思えば、検診で異常を指摘されたのが8月の初め…がんと確定したのが8月末、実際に手術したのが10月の初め。
ここまで、2ヶ月かかっていない。
正直、自分でも展開が早すぎるのでは?と思うことがある…他の人の体験談を見てると異常の指摘から確定まで結構日数がかかってる人も少なくない。
早いうちになんとか出来て良かったと思う反面、どこかで「自分だけが取り残されて物事が進んでしまった」という感じも否めない。
単刀直入に言うと「自己決定がほとんど出来なかった」と思う。
他の人の体験談とか読んでると、多くの人が「検診で異常を指摘されてからまず、”どこで治療を受けるか”という選択」から始まっているのに対して私の場合…精密検査するからとそのまま主治医のメインの職場に連れて行かれ、そのまま精密検査をして、結果はプリントで説明されて言われるがままにそこにサインをしたら「手術同意書」だった…という展開である。
こういう展開って「いつの間にか借金の連帯保証人になっていたという場面くらいしか思いつかない。
ちなみに入院日も手術日も精密検査の結果を聞いた日にはすでに決められてしまっていた…おそらくすでに予約も入れられていたと思う。
自分で決定できた事は「手術法」と「個室に入院する」ということくらいだ…他の事は全部決められてしまったか、気がついたら決まっていた。
正直なところ、これが自分にとって良かったのかどうかわからない。
私の周囲の人はみな口をそろえて「早く見つかって手術までできて良かったね」というが…実のところ、未だに気持ちが付いて行けていないし、むしろ後悔に近い感情もある。
がんと診断され、説明を受けた際に書類を「一旦持ち帰る」という選択も出来たかもしれないと思うと同時に「他の病院っても行くあてもないし診てもらえるコネもない」し、そもそも「建物がボロいから嫌だ」というのは正当な理由になるのだろうか?
主治医が信用できないというわけでもない、後で調べてみたらどうも「乳がん界隈ではかなりヒエラルキーは上位のポジションに就いているくらい知識も実力もある人のようだ(実際、職場の診療所の検査担当の人や他の診療科の医者も”あの先生は腕が良いよ”と言っていたので評判は良いのだろう)」が…ちょっとリーダー気質が強いと言うか、いわゆる「だまって俺についてこい」なタイプなのかな?と思う、女性の先生だけど。
例えるなら、唐沢寿明版の白い巨塔で財前五郎が手術を受けるか迷ってる患者に対して
「助かりたければ切るしかありません!!」
とキッパリ言い切ったシーンがあるが、まさにあんな感じの人なのかもしれない…”俺は教授になるよ、確かなものが欲しいからな”みたいな野心は感じられなかったけど。
あと、教授になるとしても色々裏工作したり札束を積んだりするようなタイプでもなさそう…念のため。
実は、本人に「正直なところ、ここまで来る展開が早すぎて気持ちが付いて行けていない」とこぼしたところ…どうしてこんなに早く事が進んだ理由を直接聞くことができた。
「普通は乳がんの診断がついたあとに造影剤いれて、広がり具合なんかを画像で確認するもんなんだけどTomokoさんは喘息の症状があるから造影剤を使った検査が出来ない。だからどこまで広がっているか?どのように散らばっているか?などが全くわからないので早急に手術をする必要があった。画像で確認できればもう少しゆっくりと決めるって選択肢もあるけどね。」
と言われた…やっぱり、私には端から「自分で選んで決める」権利はなかったのだ。
この主治医は「今起きている事実を淡々と述べ、起こっていることに対してどのように対処していけば良いのかを具体的かつ現実的に説明するタイプの人」なのだ、だから手術前に「鎮静なしで歩いていくのは(怖いから)嫌」と言っても「他の人もみんな鎮静しないし、帰りはベッドごとだから」なんて返してきたのだ。
彼女はきっと冷淡とかドライというわけではなく、いわゆる「理解は出来るけど、共感は出来ない」タイプなのだろう…病院の公式サイトにも「乳がん手術は体にかかる負担が少ないので~」といった事を書いているが、確かにお腹を切るような手術に比べたら出血量とか術後の痛みは少ない方かもしれない…しかし、場合によっては「胸を全部取らないといけない」というのは相当心理的なダメージが強そうにも思えるんだが(部分切除でもやっぱり不安だが)、そういうところまでは推し量れないタイプなのはどことなく私の”性格”と似ているような気がしなくもない(私は自覚があるのであえて性格と表記していますが、この人の場合はもしかしたら”特性”なのかも?)。
あと、やたら長文書くんだけど…じっくり読み返すと「結局、何が言いたいの?」になりがちなところも(病院の公式サイトがまさにこんな感じ…リンク貼りたいけど自主規制、気になる人は探してください)。
なんか、なるべくして乳腺の道に進んだのかもしれない…同じく女性相手の診療科だと婦人科系があるけど、ワンチャン婦人科疾患専門なら行けそうな気がするんだけど、わりと「共感力」や「お気持ち察する」事を要求されると思われる産科は絶対に向いていなさそう、絶対アメブロあたりで「態度が冷たい産婦人科医」とかいう見出しでアメトピになりそう(予想)
なぜ、そう思ったのか?それにはちゃんと理由があって、私が「ネットには”乳がんになっただけでなく、治療も辛い”とかいう内容の書き込み」が多くて正直なところ私も先々が心配…と話したところ
「そういう書き込みをしている人ってどういう人?」
と聞かれたので、私は「ほとんどトリプルネガティブ(一般的に”予後が悪い”とされている、乳がんの中ではマイノリティ)の人ですね…(ちなみに私はホルモン受容体陽性乳がんで予後が良いことが多いらしい、よくある乳がん)」と答えたら
「そういうのはね、ただ愚痴を聞いてほしいだけの人がネットに書き込みしているからだよ」
(だから、そういう書き込みは見るだけムダみたいなニュアンス)と言い放った。
私は思わず…「確かに、そうですね」と妙に納得してしまったが、よくよく考えたら結構失礼な発言だなと今になって思うけど確かに主治医の言うことは一利あって、経過が順調な人ってあまり書き込みしないし、私のようなタイプが淡々と治療の経過などを書いたところで基本的に反応は薄い。
ちょっと前にニュースになった「がんを克服したYouTuberのチャンネル登録者数が激減した」という話題の通り、人の不幸が好きな人は多いのかもしれない。
今回手術を受けたことを私の周囲の人は「早い段階で見つかって、早く手術出来て良かったね」とみな口を揃えて言う。
しかしながら、今更…本当にこれで良かったのだろうか?としばらく思い悩んでいたのはここだけの話。