日本人のグリホサート/グリホサート製剤の曝露
実際,日本人は日常的にどれぐらいグリホサート/「ラウンドアップ」などのグリホサート製剤に曝露しているだろうか。
海外の研究では,ヒトの尿中のグリホサートや主要代謝物AMPA を調べた結果が多数報告されており,米国,南米,アジアなど多くの地域で,ヒトが高率にグリホサートに曝露していることがわかっている。
2019 年の総説52では,19 報の論文,12 カ国のヒトの尿(一部,血清)に含まれるグリホサートのデータを比較・解析して報告している。その結果,尿中のグリホサートの濃度は一般人では0.16~7.6 ng/ml,職業的曝露(農業従事者など)では0.26~73.5 ng/mと記載されている。
検出方法や感度などが異なり,検出率が記載されていない場合もあるので,比較はできないが,米国では非農業者の母親で65%,子どもで88% もグリホサートが検出されたケースもある52。
タイでは,妊婦82 検体の血清を調べたところ,検出率が46%,濃度0.2~189 ng/ml,臍帯血75 検体で検出率51%,濃度0.2~95 ng/ml が検出されており,グリホサートがヒトの胎盤を通過することが確認されている53。
日本では,環境省が有機塩素系や有機リン系などの農薬について,ボランティアの血清や尿を検査した結果を公開しているが,グリホサートに関しては調べられていない。
学術論文では,国内の自殺目的の服毒による症例報告が複数出ているが,一般的な日本人の曝露に関するデータは出ていない。
環境NGO グリーンピースが日本人の7 名の尿を,ドイツの研究機関に依頼した結果の詳細を,2016 年に公開している54。
その結果によると,従来の食生活をしている2 家族7 名(大人3 名,子ども4 名)全員で,グリホサートが0.1~1.1 ng/ml と低濃度だが検出された。
さらに10 日間有機農産物を摂取すると,1 名以外はグリホサートが検出限界(0.1 ng/ml)以下に下がったと報告している。
この検査では,有機リン系やピレスロイド系なども検出されており,日本人が日常的に複数の農薬に曝露していることが示された。
また日本では,デトックス・プロジェクト・ジャパン55(代表:山田正彦,天笠啓祐,印鑰智哉)が今年5月に発足し,日本における食の安全・安心を国民と共に進めるため,その先駆けとして日本人のグリホサート曝露量の調査を始めた。
まず,国会議員23 名を含む28 名有志の毛髪検査をフランスの研究所Kudzu Science に送り,グリホサートを含む62 成分の農薬を調べた結果を発表した。
その結果,21 名から14 成分の農薬関連物質を検出し,特に除草剤グリホサート関連物質の検出率が高かった。