2.実験方法
2.1 試料
2011年4~6月,2012年5月,2013年4~7月,2014年4~7月,2015年5~9月にかけて,大阪近郊の一般家庭において,それぞれ14,6,22,13,14家庭の電気掃除機の集塵容器内容物を収集した。集塵容器内容物(ハウスダスト)は,毛髪,糸くず,食品残渣,紙片,プラスチック片,砂をできる限り除去して分析した。フルイによる粒子の調整は行っていない。
掃除機は各家庭で使用しているもの(紙パック式,サイクロン式)をそのまま使用してもらった。
各家庭の試料採取条件や床の状態(じゅうたん,フローリングなど)は指定しなかった。
なお,シロアリ防除処理の有無についての聞き取り調査も行った。
2011~2012年採取試料については,有機リン系殺虫剤のクロルピリホス,ダイアジノン及びフェニトロチオンと有機塩素系共力剤S-421の4種類を分析した。
2013~2015年採取試料については,上記4種類に有機塩素系防虫剤パラジクロロベンゼンとピレスロイド系殺虫剤のペルメトリンを加え,合計6種類を分析した。
2.2 試薬
S-421(bis(2,3,3,3-tetrachloropropyl)ether)はRiedel-deHean社製,クロルピリホス,ダイアジノン,フェニトロチオン,ペルメトリン,及びパラジクロロベンゼンは和光純薬工業㈱製を使用した。活性炭カラムはSUPELCO社製ENVI-Carb(0.25g)を用いた。
クリーンアップ用のシリカゲルは,SIGMA-ALDRICH社製のシリカゲル40(Art.10180)(70-230mesh)を用いた。
ジエチルエーテルは和光純薬工業㈱製の環境分析用,アセトン5000とヘキサン5000は和光純薬工業㈱製の残留農薬・PCB試験用を用いた。
ガラス器具はアセトン,ヘキサンで洗浄後使用した。
2.3 装置と条件
炎光光度検出器付きガスクロマトグラム(FPD-GC),電子捕獲型検出器付きガスクロマトグラム(ECD-GC)は島津製作所製GC-2014を使用し,それぞれのガスクロマトグラフィーの条件を以下に示した。
有機リン剤はFPD-GCで定量した。キャピラリーカラムはJ&W Scientific製DB-5MS(30m×0.25mm,膜厚0.25・m)を用い,注入部200℃,検出器300℃,キャリアガスはヘリウム(線速度30cm/sec),水素と空気の流量はそれぞれ,80mL/min(95kPa),130mL/min(55kPa)で分析した。
カラム温度は70℃(1分保持)―毎分20℃昇温―230℃―毎分2.5℃昇温―275℃で段階的に昇温した。
注入量はスプリットレス法で2・Lとした。
検出限界値(S/N≧5)は,クロルピリホス,ダイアジノン及びフェニトロチオンとも0.010・g/gとした。
ECD-GCでは,キャピラリーカラムはHEWLETTPACKARD製HP-5(30m×0.32mm,膜厚0.25・m)を用い,注入部200℃,検出器310℃,キャリアガスはヘリウム(線速度30cm/sec),窒素のMakeup流量は,30mL/min(96.4kPa)で分析した。
カラム温度は,ペルメトリン,S-421では80℃―毎分20℃昇温―180℃―毎分5℃昇温―280℃で段階的に昇温した。
パラジクロロベンゼンでは50℃(1分保持)―毎分10℃昇温―80℃―毎分25℃昇温―280℃とした。
注入量はスプリットレス法で2・Lであった。
ペルメトリンはcis型とtrans型の和で定量した。検出限界値(S/N≧5)は,ペルメトリンで0.10・g/g,S-421とパラジクロロベンゼンでは0.010・g/gとした。
2.4 分析方法
ハウスダスト中殺虫剤成分の抽出,精製法は前報10)に準じた。
ハウスダストは毛髪,食品残渣,紙・プラスチック類を除去した後によく混ぜて均質とし,その0.5gにアセトン30mLを加え,超音波を10分間かけた後遠心分離(5000rpm,5分)し,抽出液をナスフラスコにろ過した。
これを2度繰り返した後にろ液を合わせ,ロータリーエバポレーターで40℃以下で減圧乾固し,残留物はヘキサンに溶かして抽出液とした。
強く着色した抽出液は,グラファイトカーボンカラム(予めジエチルエーテル+ヘキサン(4:96,v/v)3mLと続いてヘキサン5mLで洗浄)に負荷し,ジエチルエーテル+ヘキサン(2:98,v/v)6mLで溶出した。
抽出液は窒素気流下で0.5mLに濃縮してエーテルを除去後,シリカゲル40カラム(1g)で精製した。
すなわち,試料を負荷後,ヘキサン8mLでパラジクロロベンゼンを溶出し,次いで,ジエチルエーテル+ヘキサン(4:96,v/v)10mLでクロルピリホス,ペルメトリン及びS-421を溶出後,ジエチルエーテル+ヘキサン(30:70,v/v)10mLでダイアジノンとフェニトロチオンを溶出した。