ホースを引きずりながら現れた地元の消防団の、


その存在感は、さすがに消火器野郎とは比べものにならない。


時間経過から逆算すれば、ワタシが消火器に向かう以前に、すでに出動がかかっていたようである。


それなりの装備と人数で、

三ヶ所に分かれて、イザ放水!


ところが火元のオジサンの部屋は一階の真ん中のアタリ。


煙りこそアパートの全体に廻っているものの、炎は隣の部屋や天井、廊下といった建物の内側。


水が掛かるのは、当然の如く建物の外側がメイン。


放水の規模のワリに、煙りの勢いは衰えない。


取り敢えず、決死の突入(?)はプロの消防隊に任せるのが上策。


まだ鎮火の方向へ向かっていないこの状況で民間人の消防団が迂闊に玄関口から進入しないのは、良い判断。


ひたすら、外側からの放水口を確保しようとしている。


そこで、再びホースの傍らに舞い戻ったワタシは使用済の消火器で、菱形にワイヤーの通った隣の部屋のガラスをぶち破るお手伝い。


ヒビは入るもののなかなか突破口を開くまでには到らない。


サスガ防犯ガラス!


相手がドロボーさんだろうがにわか消防団員の郵便配達だろうが容赦ナシ!


頑として侵入を拒む姿は、ある意味、
アッパレ。


メイド・イン・ジャパンの品質に感心(?)しつつも、攻撃の手は緩めない。


やがて頑張った割には、かなり控え目なサイズの穴が開く。


ここまででヨシとする。


もうこれ以上ワタシの出番はナイ。


引き際を誤って、しなくてもよいケガをするハメになるのだけは避けなければ・・


わずかに開いた穴からホースのノズルを突っ込んで奮闘する団員サンを横目に、再びヤジウマ エリアまで戻って、


今度こそ、本当の火事見物!



現場は、たとえ最上階の窓から飛び下りてもネンザできるかどうかあやしい、住人も少ない田舎の二階建てアパート。


逃げ遅れる方が至難のワザ



人命に係わる事態は今後マズ起こらないダロウ。


見守る群集と作業を行う消防団員のミナサマにも、ある種の安心感が漂っている。


そうこうする内に、消防隊が到着。


長いように感じたここまでの経過時間はほんの5・6分。


消防車から手際よくホースが伸ばされ、アッという間に放水開始。


消防団と合わせて、6・7条の水の線が、煙りを上げるアパートに集中する。


ここまで来ると、さすがに煙りの勢いが落ちてゆく。

頃合いを見計らって、隊員サンが突入し、程なく煙りが消えて適宜、放水も止められていく。


建物はわりとしっかり残ったものの、火元を中心に内部は結構な惨状。


味のある年代モノの木造アパートの歴史に劇的に終止符が打たれる現場に立ち会うのも、そうある事ではない。

水浸しの路面に乱雑に絡まり合うホースをバイクで乗り越えながら現場を離れ、配達に復帰する。



帰局して休暇室でいつも通りコーヒーを飲んでいると、


ちらほらと火事の噂話が聞こえてくる。


お客様の書留を腰のバッグに吊したまま、危険行為を行ったワタシはアル意味、肩身が狭い。


とうとう12月の任期終了まで、その話は口にしなかったノデ、


和歌山県北部、紀の川沿いの田舎の駅前の火災現場で、消火器を振り回していた勇敢な(無謀な?)アルバイト配達員の奮闘が局内で語られることは、


ついに無かったのデシタ。




おわり

まだワタシが三十代の頃のオハナシ。


当時、半年間ほど勤めた郵便局の配達中に遭遇した火事の顛末。



夏前から始めた期間アルバイト(三ヶ月更新)の二期目もあとわずかになり、新入りのバイトさんに引き継ぎをしていました。


通区(だったと思う)の要員としての業務も後少し、郵便物は新入サンに任せて、午後の書留の配達に行く。


電車の本数は一時間に一本の由緒正しいローカル駅の周辺がワタシの受け持ち。


局内でも郵便物の多い区域だが、書留はそれ程でもないので気楽な午後になるはずデシタ。



午前中に通った駅前を再び通過しようとすると、道端にはなにやら人だかりが出来ている。


交通事故でもあったのかと思ったが、皆は道路とは反対側を注視している。


駅から一段下がった古い木造のアパートの建ち並ぶ一角から黒い煙りが立ち上っているのが見える。


火事!?


というよりは、たき火といった規模のケムリ。


いつもは雨戸を閉めきって室内は乱雑な、チョット怪しい独り住まいのオジサンのお宅。


そういえば
午前中の配達のとき、その日に限って窓を開け放ち、部屋の中には携帯用のガスコンロに鍋が乗っていたのを思い出すに至って、


やっと火事の現実感が沸き起こってくる。


そうこうする内に窓の縁からは煙りに混じって炎が見え始めた。


一刻の猶予もないこの状況になっても、誰ひとり消火を始める気配がなく、例のオジサンも窓の外で右往左往するばかり。


手袋にヘルメットを身に付けて完全武装しているのは見渡した所、ワタシひとり・・


そしてそのとき、歴史は動いた!?


