4:「ラウンドアップ」のヒトへの発がん性と多様な毒性〈下〉 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・グリホサートによるDNA のエピジェネ
ティックな変異
 ―― 次世代,次々世代に及ぶ健康障害
2019 年の最新の論文では,グリホサートを妊娠8 日から14 日まで母ラットに25 mg/kg/dayを腹腔投与し,次世代のF1,次々世代のF2 を交配したところ,世代を越えた影響が確認された22。グリホサートの投与量は,半数致死量の0.4%,無毒性量の50% に相当する濃度を用いている。

その結果,曝露したラットや仔ラットで影響がほぼないにもかかわらず,次々世代のF2,さらに次の世代のF3 で,腫瘍や生殖機能不全,肥満など多様な障害が確認されている(図2A)。

2世代目は,肥満,睾丸と卵巣と乳腺の病気が増加した。3 世代目の雄では,前立腺疾患が30% 増加し,雌では腎臓病が40% 増加した。

さらにF1~F3 の雄の精子を調べたところ,曝露していない対照群に比べ,DNA のメチル化の変異が多数見つかり,それが次世代の障害を起こしていると論文の著者らは考察している。この実験結果には驚いたが,グリホサートがDNA のメチル化に変異を起こすことは,複数の論文で既に報告されている。
2018 年の論文では,グリホサート製剤を,母ラットに妊娠から授乳期間まで2~20 mg/kg/day投与し,曝露した雌仔ラットと正常な雄ラットを交配して,次の世代への影響を調べた23。

その結果,次世代F1 では影響がなかったが,次々世代F2 で低用量曝露でも胎仔数が減少し,胎仔の大きさも小さくなっていた。

この研究グループの2019 年の論文では,発達期にグリホサートを曝露した次世代F1 の雌仔ラットの子宮を調べたところ,女性ホルモン受容体の遺伝子発現が異常に増えており,この受容体の遺伝子調節領域のDNA のメチル化に異常が確認された24。

論文の著者らは,次々世代の胎仔の異常は,グリホサートがDNA にメチル化異常を起こしたためと推察している。

女性ホルモン受容体は子宮で重要な働きをしているが,適切な量が必要で,異常な発現はヒトでも多囊胞性卵巣症候群25,子宮内膜症26や原因不明の不妊症27などを起こすと報告されている。
グリホサートによるDNA のメチル化の変異は,他にも動物実験で確認されている。

2019 年に発表された論文では,母ラットに妊娠から授乳期間,グリホサート製剤を投与した後(グリホサート濃度で3.5~35 mg/kg/day),生まれた雄仔ラットを調べると,乳腺の発達に異常がみられた28。

この乳腺組織から抽出したDNA を調べてみたところ,女性ホルモン受容体遺伝子のプロモーター領域のDNA メチル化に変化が確認された。
グリホサートによるDNA のメチル化に起こす変異は,ヒトのリンパ球培養系でも報告されている。

2017 年の論文では,グリホサートを末梢血単核細胞に投与して24 時間培養すると,0.5 mM以上ではDNA に損傷が見られ,0.25~0.5 mMではDNA のメチル化に異常が起こっていた29。
一般的にがん細胞にはDNA のメチル化異常が多く確認されていることから,グリホサートの発がん性には,このDNA のメチル化の変異が関わっているのかもしれない。

植物でもグリホサート/「ラウンドアップ」の曝露により,シロイヌナズナのDNA のメチル化に変異が起こったという報告が出ている30, 31。