有害物質と子どものIQ
魚など食品中の油脂に蓄積されているダイオキシンやポリ塩化ビフェニル(PCB)は、子どもの免疫力を低下させ、アレルギーを悪化させる原因のひとつです。
また、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)などの有機塩素系殺虫剤は、神経系に過剰な興奮を起こさせます。
以前、米国五大湖の PCB に汚染された魚を摂取した母親から生まれた子どもの調査が実施され、PCBと乳児の精神発達、記憶、注意力、IQ低下との関連が指摘されました。
子どもの PCB 濃度が高いとIQ が低下することがわかりました。また別の研究では、母親が DDT にばく露した場合には、子どもの自閉症リスクが上がることもわかりました。
DDT の代謝産物ジクロロジフェニルジクロロエチレン(DDE)レベルが高い母親は、自閉症児をもつ可能性が高くなります。
わが国の平成28年度環境省の化学物質環境実態調査によると、DDE の魚類汚染レベルは、現在でも高い状態が続いています。
総揮発性有機化合物量(TVOC)と子どもの動作性IQ(PIQ)
シックハウス症候群かつ胎児期に異常がなかった5歳~16歳の子ども11名を対象に調査を行いました。その結果、室内の TVOC の濃度が高い群では、PIQ(知能指数には VIQ=言語性 IQ とPIQ =動作性 IQがある)が低下しました(図表1)。
DDT などの有機塩素系殺虫剤の多くは、毒性が強く1970年代に使用禁止になりましたが、現在でも使用されているのが室内の防虫剤に含まれるパラジクロロベンゼンです。
学校のトイレボールや、押し入れの防虫剤に使われています。パラジクロロベンゼンの人への影響は、DDTなどの有機塩素系殺虫剤の影響*2に類似しており、室内のパラジクロロベンゼンの濃度が高いほど、PIQが低下することが判明しました。文部科学省はこの研究*3報告後、学校のトイレなどにおける防虫剤の使用を止めるよう通達を出しました。
また、パラジクロロベンゼンは眼球運動を障害し、PIQ を低下させることもわかりました。
この物質と同じ作用をする脂溶性の有機塩素系化合物や殺虫剤が、今でもわが国では食品や人体に残留し汚染し続けています。