・出典:いのち環境ネットワーク
https://www.ehs-mcs-jp.com/
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電磁波・化学物質・低周波音について各党に質問(2022年)
2022年6月、各政党に電磁波、化学物質、低周波音についてどのような政策を考えているか、公開質問をしました。
公開質問状全文と各党からの回答をお知らせします。
日本維新の会、立憲民主党、社会民主党からの回答はありませんでした。
2022.6.14.
公開質問状
私たちは、電磁波や化学物質、低周波音など環境因子に敏感な環境過敏症の患者会です。
参院選に向け、環境因子に関する考えや政策案を伺いたく、公開質問状をお送りします。
6月10日までにご回答を頂けますと幸いです。
質問と回答は当会ホームページ(https://www.ehs-mcs-jp.com)等で公開します。
1)電磁波対策について伺います。
欧州連合(EU)、欧州議会の下部機関で最新技術のリスク評価と政策提案を行う「欧州議会科学技術評価委員会(STOA)」の報告書「5Gの健康影響」では、携帯電話で使われるマイクロ波電磁波を「おそらく発がん性の可能性がある」と認め、マイクロ波には生殖影響や胚、胎児、新生児の発達に影響があると評価しました[1]。
ミリ波については、リスク評価できるだけの科学的知見がないと評価しました。
欧州では今後3〜5年はミリ波基地局が導入されないので、その間に影響を調査するよう政策提案をしました。
さらに、子どもや高齢者、電磁波過敏症など電磁波の影響を受けやすい人が集まる場所は、タバコ対策で禁煙区域を設けたように、「無線周波数電磁波の禁止区域」を設定すること、学校や職場、住宅に有線回線を設置すること、現在の被曝指針の見直しも提案しています。
日本の電波防護指針は米連邦通信委員会(FCC)が定めたものと同じですが、かつて日米と同じ規制値を採用していたカナダは2015年に指針値を改定し、規制を厳しくしています。
アメリカ会計検査院(GAO)はFCCに対し、最新の研究を反映して電磁波被曝指針を見直すように求めました[2]。
しかし、FCCはこれを拒否したので、消費者団体などが行政手続法違反だと提訴しました。
ワシントン特別区控訴裁判所は、この訴えを認め、FCCの判断は恣意的で行政手続法に違反していると判決しました[3]。
また、カリフォルニア州の教師は学校無線LANの電磁波で電磁波過敏症になり、教室に電磁波対策を行うことなどを求めたのに拒否され、障害者差別だと提訴しました。
カリフォルニア州控訴裁判所は、教師の訴えを認めました。
判決文では「アメリカ合衆国で『Wi-Fiは病気になる可能性がある』という主張を認めた最初の判決であることは明らかなようだ」と記されています[4]。
日本ではミリ波基地局を含めて5G基地局の設置が進み、基地局周辺では体調不良を訴える人も増えています。
学校無線LANの影響で体調不良を訴える子どもや教師がおり、無線LANを有線LANに切り替えた学校もあります。
これらの状況を踏まえ、国民の健康や環境を電磁波から守るために、どのような対策が必要だと考えておられますか?日本の現在の指針値を、利益相反のない中立的な組織によって、最新の研究を踏まえて新たに策定する必要性について、どう考えておられますか?日本ではミリ波基地局の設置も進んでいますが、住宅地や学校、病院周辺で、ミリ波基地局を含む携帯電話基地局の設置を規制する必要があると考えておられますか?
2)化学物質対策について伺います。
合成洗剤や柔軟剤などに含まれる香料で、頭痛やめまい、腹痛、吐き気など多様な症状を訴える人がおり、「香害」とも呼ばれています。アメリカ、ワシントン大学のアン・ステインマン博士らは、衣類用合成洗剤、柔軟剤、シャンプーなど25製品から133種類の香料成分を検出し、中には発がん性があるものも使われていました[5]。
アメリカ労働省障害者雇用政策局(ODEP)の下部機関、職業調整ネットワーク(JAN)は、報告書「香料過敏症の従業員」を発表し、皮膚のアレルギーや呼吸器系の症状が起きることを認め、香料を職場から排除し、良好な空気質を保つことなどを求めています[6]。
日本にも、化学物質過敏症を発症し、他の児童の衣類について柔軟剤などで体調を崩し、別室授業を余儀なくされ、教育を受ける権利を侵害されている子どもたちがいます。
職場や学校の化学物質対策や香料の規制について、どのような対策が必要だと考えておられますか?
3)低周波音について伺います。
国内外の疫学調査では、風力発電所から2kmまたは2.5km以内では、睡眠障害などの健康問題を訴える率が有意に高いことが報告されてきました[7-8]。
しかし、日本では、陸上風車は住宅から1km以内の場所にも設置されています。
また、洋上風車は沿岸部・港湾部に設置されるため、地域住民への健康影響が懸念されています。
政府は2040年までに洋上風力発電を3000〜4500万kW導入する方針を掲げています。
風力発電の設置を推進するために、2021年には、風力発電所の第一種事業(必ず環境アセスメントを行わなければいけない)の規模を「1万kw以上」から「5万kw以上」に変更しました。
環境アセスメントでは、住民も意見を述べる機会が設けられていますが、実際には、事業者が発表した環境影響評価図書をダウンロードすることも印刷することもできず、情報公開が不十分です。
各地で反対運動や裁判が起きていますが、第一種事業の要件を緩和することは、さらに紛争を増やす可能性があります。
またアメリカ内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)は、洋上風車の海中送電ケーブルから磁場が漏洩し、1m離れた場所で地場強度が10〜40mGあると報告しました[9]。
サケ、ウナギ、スズキ、ヒラメ、エビ、カニなどは電磁場に敏感だと報告されていますが、洋上風車を導入する前に、ケーブルからの漏洩磁場による海洋生物への影響を十分に調査するべきではないでしょうか。
風力発電に伴う低周波音や電磁場、健康、環境影響を防ぐために、どのような対策が必要だと考えておられますか?
文献
[1]STOA, European Parliament. ”Health impact of 5G”(2021)
[2]US Government Accountability Office. ”Report on Congressional Requests Telecommunications: Exposure and testing requirements for mobile phones should be reassessed”(2012)
[3]United States Court of Appeals for the District of Columbia Circuit.No.20-1025,Decided August 13,2021
[4] Court of Appeals of California, No.B294240. BROWN v. LOS ANGELES UNIFIED SCHOOL DISTRICT. (2021)
[5]A Steinemann. et al., Environmental Impact Assessment Review.(2010)31(3):328-333
[6]Job Accommodation Network. “Employees with fragrance sensitivity”(2013)
[7]石竹達也「風力発電による低周波音・騒音の長期健康影響に関する疫学研究 平成二十七年度環境研究総合推進費終了成果報告書(5-1307)」
[8]山田大邦「石狩既設風車の低周波音・超低周波音測定と健康被害」日本の科学者(2017)52:45−50
[9] BOEM. ”Evaluation of potential emf effects on fish species commercial or recreational fishing importance in Southern New England”(2019)