雨 | 道標を探して

道標を探して

 ただ、そこに進んでみたい道がある。
 仰いで見たい空がある。
 踏んでみたい土がある。
 嗅いで見たい風がある。
 会ってみたい、人がいる。

雨が降る季節になった。私の住む関東も、そろそろ梅雨の候となるようだ。霧雨とも小雨とも言い難い粒の小さな雨が顔にまぶされる。

大学キャンパスの中もそこはかとなく陰気に見え、あまりいい笑顔が目に入ってこない。まあ、明るい笑顔をされたところで「あの野郎、呑気にエンジョイしやがって」という嫉妬しかしないわけなのだが。

梅雨は好きだ。雨が世の中や自分の汚いところを少しでも洗い流してくれるような気がする。最近は特に、大学生活に慣れようとして見えない疲れも溜まっていることだろう。
ここ最近、時間が飛ぶように流れてる日々を送った。毎日起きてすぐに電車に乗り、好きに動けないカリキュラムに忙殺される毎日がそうさせるのだろう。

かと言って、辛いわけではない。随分と平穏で、高校時代と比べればかなり大人しくなってしまったと思うほど、他人からの敵意は感じなくなった。
しかし、このような刺激の少ない生活は慣れない。それにつまらない。

現代的なサイズに縮小されてはいるだろうが、私はもっと危険な世界に住んでみたいと思い続けている。昨日までピンピンしていたやつがいきなり死人になるような、そんな世界の方が私には合っている。あまりにも俗な生活をしていると、自分が田舎で奔走して毎日色々なバカをやっていた頃を嫌でも思い出すようになる。
「あの頃は楽しかった」と

それではいけない。過去に生きては現状は悪化の一途をたどるのみだ。

何か、何か手を打つ必要がある。洗い流してもらうなら、その上にコーティングする塗料を見つけなければ。何もないままに外気に晒せば錆びついてしまう。

さて、この場合のコーティング剤とは一体何なのか。