・米国CDCの香害対策
米国アトランタにあるCDCは、連邦政府の保健福祉省所管の総合研究所です。
そこから勧告された文書は米国内だけでなく、世界的に大きな影響力があり、世界各国で保健、衛生、疾病予防向上のために参照、活用されています。
CDCは、まず自分たちの施設内の香料禁止を始めました*1。
2009年より1万5000人の職員に、香水だけでなく、香りつき洗剤や柔軟剤などで洗濯した衣類を身に着けて職場に来ることを禁止しました。
化学物質に敏感な他の職員の健康に悪影響を与え、ぜん息やアレルギー、慢性頭痛などの原因となるだけでなく、専門的な仕事をする環境にふさわしくないという理由によるものです。
CDC が所有・管理する「すべての施設内において禁止」している香りつき製品は、お香、ろうそく、香りを放出するあらゆる種類の機器、香りつき消臭剤、消臭剤を自動噴霧する機器、部屋で芳香を漂わせるポプリ、コンセント差込式・スプレー式の芳香剤などです。
また、パーソナルケア製品(オーデコロン、香水、エッセンシャルオイル、香りつきスキンケア、ヘアケア製品)を、仕事場、手洗い所、もしくはその近くにおいて使用すべきでないとしました。
またCDCは、職員に対し、仕事場に来るときには、できる限り香りつき製品を使用しないことを奨励しました。
香料を使用していないパーソナルケア製品や洗濯用洗剤は容易に入手可能なので、それらの使用を推奨したのです。
こうした米国の対策にならい、わが国でも厚生労働省などの公的な機関から、まずは香りを自粛することの重要性を理解し、対策を講じてもらいたいものです。
公立学校でフレグランスフリー教育
最後に、米国の学校で進められている香害対策の一つをご紹介しましょう。
図2は、米国で、教育現場における香料自粛の先進的教育プロジェクトを法制化するにあたり、ミネソタ州健康局が州議会に提出した報告書(2008年)です。
2007年、ミネソタ州の健康局は教育省と協力し、同州内の公立学校においてフレグランスフリー教育を推進するためのワークショップを立ち上げました。
その目的は、学校の生徒や教職員に、香りつき製品がぜん息や化学物質過敏症を引き起こす可能性があることを知らせることです。
また、香りつき製品は、そのにおいを吸い込んだ子どもの呼吸器だけでなく、学習能力にも悪影響を及ぼす可能性があることの認識を、広く共有するためです。
教育省の専門家は、ミネアポリスの教育委員会と協力し、生徒最低3名、教師2名、学校管理者1名、ミネアポリス教育委員会職員1名で構成されるワーキンググループを立ち上げました。そこで重要なポイントは、香りの問題は、敏感な生徒だけでなく、すべての生徒の健康に関わる問題であるとされた点です。
ワークショップの議論と活動の内容は、❶香りとは何かについての情報提供をすること。
❷香りつき製品のリスト化をすること。エアーフレッシュナー(香りつき空気清浄機)や除菌・消臭剤など室内で使う製品、教職員らの手指消毒剤、学校のクリーニング用薬剤、ワックスなど。
❸香水や自宅で使用している洗剤や柔軟剤の香りをつけてくる生徒や教師、訪問者などの香り問題について議論すること。
❹フレグランスフリー、香りを減らす方法の議論。代替製品のリスト化と紹介。
❺香りの害に無関心な人たちを説得する方法を検討。
❻フレグランスフリーキャンペーンの方法などでした。
日本より一歩先に香害の被害者が声を上げ、その対策に乗り出した米国の事例を参考にして、私たちも子どものいる場所や学校などでの香害対策に活かしましょう。
*1 CDC, INDOOR ENVIRONMENTALQUALITY, 2009