見上げても星一つ見つからない夜空。
それでもビルとビルの間に垣間見る遥かな宇宙に夏のおじぎ草が小さく頷いた。
小さな小さな人間達は、募る不満を誰かに吐露したり、或は消えぬ不安をぶつけたり、我儘を言ったり、怒ったり、泣いたりする。
しかしそのどれもが今のあなたにとって必要な事ならば、きっとみんな受け止めてくれる。
きっと私も受け止めていける。
そうしてすべてを出し切って空っぽになったら、爽やかな風と力強い土の匂いと鳥や虫の歌と七つの海からのさざ波で心を満たしてあげよう。
もう余計なものなどひとつも入り込めない様に、しっかりしっかり満たしてあげよう。
空を見上げるとやっぱり星は一つも無かった。
歌を歌った。
私の余計なものは真っ暗な夜空に吸い込まれていった。
もう何も吐き出す事など無いのだと、其れだけで充分だよと心の囁く声がした。