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十二支伝説 by フルバ
昔々あるところに その人は居ました
ずっとずっと前から 一人で居ました
山を降りれば 多くの人間が暮らしていることを知っていました
けれど一人で居ました
千の力を持ち 千の命を持ち
千の記憶を持つ自分は
人間と違っていることを知っていました
その人は 人間をおそれていました
傷つくことをおそれていました
多くの力を持ちながら
多くの人間と違う自分を おそれていました
そんなある日 一匹の猫が訪ねてきました
突然の来訪者にひどく困惑していると
猫は恭しく頭を下げ
「以前より貴方のお姿を拝見しておりました」
「貴方は大変不思議な御方 貴方にひかれてやみません」
「私はただの野良猫だけれど どうかお側に置いて下さい」
「どうか"神様"」
それから猫はその言葉通り 側を離れませんでした
片時も離れませんでした
神様はそれがとてもとても嬉しくて
「そうだ人間と違う者達となら 私は仲良くなれるのかもしれない」
「私と同じ想いを知る者となら 楽しい宴会を開けるかもしれない」
神様は招待状をたくさんたくさん書きました
たくさんたくさん送りました
すると十二匹の者達が 神様のもとへやって来ました
それから十三匹と神様は月の輝く晩の度宴会を開きました
歌い踊り 笑い合いました
神様も始めて声をあげて笑いました
人間とは違う者達の宴を 月も静かに見守りました
けれどある晩 猫が倒れてしまいました
それは寿命というもので どうにもできないことでした
みんなみんな泣きました
みんなみんな気づいていました
いつか皆死んでしまう
宴会は終わってしまう
どんなに楽しくとも
眩いほど大切と思っても
いつかは
神様はひとつ 呪いごとを唱えると 円をくるりと盃に描き
それを猫に一舐めさせ 皆に向かって言いました
「私達の絆を 今ここで永遠の物としよう」
「たとえ私やみんなが死んで朽ちても 永遠な絆でつながっていよう」
「何度死んで何度生まれ変わろうと 同じようにまた」
「何度でも 宴会を開こう」
「みんなで仲良くいつまでも 私達は不変であろう」
皆は大きくうなずくと 鼠が最初にひと舐めし
次に牛 次に虎 次に兎と
順番に契りの盃をわけあいました
最後に猪が舐め終わる頃 猫が息もたえだえに泣き出していました
「神様」
「神様どうして 私に舐めさせたのです」
「神様私は」
「永遠などいりません」
「不変などいりません」
それは 思いがけない言葉でした
神様やみんなにとって 拒絶の言葉でした
みんなみんなかなしくなって 猫をなじり諭しました
それでも猫は言いました
「神様神様 こわくとも」
「終わることを受け止めましょう」
「さびしくとも さりゆく命を受け入れましょう」
「神様私は一時でも お側にいられて幸せでした」
「もしもう一度互いに死んで生まれ変わって 出会うことができたなら」
「今度は月夜だけでなく 日の光の下で笑う貴方に会いたい」
「今度は私達だけでなく 人間の輪の中で笑う貴方に」
「私は会いたい」
猫は最後にシッポをふるとパタリと死んで行きました
けれどもう誰も猫には構いませんでした
みんなは猫に裏切られた気持ちで一杯でした
それからしばらくすると次々に みんな死んでいきました
最後に龍も死んでいき
神様はまた一人きりになりました
そうして遂に神様も 死にゆく日を迎えました
けれどこわくはありませんでした
みんなと交わした約束が支えになっていたからです
「また」
「また宴会を開こう」
「もう一度何度でも いつまでも 変わることなく」
「たとえ今は一人でさびしくとも」
「あの約束の向こうでみんなが待ってる」
今は遠い 昔の話
誰もが忘れた 最初の記憶
最初の約束
ずっとずっと前から 一人で居ました
山を降りれば 多くの人間が暮らしていることを知っていました
けれど一人で居ました
千の力を持ち 千の命を持ち
千の記憶を持つ自分は
人間と違っていることを知っていました
その人は 人間をおそれていました
傷つくことをおそれていました
多くの力を持ちながら
多くの人間と違う自分を おそれていました
そんなある日 一匹の猫が訪ねてきました
突然の来訪者にひどく困惑していると
猫は恭しく頭を下げ
「以前より貴方のお姿を拝見しておりました」
「貴方は大変不思議な御方 貴方にひかれてやみません」
「私はただの野良猫だけれど どうかお側に置いて下さい」
「どうか"神様"」
それから猫はその言葉通り 側を離れませんでした
片時も離れませんでした
神様はそれがとてもとても嬉しくて
「そうだ人間と違う者達となら 私は仲良くなれるのかもしれない」
「私と同じ想いを知る者となら 楽しい宴会を開けるかもしれない」
神様は招待状をたくさんたくさん書きました
たくさんたくさん送りました
すると十二匹の者達が 神様のもとへやって来ました
それから十三匹と神様は月の輝く晩の度宴会を開きました
歌い踊り 笑い合いました
神様も始めて声をあげて笑いました
人間とは違う者達の宴を 月も静かに見守りました
けれどある晩 猫が倒れてしまいました
それは寿命というもので どうにもできないことでした
みんなみんな泣きました
みんなみんな気づいていました
いつか皆死んでしまう
宴会は終わってしまう
どんなに楽しくとも
眩いほど大切と思っても
いつかは
神様はひとつ 呪いごとを唱えると 円をくるりと盃に描き
それを猫に一舐めさせ 皆に向かって言いました
「私達の絆を 今ここで永遠の物としよう」
「たとえ私やみんなが死んで朽ちても 永遠な絆でつながっていよう」
「何度死んで何度生まれ変わろうと 同じようにまた」
「何度でも 宴会を開こう」
「みんなで仲良くいつまでも 私達は不変であろう」
皆は大きくうなずくと 鼠が最初にひと舐めし
次に牛 次に虎 次に兎と
順番に契りの盃をわけあいました
最後に猪が舐め終わる頃 猫が息もたえだえに泣き出していました
「神様」
「神様どうして 私に舐めさせたのです」
「神様私は」
「永遠などいりません」
「不変などいりません」
それは 思いがけない言葉でした
神様やみんなにとって 拒絶の言葉でした
みんなみんなかなしくなって 猫をなじり諭しました
それでも猫は言いました
「神様神様 こわくとも」
「終わることを受け止めましょう」
「さびしくとも さりゆく命を受け入れましょう」
「神様私は一時でも お側にいられて幸せでした」
「もしもう一度互いに死んで生まれ変わって 出会うことができたなら」
「今度は月夜だけでなく 日の光の下で笑う貴方に会いたい」
「今度は私達だけでなく 人間の輪の中で笑う貴方に」
「私は会いたい」
猫は最後にシッポをふるとパタリと死んで行きました
けれどもう誰も猫には構いませんでした
みんなは猫に裏切られた気持ちで一杯でした
それからしばらくすると次々に みんな死んでいきました
最後に龍も死んでいき
神様はまた一人きりになりました
そうして遂に神様も 死にゆく日を迎えました
けれどこわくはありませんでした
みんなと交わした約束が支えになっていたからです
「また」
「また宴会を開こう」
「もう一度何度でも いつまでも 変わることなく」
「たとえ今は一人でさびしくとも」
「あの約束の向こうでみんなが待ってる」
今は遠い 昔の話
誰もが忘れた 最初の記憶
最初の約束

