・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
ニュースレター第123号 2020年6月
・次亜塩素酸水の噴霧による空間除菌や手指消毒に注意
理事 橘高真佐美
次亜塩素酸水、有効性の確認できず
新型コロナウイルス感染拡大防止策として見かけるようになった次亜塩素酸水について、製品評価技術基盤機構(NITE)の「新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価に関する検討委員会」(以下「検討委員会」といいます)が評価を行い、現時点では有効性は確認できないとする中間結果*1を公表しました。
NITE は、加湿器などで噴霧することやスプレーボトルなどで手や指、皮膚に使用することは安全性についての科学的な根拠が示されておらず、使用を控えるよう呼びかけました。
委員会の検討資料等は NITE のウェブサイトで公表されています*2。
次亜塩素酸水の販売実態や空間噴霧をめぐる事実関係を経産省がまとめたファクトシート*3によると、製法や原料が明記されていない他、有効性・安全性の根拠を示さずに、食品添加物であること等を根拠として人体への安全性を謳っている、使用上の注意事項の適切な記載がないなど、表示に数多くの問題があり、商品の名称そのものが医薬品と同じ、あるいは紛らわしいものもあります。
承認を得ずに手指・人体への効果を謳っている商品を販売することは薬機法(旧・薬事法)違反となります。
消毒剤の噴霧は避けるべき
また、「加湿器等に次亜塩素酸水を入れて噴霧することで“空間除菌”ができる」と謳っている商品が多く販売されていますが、世界保健機関(WHO)の見解は、新型コロナウイルス感染症について、噴霧や燻蒸による環境表面への消毒剤の日常的な使用を推奨しないとし、さらに、消毒剤を人体に噴霧することは、肉体的にも精神的にも有害である可能性があり、いかなる状況であっても推奨しないというものです。
米国疾病予防管理センター(CDC)も、中国国家衛生健康委員会も、消毒剤の噴霧は推奨していません。
厚労省も既に、3月6日付で社会福祉施設等において、次亜塩素酸を含む消毒剤の噴霧については、吸引すると有害であり、効果が不確実であることから行わないこととする通知を発出しています。
消毒剤の噴霧によるウイルス除去の有効性について、国際的に確立した評価方法は見当たらず、次亜塩素酸水の噴霧が、換気によるウイルス排出や「3密」回避による感染防御よりも有効とする分析も見当たらないそうです。
また、経口毒性のみを確認し、吸引毒性を確認することなく、噴霧の安全性を主張している評価も見られるということです。
実際、消費者からの事故情報データバンクには、次亜塩素酸水の空間噴霧による健康被害と思われる報告がされています。
次亜塩素酸ナトリウムとは別物質
なお、名前の似ている次亜塩素酸ナトリウムは、ハイターのような塩素系漂白剤等に含まれるアルカリ性消毒剤で、次亜塩素酸水とは別の物質です。
次亜塩素酸ナトリウムは、新型コロナウイルスの消毒剤として0.05%でドアノブやトイレなど対物には有効とされていますが、人体に有害性があり、空間散布は大変危険です。
腐食性もあるので、使用方法に十分注意してください。
手洗いは石鹸で、消毒はエタノールか熱湯で
手洗いには通常の石鹸が十分有効です。
物に付着した新型コロナウイルスはアルコール(最適濃度は70%)または80℃以上10分の熱湯による消毒で失活しますので、こちらを優先しましょう。
*1 新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を公表します(第2弾)~物品への消毒方法の選択肢がさらに広がります~ https://www.nite.go.jp/information/osirase20200529.html
*2 NITEが行う新型コロナウイルスに対する消毒方法の有効性評価に関する情報公開 https://www.nite.go.jp/information/koronataisaku20200522.html
*3 「次亜塩素酸水」等の販売実態について(ファクトシート) https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005-2.pdf
「次亜塩素酸水」の空間噴霧について(ファクトシート) https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529005/20200529005-3.pdf