先日、お笑い芸人のMさんのお話を聞く機会がありました。
その中で、とても印象に残った言葉があります。
「周りの芸人はみんな、
早く売れたい、早くテレビに出たいと言っていました。
でも僕は逆でした。
売れるのは、むしろ遅い方がいいと思っていたんです」
最初は意外に感じました。
しかし話を聞いているうちに、
その意味が分かる気がしました。
テレビでは時々、
「あの人は今」という企画が放送されます。
一時的なブームで人気を集める。
しかし、世間が飽きるのも早い。
ジェットコースターのように売れて、
そのまま姿を消してしまう人も少なくありません。
芸能界で長く生き残るためには、
芸の幅、
対応力、
人間関係、
新しい笑いを生み出す力。
そうした武器や引き出しが必要になります。
ところが、それらが十分に備わる前に売れてしまうと、
人気だけが先行してしまう。
結果として、人気が落ちた時に支える土台がありません。
だからこそ、
世の中に知られるまでの下積み期間にも
意味があるのだと思います。
別の事例です。
以前、漁業の再建に取り組むT社長のお話を聞きました。
地元の漁師さんも気づいていない地域資源の価値を見出し、
商品化して世の中へ送り出していました。
しかし漁師さんたちは、
「早く売りたい」
と考えます。
当然です。
生活もありますし、
一日でも早く売上をつくりたい。
ところがT社長は、
あえてブレーキをかけていたそうです。
「販売を急いではいけない。
お客様は想像以上にシビアだ。
一度買って期待外れだったら、
二度と手に取ってくれない。
未完成のまま市場に出してしまえば、
失った信用を取り戻すのは難しい」
芸能界と漁業。
一見するとまったく異なる世界です。
しかし共通していることがあります。
それは、
『売れ急がない』
ということです。
私たちはつい、
早く結果を出したい。
早く評価されたい。
早く売上を上げたい。
と思ってしまいます。
しかし持続的な成功を目指すのであれば、
急ぐことよりも、
土台をつくることの方が大切なのかもしれません。
偶然のヒットや一時的な成功は、
運でも手に入ることがあります。
しかし長く支持され続けることは、
運だけでは実現できません。
そこには必ず、
省いてはいけないプロセスがあります。
売れることを急ぐよりも、
売れ続ける準備をする。
その視点を忘れないようにしたいものです。