・ネオニコチノイドによる
ミツバチへの毒性
ネオニコチノイド系殺虫剤は、現在、世界で最も使われている殺虫剤です。
最初に開発されたネオニコチノイド系農薬であるイミダクロプリドは、利部伸三博士らの地道な研究の成果であり、アセチルコリンの受容体の働きを阻害するもので浸透性を持つ新しいコンセプト殺虫剤でした。
しかし、非ターゲット生物種であるミツバチへの影響が問題視されるようになりました。
DDT のミツバチに対する毒性を1とすると、イミダクロプリドの毒性は7297倍にもなります。
レイチェル・カーソンは「沈黙の春」で既に浸透性殺虫剤という言葉を使い、毒が入った蜜をミツバチが巣に持ち帰り、毒性のあるハチミツが生産されるかもしれないと述べています。
2017年に行われた研究では、世界中から集められた約200のハチミツのサンプルのうち、基準値よりははるかに少ないものの、75%からネオニコチノイドが検出されました。レイチェル・カーソンが1962年の時点で既にこのような予言をしていたことには驚くばかりです。
農薬の安全性評価の限界
農薬はヒトが摂取することを前提として散布されていますが、医薬品とは違い、ヒトに対して毒性試験を実施することはできず、動物実験によって得られた毒性が出ない曝露量であるNOAEL(無毒性量)に安全係数(よく1/100が用いられる)をかけて許容一日摂取量(ADI)を定めます。
同じネオニコチノイド系農薬でも、種類によって、その毒性は様々です。
またネオニコチノイド系農薬は神経毒性による殺虫効果がありますが、現在実施されている神経系の毒性試験、とりわけ発達神経毒性試験は感度が十分では無く、特に感受性が高い胎児期、新生児期、幼児期の曝露影響が十分に検出できていない可能性があります。これは農薬の安全性の評価にかかわる大変大きな問題です。