裏紙に





無数の絵をしたためていた





何を描いていたかは覚えてない





おそらく





今でもそうなのだが





頭に浮かぶものを





描いていたのだろう





上手い





とか





キレイ





だとか





そんなことは全く考えていない





好きなものを





好きなように描く





それが





最高の楽しみだった





白い紙に





一本のペンを突き立て





ペンの走るままに描くことが好きだった





さて





矢部





幸子の





手紙は





どうだろう





授業が始まって





つい気になるので





ポケットから取り出して





また





読み返してみる





よく見ると





女の子らしい便箋で





白色というより





薄紅色の感じだったろうか





よくは覚えていないけれど





何かが





引っかかる感じは否めない





授業中だったが





先生の言葉が何も聞こえない





ただ





白い





雲のような





ありきたりで





よく見れば





よく見るほど





想像が膨らむ





その先に





何があるかはわからないけれど





白い紙を





与えられたような





幼い頃のように





思うがままに





描いてみたい




そんな





衝動が頭をもたげていた




のかも





知れない





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千のナイフ(2)







 
「突然、だが、先駆者としての一つのことば、伝令としての一つのことば、人間に先んじて地震を感じる猿のように、行為に先んじて警報を受けとるわたしの言語中枢から、発せられた一つのことば、《眩しく目をくらませる》ということばにすぐ続いて、突然、一本のナイフが、突然千のナイフが、稲妻を嵌めこみ光線を閃めかせた千の大鎌、いくつかの森を一気に全部刈りとれるほどに巨大な大鎌が、恐ろしい勢いで、驚くべきスピードで、空間を上から下まで切断しに飛びこんでくる。わたしは内心ひそかに苦悩しながら、それらのナイフや大鎌と同じ速度の耐え難いスピードに自分を合わせ、益々激しくバラバラに裂け、解体し、狂気へと陥ってゆきながら、ある時はそれらナイフや大鎌と同じく途方もない高さにまで、それから忽ち、すぐ次の瞬間には、それらと同じく深海の深さにまで、ついてゆくことを強いられる……それにしても、一体これはいつ終わりになるのだろうか……それがいつかは終わりになるとして?
終わった。遂に終わった。」






手紙は





小さな星型のように





器用に折ってあって





開けるところを間違えると





思わず破ってしまいそうになる





せっかく くれた手紙なので






もし





破ったりしたら





書いた娘も悲しむだろうと思い





丁重に開け口を探りながら開いた






開けてみると





女の子らしい丸い文字でしたためられていた文章は





ただ





一行だけだった





「遊園地に連れて行って下さい」





え?





さっぱり意味が分からない





手紙を運んで来た女の子たちに訳を訪ねようとしたけれど





もう





姿が見えない





いろいろ





意味を考えてみても





全く





糸口も





この娘が





どんな娘なのか





皆目見当もつかない





折り曲げられた便箋の片隅に





やっと





彼女の名前を見つけた





「矢部





  幸子」





ふと





まわりを見渡すと





学校の廊下で





休み時間の終わりを告げるチャイムが





スピーカーから鳴り響いていた





どう広げたかも分からない便箋を





慌てて





4つにたたんでポケットにしまう





ただ





頭の片隅に





彼女の一行が





小さな棘の様に突き刺さる





その時には





痛くも





何ともなかったのだが





やがて





それが





大きなものになるとは






その時には





少しも





思わなかった





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千のナイフ(1)

「突然、一本のナイフが、突然千のナイフが、稲妻を嵌めこみ光線を閃めかせた千の大鎌、いくつかの森を一気に全部刈りとれるほどに巨大な大鎌が、恐ろしい勢いで、驚くべきスピードで、空間を上から下まで切断しに飛びこんでくる。」
アンリ・ミショー。






手紙は






突然にして





差出人から





受取人まで





予期せぬ間にもたらされた





或る意味





凶器の如く





或る意味





傘を持たずして





夕立にあった時の如く





残酷だが





思わぬハプニングをもたらしてもくれる





手段なのであろう





友人を介して





その一通は届けられた





「4年✖️組の矢部って女の子 知ってますか?」





一級下の学年の女の子の事など知る由もなく





ましてや





小学生の頃は女の子より





当時の私には





バスケ倶楽部の副部長として





今後 上級生が卒業したあとのまとめ役として





日々 奔走していた時期であった





話しの内容は





大方わかっていた





私は





自慢ではないが





クラスの中では背も高く





スポーツも好きで






他に





絵が好きなので美術倶楽部も兼部して





大いに





多感な年頃であったがため





クラスの女子が





密かにやっていた人気投票には





上位に入っていた事は知っていた





私の他にスポーツ万能





ルックス最高な奴が確か1位だったが





私の方が身長が高かったので





2位に甘んじても気にはしなかった





もっとも





そんなことより





楽しい事がいっぱいあったから






どうでも良かった





手紙を渡された理由は





あらかた





告白であった事は見るまでもないと





その時には






想像もつかなかった





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