4:重症薬疹の病態と治療 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・重症薬疹の治療
重症薬疹の病態が主としてホストの激しい免疫アレルギー反応による重篤な組織障害であることから,その治療としてステロイドパルス療法が積極的に行われるようになってきている.

また,病勢が強く症状が進行する場合や,合併症としての敗血症やウイルス血症が認められる場合には,ヒト免疫グロブリン大量静注療法(IVIG),血漿分離療法(PA)等が併用されることも増えている.

これらの治療の有効性についてはまだ症例の蓄積と長期的な予後追跡による検討が必要であるが,有効であったとの臨床報告例が増加しており,ここでは現時点で一般的に推奨される治療法の実際の用量・用法とその主な作用機序について解説する.

 

ステロイドパルス療法:通常メチルプレドニゾロン(mPSL)を20~40mgkg を目安に1~2gday を3 日間,セミパルスの場合は10mgkg を目安に0.5gdayを3 日間点滴静注する.

その後の治療としては病勢,体重を考慮し,中等用量・高用量のPSL を0.5~1~2mgkg を目安に30~60~120 mgday を投与する.

その作用機序としては,①細胞質内のステロイドレセプタ―と結合することで,核内へシグナルを伝達し,複数の標的遺伝子の転写活性を制御する,②膜への直接作用により活性化されたT 細胞や樹状細胞(DCs)等の細胞膜を安定化し,その機能を抑制すると考えられる.

その結果として,炎症性サイトカインの産生阻止,貪食細胞やDCs の機能抑制による強力な抗炎症作用,活性化T 細胞の抑制,リンパ球減少,抗体の産生阻止,白血球の遊走阻止,肥満細胞や好酸球の遊走抑制,COX-2 の阻害が生じ,治療効果を発揮すると考えられる28)―33).
パルス療法は,皮膚および他臓器の障害の進行を速やかに抑え,早期の症状軽快,治癒導入に有効であるが,感染症の併発を促進する危険があり,注意が必要であるが,SJSTEN ではその有効性のため実施される症例が年々増加している.

一方,DIHS の場合にはSJSTEN と比較し,パルス療法やセミパルス療法を必要とすることは少なく,中等量・高用量のPSL 全身投与で軽快する症例が多いが,DIHS 特有な症状の遷延化があり,ステロイドの減量には慎重を要する.
ヒト免疫グロブリン大量静注療法(IVIG):近年,このIVIG は,重症薬疹だけでなく,皮膚筋炎・強皮症・SLE などの膠原病の急性悪化時にも使用され,その有効性が報告されている.

ヒト免疫グロブリンを0.4gkg日,3~5 日間を1 クールとし連日点滴投与し,症状に合わせてさらに1 クール追加する.

この療法は,免疫低下が著しく,重症感染症を合併し,パルス療法が不可能な症例の第一選択となり,SJSTEN では多数の有効例が報告されている34)―38),有効例の多くは24~48 時間以内に表皮剝離の進行が停止し,顕著な改善効果が報告されている.

その作用機序としては,①マクロファ―ジ,NK 細胞のFcγ レセプタ―のブロック,②活性化した補体による組織障害の抑制,③起炎性サイトカインのIL-1,IL-4,IL-6,TNF-a の産生・放出抑制と免疫調節作用のあるIL-10,TGF-b の産生亢進,④自己抗体に対する抗イデイオタイプ抗体による中和反応,⑤自然抗体としての抗Fas 抗体のFas-FasL 結合阻害によるapopthosis の抑制,⑥ T 細胞表面機能分子(TCR,CD4,MHC)の自然抗体によるT細胞の機能調節や自己抗体産生抑制が指摘されている4).

DIHS の場合,HHV-6 やCMV 等のHHV がその病態機序に大きく関与しているため,細菌やウィルスを中和する抗体,特に抗HHV-6 やCMV 抗体を含有するIVIG は有効であるとされ,抗HHV-6 抗体の抗体価の高いグロブリン製剤の使用が推奨される39).

また抗痙攣剤の投与が低ガンマグロブリン血症を引き起こし易いことはよく知られているが,抗痙攣剤によるDIHS40)だけでなく,他の薬剤によるDIHS でも低ガンマグロブリン血症を合併し易い41)ことからも,ヒト免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)の有用性が示唆される.