2:化学物質の脅威)化学物質7万の危険にさらされる人々と | 化学物質過敏症 runのブログ

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新田が務める会社
様々な機能を持ち鮮やかな色彩をアピールする最先端の衣料品には、様々な化学物質が使われている。

化学物質は揮発性が有るが、それが衣服に付着したまま梱包されることは避けなければならない。男性は、製品の見た目とともに、化学物質特有の刺激臭が残っていないか確認していた。

新田が作業現場を描いた絵がある。完成した衣服を手に取って確認する。

鼻を近づけて匂いをかぐため、手も鼻にも染料が付着したという。

そして2007年から2012年までその勤務を続けて帰国。

その後、暫くして体調に異変を感じる。尿に血が混じっていたのだ。

思い出したのは、工場に大量に置かれていた容器に描かれた「CI」の文字。

CI酸性という塗料や染料の総称だ。

このCI酸性には多種多様の化学物質が含まれている。新田は専門家を訪ねて調べ始めた。

すると、CI酸性の中には、ベンジジンという化学物質が含まれていることがわかった。

当時、新田が尋ねた専門家の一人、堀谷昌彦は言う。

「ベンジジンは体内に取り込まれて代謝されると発癌性物質になります。既にそのメカニズムも明らかになっています」

堀谷は、大学院で化学を学び化学薬品メーカーで長く勤務。

自らがそうした化学物質を製造してきた経験を持つ。

「勿論、化学物質は今の産業を支えることに不可欠です。しかし、それは注意して使わなければいけない。そして、実際には、作業員がその化学物質で健康を害するケースは少なくないんです」

長くそうした現場を見てきた堀谷は、会社を辞めて、今は化学物質の被害を無くすための取り組みを行っている。

その堀谷からすれば、新田がCI酸性に含まれるベンジジンに曝露して膀胱癌になったことは、ほぼ間違いない。

つまり、状況は労災、つまり労働災害だ。

ここで冒頭紹介した政府が有識者会議に示した文書に話を戻す。

文書は厚生労働省化学物質対策課が作成したものだ。

それによると、私たちの社会を豊かにするために作り出される様々な製品の製造過程に導入されてきた化学物質は、約70000種。

このうち、その強い毒性が確認されて使用が禁止されたのは石綿(アスベスト)など8種。危険性が確認されて使用に規制がかかっているものが約700種。

つまり危険性が確認されて使用に規制が有るものは、1%ほどでしかない。

また、化学物質は次々に開発されており、毎年新たに導入される化学物質は1000にのぼるという。

大量の化学物質が事実上、放置されている状況をまとめた政府の資料
文書がにおわせている通り、会社の安全管理が徹底されているとは言えないケースは散見されている。

事実上、放置されていると言って良い状況だ。

こうした中で、被害が表に出るケースも有る。

2018年2月、三星化学工業の従業員4人が会社を提訴している。

安全配慮義務違反だ。この4人は作業場の化学物質に曝露して膀胱癌になった。堀谷らの調査もあって労災が認められた。4人は新田と状況が似ている。

4人はポスターのインクを扱っていたという。更に多くの作業員が膀胱癌を発病しており、被害は広がっている。

ただ、多くは表に出ない。

労災が認定されるケースは極めて稀だからだ。従業員がどのような化学物質にいつ、どこで暴露したかを明らかにするには会社の協力が不可欠だからだが、そういう会社は珍しい。