イエ、ワタシが動きマシタ!


こうなったら動くしかないデショ。


下におりてバイクを停めると、


日頃の配達の時に目についていた、向かいのアパートの壁にセットされた消火器を取り出し、火元に向かう。


マコトニ不謹慎ではアリマスガ、


小走りで片手に提げた消火器のピンを抜く瞬間のこの気持ちの高揚感は、やった者にしか解らない!


映画のワン・シーンに入り込んだキブン・・


幸い、都市ガスなどには無縁の地域。


いきなり大爆発?もしないだろうとタカをくくり、


窓の縁に半身になりながらホースを室内に向け、引き金を、


じゃなくて、レバーを握る!

トコロガ、
結構古い消火器だったようで、消火剤はチョロチョロと床に落ちる程度!


一瞬"シマッタァ~"という思いが脳裡をよぎるが、


ここまで来たからには、あとには退けん!

(退けますケド・・)


エエイ、ママヨ!


レバーを握り締めたまま、


耐えて待つコト


一秒・・二秒・・さんびょうぉぉ~


やっとヤツは消火器の本来の役目を思い出したかのように、ホースから消火剤がほとばしる。


壁や床や天井めがけて手当たり次第に乱射すると、


窓の縁から出ていた炎がゆっくりと後退していく。


ヨッシャー!


このまま火が消えたら、


表彰状 & 感謝状モノのお手柄・・


高揚感に功名心が入り混じったとたん、


ヤツの寿命が・・尽きる。


再び窓から炎が出て来る。


コリャ、アカン!


全力待避~!


とりあえず、広場の反対側まで下がって成り行きを見守っていると、


ようやく地元消防団がホースを引きずりながら登場する。

(アトハ、マカセタゼ!)


これでワタシもただのヤジウマに戻れるというモノ・・


その頃には更に増えていた見物人とともに、


セミ・プロのお手並みを拝見することになったのデシタ。




つづく
差し込む朝日に光る磨き上げられた廊下に

響くいくつもの靴音。

向かって来る白衣の集団の様子は、さながらブルー・インパルスのデルタ・フォーメーション?


音符
"ザイゼン教授の総回診デス。"


つ、遂に

ワタシの命運も

尽きるときが来たノカ・・・


手術だけはゴカンベンを~!



・・そんなコトは起こりようがありません。


ココハ、和歌山県のとある地方病院!


サトミ センセがとばされて来ることはあっても、


ゴロー クンは絶対来ない。



"白い巨○"ゴッコはこのくらいにして、


さて、そろそろ帰り仕度をセネバ・・


痛み止めのおかげでよく眠れたワタシは、何事もなかったように退院したのですが、


それから一週間に及ぶ"石"との闘いの日々が待ち受けていたのでした。



周期的に鈍い痛みが起こり始めると、それはやがて例の苦痛へと変わってゆく。


尿路の中で、石が徐々に動いていく時の特徴のある痛み方。


再診の連休明けまでまだ日がある。


手持ちの座薬はすぐになくなり、


腹を抱えながら自力運転で病院に行くも、休みの期間中なので一般の受診はしてくれない。


せめて痛み止めだけでもと頼むが、三十分経ってもなんの進展もない。


堪らずに入院していたナースセンターに直訴しにいく。


婦長サンを掴まえると、

呑気な受付嬢の対応に

遂にブチキレるワタシ。

(ゴメンナサイ・・)


痛みを抱えると、人は凶暴になるモノデスネ。


血相を変えた婦長サンの取り計らいにより、お薬ゲット!



交通センター、ケーサツ署、・・そして病院。

よくよく公共の施設とは相性が悪い。




ときはうつり、
翌年の10月(お伊勢参りの直前)に、

予期していた二回目の症状が来る。


一通りの診察手順を済ませ自宅待機。


前回はうっかりトイレに流してしまったので、


紙コップを用意して


双子の弟(妹?)の出産準備を整える。


出る直前、特に男性はその気配は割とよく判るものです。ドキドキ


検尿の要領でキャッチした"ソレ"は、


黒っぽいゴツゴツとした隕石みたいな形。


真珠のような色と形を期待していただけに、チョット ザンネン。


その検体を病院で分析してもらう。


成分 : シュウ酸カルシウム

大きさ : 3.5mm

推定年齢: ?

性別 : 不明・・

作者 : ワタシ

の、

ごく一般的な結石。


とりあえずの予防策としては、

偏らない食事と運動。

水分を一日1.2リットル飲むコト。
(62kg、成人男性の場合)


潜伏期間中に調べた医療書によれば、痛みの始まりに軽い跳躍をすると石の移動が早くなるとか。


おかげで二個目は三日程で出ましたが、なんの予備知識も無しに、アノ痛みに耐えながらジャンプするのは、並の精神力ではムリ。


"石"と"医師"と"意思"の力が


お腹の中で交錯した症例を

ここにご報告イタシマシタ。


何かのご参考までに・・


追伸:

サトミ・・

これが"イシ"の本来の姿ナノダヨ



もう喋るんじゃないザイゼン!


・・・



― 完 ―