・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
ニュースレター第123号 2020年6月
・米国で進む香害対策
理事 水野玲子
一歩先をゆく米国の香害対策
2019年以降、わが国では各地で香害をなくす運動が広がり、地方自治体での陳情、意見書採択、学校での周知や香料自粛の呼びかけなどの取り組みが進んでいます。
化学物質過敏症患者とその家族のための情報交換会である「CS 憩いの仲間」の調査(2019年5月~10月)によれば、全国21都道府県の議会で、香害に関する議題が取り上げられました。
その後も地方議会から国会へ、香料自粛の啓発や、「家庭用品品質表示法」の指定品目に柔軟剤などに含まれる香料の成分表示の義務づけを求める意見書などが次々と提出されています。
しかし、自治体レベルで高まる香害への問題意識をよそに、国レベルでの動きはほとんど見られません。
一方、米国では環境保護庁(EPA)が、認証制度「セイファーチョイス(より安全な選択)」を作りました。
洗たく洗剤や食器洗剤など、健康や環境の面からより安全な製品を選ぶための制度で、その中には柔軟剤などの香りつき製品から揮発する化学物質の害を避けるために特化したものがあります。
また、国民の命と健康を守るための機関である疾病対策センター(CDC)も、職員にフレグランスフリーを求めるなど、国が率先して香害の対策を進めています。
そうした一歩先を行く米国の香害対策の取り組みを以下に紹介します。
フレグランスフリー製品の認証制度
消費者の中には、香りに敏感でアレルギー反応を起こす人もおり、フレグランスフリー製品が必要な人がいます。
EPA は2016年、化学物質過敏症の人たちが製品を選ぶ際に役立つように、「セイファーチョイス・フレグランスフリーラベル」を作りました(図1)。
たとえ少数であっても、香りに敏感な人たちを柔軟剤などの香りつき製品から揮発する化学物質の害から守るためです。
そこで強調されていることは、「フレグランスフリーと無香料とは違う!」ということです。
フレグランスフリーとは、香料やそれをマスキングする(それ固有のにおいを消す)目的で化学物質を使用していないことを意味します。
製品に「無香料」と記載されていても、他の成分のにおいを中和したり、マスキングしたりするための化学物質を使用していることが多いので、EPA はその点に注意を喚起しているのです。
なお、EPA のフレグランスフリー認証では、メーカーは厳しい基準をクリアすることが求められます。
そして、香料とその関連物質を使用していないことが認められれば、フレグランスフリーラベルの使用が許可されます。
また、固有のにおいのマスキングをするために他の化学物質が使用されてないことも、同時に明記されます。