昨日、性同一性障害特例法の戸籍の性別変更の要件にある、生殖腺がないこと、が、最高裁で違憲という判決が出ました。
しかし、変更後の性別に似た外観の性器を備えていること、は高裁に差し戻しとなりました。
判決では、似た外観の性器のために結手術をしなければならないという意味なので、現状は変わりません。
今回の判決を見て、一部の方がトランスヘイトにより、風呂場や更衣室に男性器をつけたトランス女性がくる恐れを抱いています。
これについては、SNSでは心無いコメントが来ると予想されるため、こちらでトランス男性からではありますが、意見を述べます。
現在、ガイドラインに沿った性同一性障害の診断をもらうには、ジェンダークリニックという、全国に限られた場所に何度か行かなければもらえません。
私が住む関西では、大阪にいくつかありますが、当事者が増えていることにより、初診を受けるのに2、3ヶ月待たなければいけません。
最寄りにジェンダークリニックがない地方に住む当事者は、通院だけで多額の交通費がかかるので、経済的負担を強いられます。
生まれの性別である証明を受けるため、遺伝子検査を含めいくつか検査を受けてから、診断を受けます。
その後、ホルモン療法はスムーズにできますが、手術を受ける場所が限られており、手術はすぐに受けられません。
数ヶ月から年単位で手術を待たなければいけない状況です。
手術の保険適用は一応は認められているのですが、ホルモン療法が混合診療となるため、先にホルモン療法を始めてしまうと、性別適合手術は保険適用にはなりません。
私のようなFTMトランスジェンダーの場合の手術は、乳房切除手術と卵巣子宮摘出手術(性別適合手術)の2つを行います。
ガイドラインに沿ってホルモン療法の先に乳房切除手術を受けられるのは、現時点では、山梨医科大学1カ所のみです。
当事者が多くおとずれるため、初診まで時間がかかり、手術できるのも相当先になります。
性別適合手術は別の場所で、かつ、自由診療で受けなければならないのです。
ですので、手術を早く望む当事者は、性同一性障害の診断を受けたら、ガイドラインからは外れるケースがほとんどです。
ホルモン治療をしつつ、日本よりも手術執刀数が多いタイへ行き、上下同時の手術を受ける人、国内でまずは乳房切除手術を受ける人とわかれます。
ホルモン治療も2つの手術も自由診療で、多額の費用がかかり、かつ、手術は数ヶ月待たなければいけません。
ホルモン治療は、一回につき2000-5000円。
乳房切除手術は、60万円〜100万円以上
卵巣子宮摘出手術も、80万円〜100万円以上
とかかります。
施設によって金額が異なるため、おおよその金額となってます。
上下のオペをしようとしたら、多めに見積もっても200万円以上は必要となってくるのです。
陰茎形成までオペをする方はまれです。
ホルモン治療により肥大した陰核を「似た外観の性器」とみなして、性別変更の要件を満たすことになっているからです。
陰茎形成までしようとしたら、さらに300万円くらいはかかるらしいです。
国内では手術の執刀数が少なすぎるので、タイで形成する方がほとんどです。
そして、上下の手術を受けて、戸籍の性別変更を家裁に申し立てるための診断書を専門医に書いてもらう必要があります。
この診断書は私が見た範囲では、3万円ほどかかります。
保険適用ではありません。
そして、高額のお金と長い時間をかけて、身体に負担をかけて、ようやく家裁に申し立てて、性別変更となります。
ただ、一般の人たちと同じように生活したいだけなのに、かなりの代償を当事者は払っています。
お金、時間、身体への負担です。
さらに性別変更をしても、「性別を変更した」と言わなければならない場面があったりします。
とくに医療現場では、申告する必要があります。
FTMに限っていうと、卵巣と子宮を取ると、個人差はありますが、ホルモンバランスが崩れるため、更年期障害の症状が出ます。
せっかく戸籍の性別を男性に変えたのに、女性の更年期障害の症状に苦しむ方もいます。
卵巣と子宮を取らなくてもよいのなら、費用も時間もかかりませんし、更年期の症状が強く出ることはないかもしれません。
ホルモン治療でも更年期の症状が出る当事者の方がいますが、卵巣から女性ホルモンが出ることで、ホルモンバランスが少しは取れているので、症状はひどくはないです。
私が知る、性同一性障害、とくに、FTMトランスジェンダーの治療の実態は上記になります。
特例法が変更され、生殖腺がない、がなくなるとしたら、似た外観の性器ということで、乳房切除手術は必要だと思います。
似た外観の性器をもつ、がなくなるとしたら、何の治療もしなくても、性別変更が可能になるのかもしれません。
ですが、私自身は、乳房がある状態での性別変更は、世間に迷惑をかけることになるので、乳房切除術は必要と考えています。
そして、トランスヘイトをする方たちに伝えたいのは、こんなにお金と時間をかけてやってる当事者からしたら、それでも手術を必須を継続するなら要望したいことがあります。
・一般の病院でも診断書がもらえて手術できるようにすること
・性同一性障害のあらゆる治療の保険適用
・不当な差別を受けた時の罰則を法律化
この3つを、私たち当事者とともに要望してほしいです。
ヘイトする前に、私たち当事者が置かれている状況を知ってほしいです。
世間が無関心で、特例法も自治体によるパートナーシップ制度もない、ただただ偏見と差別を受けるだけの、暗い時代を知っています。
いまだにパニック障害で苦しんでいるのは、高校時代に受けたイジメによるものです。
一般の人と同じように、ささやかな幸せを感じて生きたいだけなのに、ずっとずっと苦しんできています。
偏見や差別により存在が否定されるので、自分なんか社会のお荷物だから生まれてこなければよかったと、数えきれないほど思いました。
手術により性別変更が可能になっても、パニック障害のため距離がある病院に通うことができません。
つらいです。
今回の判決は現状は変わらないにしても、トランスジェンダーの人にとっては、人権という意味では少しは前進したのかもしれません。
でもまだ私は苦しいです。
誰にも届かないかもしれないけど、判決を受けた私の思いをつづっておきます。