有機野菜を食べて体内の農薬を減らせるか? | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議

ニュースレター第122号 2020年4月

有機野菜を食べて体内の農薬を減らせるか?
ネオニコチノイド曝露実態の解明とその改善に向けた取り組み
北海道大学大学院獣医学研究院毒性学教室 准教授 池中良徳
2020年1月19日、池中先生をお招きし、有機野菜を食べることによって体内の農薬を減らせることをお話いただきました。

 

バイオハザードとケミカルハザード
 私は南アフリカ共和国ノース・ウエスト大学の客員教授として南アフリカでの研究も行っています。

なぜ、私が今日の演題にあるような農薬問題に関心を持ったか、その背景を説明するためにも、南アフリカでの研究についてご紹介します。

南アフリカでは蚊などの害虫の駆除のために多量の殺虫剤を使っています。
殺虫剤は、生物による危険性(バイオハザード)をコントロールするために撒きます。

バイオハザードが化学物質による危険性(ケミカルハザード)よりも大きいときに、殺虫剤を撒くという選択がされることになります。世界的には、マラリア、結核、HIV が三大感染症とされています。

熱帯地域にある途上国では、今でも年間3000人の子どもが亡くなっており、マラリアの制圧は大きな課題となっています。

途上国では、マラリア対策として、DDT が使用されますが、環境への影響を最小限とするために室内限定散布が推奨されています。

1996年に DDT の使用が禁止され、ピレスロイド系殺虫剤が使用されたときには、マラリア患者数が激増し、2000年には4万人を超えましたが、2001年に DDT が再び使用されるようになると、劇的に患者数が減りました。

DDT の使用を禁止したことにより、DDT がマラリア制御に極めて有効であることが証明されることとなりました。
しかし、DDT を室内に散布すれば、環境負荷は少なくても、DDTが残留した室内の壁を触った手を幼児が舐めたりしますし、母体も曝露されます。

DDT は脂溶性なので母乳に蓄積しやすく、授乳期間中に乳児が2g の DDT を摂取していたという研究結果も出ています。

これだけの量の DDT に曝露されると、男性ホルモンであるテストステロンの調整に影響を及ぼすことが報告されています。それでも、DDT が使い続けられるのは、マラリアに対して効果があるからです。
ケミカルハザードの難しいポイントは、リスクとベネフィットが存在することです。他方、バイオハザードにはベネフィットは存在しません。

殺虫剤問題の根底には、この二つのハザードの違いがあります。

バイオハザードは影響が比較的分かりやすく社会的な関心が高いため、多くの知見・研究成果が得られ、病気の診断方法も充実しています。

しかし、ケミカルハザードの影響は、目に見えにくく、分かりにくいので、社会的関心は相対的に低くなってしまいます。

また評価すべき化学物質の数も多く、慢性影響や多世代影響は、まだまだ分かっていないことが多いのが現状です。時代とともに、評価される化学物質も変わってきます。

以前よりも、テストステロンを測ることが容易になり、DDT のテストステロンへの影響の可能性も考えられるようになりました。

時代や技術の進歩、社会的関心によって毒性の定義が変わるので、毒性試験の高度化と毒性の再評価が必要となります。