こんにちは。
理念浸透コンサルタントの松本です。
「単一原因論のバイアス」という言葉を
聞いたことがありますか?
ある出来事や結果に対して、
実際には複数の要因が複雑に絡み合っているにもかかわらず、
「原因はこれだ」
と、一つの原因だけに結びつけてしまう考え方です。
私たちは無意識のうちに、
「物事をシンプルに理解したい」
「できるだけ簡単に解決したい」
と考えてしまいます。
そのため、複雑な問題ほど、
分かりやすい「一つの原因」に飛びついてしまうことがあります。
例えばA社では、
採用した新入社員の約5割が
3年以内に退職しています。
人事担当者は、
「心理的安全性が低いことが原因です。
ここを改善しなければ、定着率は上がりません」
と考えていました。
また、B社では、
目標とするリピート率を下回っています。
店長は、
「口コミサイトの低評価が原因だ」
と結論づけ、
口コミ評価を高めるための施策を
店内で話し合っているそうです。
さて、皆さんはどう思われますか?
A社は、
「心理的安全性」さえ高めれば、
本当に定着率が上がるのでしょうか?
B社は、
「口コミサイトの評価」さえ改善すれば、
本当にリピート率が上がるのでしょうか?
もちろん、それらが原因の一つである可能性はあります。
しかし、
「それだけが原因なのか?」
という視点も必要ではないでしょうか。
新入社員の離職であれば、
・給与や待遇
・上司との関係
・仕事内容とのミスマッチ
・成長実感
・労働時間
・採用時の期待とのギャップ
など、複数の要因が絡んでいるかもしれません。
リピート率についても、
・商品やサービスそのもの
・価格
・接客
・待ち時間
・立地
・競合店の存在
・口コミ
など、さまざまな要因が考えられます。
問題が複雑であるほど、
一つの原因だけで説明するのは難しいものです。
それでも私たちは、
「これが原因です」
と言われると、安心してしまいます。
原因が一つなら、
打ち手も一つに絞れます。
つまり、
解決に向けたアクションを簡単にしたい。
そんな思いから、
原因を一つに絞ってしまうこともあるのではないでしょうか。
しかし、本当にそれほど単純な問題なのであれば、
「なぜ今まで解決できなかったのか?」
という疑問も残ります。
何か問題が起きたとき。
あるいは、誰かが
「これが原因だ!」
と強く主張しているのを聞いたとき。
すぐに鵜呑みにするのではなく、
「他にも影響している要因はないか?」
「複数の要因が組み合わさっているのではないか?」
と、一度立ち止まって考えてみる。
あえて問題を複雑なまま捉える視点も
必要なのではないでしょうか。
問題を単純化することは、
解決策を考えやすくするメリットがあります。
一方で、単純化しすぎると、
本当の原因を見落としてしまう危険があります。
だからこそリーダーには、
「分かりやすい答え」に飛びつかず、
複数の可能性を考える姿勢
が必要なのだと思います。
それが、クリティカルシンキングの
一つの役割なのではないでしょうか。