前回のウォーミングアップに対するコラム第1弾はこちらからご覧下さい!

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 今回はウォーミングアップ(以下,W-UP)に関するコラム第2弾となります。前回の“W-UPの目的及び効果について”の内容を踏まえ,“W-UP構成時の留意点と適切な方法について”を詳述していきます。


①静的ストレッチの取り入れ方に注意!
 近年では,『W-UPにおける静的ストレッチは逆効果である』という否定的な説が幅広く周知されてきています。静的ストレッチとは,一般的ないわゆるストレッチを指し,数十秒間筋肉の伸張姿勢を保持するというものです。この否定説の理由として,“筋肉を伸ばし過ぎると筋力の発揮効率が下がるためにパフォーマンスの低下を招く”など,種々の理由が説かれており,実際にパワー系あるいは瞬発系の能力低下が顕著であったという研究・論文は数多く散見されます。その一方で,『W-UPには動的ストレッチが有用である』という説が推奨され,動的ストレッチによってパフォーマンスが向上する事が知られています。しかし,否定説が有力視される中“短時間の静的ストレッチであれば効果的”と説く人もおり,やはり様々な考え方・捉え方があるというのが現実です。
 そこで今回は,前回のコラムで述べた“目的及び効果”を基に適切な捉え方を考えて行きます。
 前回述べたようにW-UPにおいて最も重要な事は,“体温・筋温の上昇”です。W-UPでは一般的に,ジョギング等で身体を温めた後にストレッチを行いますが,その際に座った状態で静的ストレッチを行ったり,「123」などの掛け声の下に行うストレッチを行ったりする事は,長い時間静止状態にあり,せっかくジョギングによって上昇した体温・筋温を低下させてしまう可能性があり,本来のW-UPによる“目的及び効果”が得られにくくなる恐れがあります。一方で,ストレッチは筋肉の柔軟性を向上させると共に,関節可動域の増大やスムースな関節運動の獲得などの重要な効果もあります。
 これらを踏まえると,『W-UPにおける静的ストレッチは取り入れない方が良い』ではなく,『W-UPにおける静的ストレッチの取り入れ方には注意しよう』が,適切な捉え方だと考えられます。
 では“適度(短時間)”とは何か?
 時間を言及している中で数説挙げると,効果的な短時間とは“34秒”や“56秒”などの見解が多く,逆に最大筋力の低下を招く長時間とは“10秒以上”や“15秒以上”との見解が多いです。従って,静的ストレッチをW-UPへ取り入れる場合は,筋肉の伸張時間を考慮してみましょう。
 尚,動的ストレッチとは,ダイナミックストレッチと同義語であり,その名の通り動きの中で筋肉を伸張し,体温・筋温の上昇を図りつつ,筋肉の伸張を繰り返す事で柔軟性を向上させるものです。有名な例として,サッカーなどのW-UPで散見される“ブラジル体操”がこれに該当します。走り(動き)ながら上・下肢の各関節を大きく,あるいは早く動かす所が特徴的で,上述してきたW-UPの効果・目的を十分得るために有用手段であると言えます。

②服装への配慮も重要
 繰り返しとなりますが,W-UPの目的は体温・筋温の上昇であり,この効果を効率良く得るためにW-UP時の服装も工夫してみましょう。具体的には,W-UP開始時はウォーマーやウインドブレーカーなどを着用し,十分に体温を高めた上で徐々に脱いでいく手段が最適です。ただし,季節や気候・天候などの環境面との兼ね合いも不可欠です。夏の時期に前述したような上着を着る事は,発汗量及びエネルギー消費量の増大を招くため適切ではありません。混同されやすいですが,“体温を上げる”と“汗を出す”は意味が異なり,W-UPにおける多量の発汗は有益な効果とは言えません。従って,環境面に合わせた服装を心掛け,且つ十分な体温・筋温の上昇が得られる調整(脱着)を行いましょう。


③練習と試合とでW-UPを変える?
“試合”を“特別なもの”と捉え,普段の練習時に行っているW-UPとは異なる内容を実施するケースも少なくありません。しかし,その結果いつもよりW-UP時間が長くなってしまったり,選手の精神面における準備が整わなかったりと,些細な事でもパフォーマンスの低下を招く恐れがあります。従って,普段から又は時折でも試合の日を想定したW-UPを導入するという事も重要な要素と言えます。

例外的に,試合会場によっては十分なW-UPのスペースが確保できない場合や天候によって同様な状況となった場合などは,限られたスペースや環境の中でもW-UPの効果を最大限引き出せる内容を選定する能力も必要です。これらを踏まえて,身体的にも心理的にもより良い準備状態をつくるための工夫をしてみましょう。


W-UPの適当な時間とは?

競技種目や天候及び気温などによっても異なるため,数値的に時間を明言する事は難しいですが,長時間のW-UPは体力的な消耗も増大し,あまり適切ではありません。実際,欧米諸国と比較して日本はW-UPに長く時間を費やしているそうです。特に,大事な試合である程それは顕著となる傾向にあるとの事で,W-UPによってパフォーマンスの低下を招かぬよう,指導者の方々は注意が必要な点です。

さらにW-UP終了時間の目安については,W-UPによって上昇した筋温の持続時間は4590分間である一方で,循環器系への効果は510分間の休息で消失してしまうとされているため,試合前のW-UPは,各効果の持続時間を考慮し約10分前の終了が適切であると考えられます。


⑤専門的ウォーミングアップの導入

これは,どの種目もどのチームもすでに実践できている点だと思いますが,要するに各種競技特性に特化したW-UPが必要であるという事です。前項までに述べてきたランニングや静的及び動的ストレッチなどは“一般的ウォーミングアップ”を指し,W-UPの手順としては大抵この後に“専門的ウォーミングアップ”が行われます。

“専門的ウォーミングアップ”とは,サッカーであればパスやドリブル,ロングキックなど,野球であればキャッチボールやバッティングなど,各競技の専門性に特化した動作を行うW-UPを言います。前回のコラムで紹介した目的の内,“予行練習的要素”というのがこれに該当します。つまり“専門的ウォーミングアップ”の導入により,各競技における特異的な動作の理解を脳へ促すと共に,身体の準備を整え,急激な動作によるスポーツ傷害の予防とパフォーマンスの向上へ繋げます。






それでは,次回のコラムは『クールダウンについて』をUPする予定です!

次回も是非お読み下さい!



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