5:重症薬疹の病態と治療 | 化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 runのブログ

化学物質過敏症 電磁波過敏症 シックスクール問題を中心としたブログです

血漿分離療法(plasmapheresis;PA):PA は,血液から血漿成分を分離する過程で炎症性サイトカインや抗体を体外へ除去する治療法で,その方法には,血漿交換法(plasam exchange;PE)と二重膜濾過法(doublemembrane filtration plasma phoresis;DFPP)の2つがある.

前者のPE は,遠心分離により血漿成分すべてを除去し,新鮮凍結血漿(FFP)を補充する治療法で,臨床効果は高いが,大量のFFP が必要であり,FFPの補充による肝炎等のウイルス感染,アレルギー反応が起きる危険性がある.

一方,後者のDFPP は,二重膜分離により抗体・サイトカイン等の高分子有害物質を選択的に除去して,アルブミンを含む自己血漿を返却する治療法で,選択性が高いため,補充は少量のアルブミンのみでよいが,サイトカインは分子量が小さいため血漿中の炎症性サイトカインの除去が不十分なこともあり,PE に比較すると改善効果が少ない場合もあるという問題がある.

いずれの治療法においても,敗血症,DIC,消化管出血等の重篤な副作用による死亡のリスクがあるが,パルス療法やヒト免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)の治療法が無効な致死的なSJSTEN に対しても有効な場合があり42)―48),致死的なSJSTEN の症例においては是非試みるべき治療法である.

図3 は,前述した治療法を基本として現時点におけるSJSTEN,DIHS,AGEP を念頭に置いた重症薬疹の治療指針案である.
以上,重症薬疹,特にSJSTEN を念頭に,その診断,病態・機序,治療について解説した.

重症薬疹は,病状の進行が早い症例が多く,出来るだけ早い診断と的確な対処が求められ,多臓器障害を伴うことも多いため,関連する専門科と密に連携して治療に当たることが大切である.
 

3.重症薬疹の病態と治療に関する問題
3-1.SJSTEN の基本病態に関係するものは,次の五項目の中でどれか.
a 水疱症
b 膿疱症
c 血管炎
d 浮腫
e apoptosis
3-2.TEN の診断・治療・予後判定として誤っているものはどれか.
a 体表面における表皮剝離面積が少なくとも≧30% 以上必要である.
b 通常症状の進展を抑えるためにステロイドパルスが必要になる.
c 症状の進展を抑えるためにヒト免疫グロブリン大量静注療法が必要になる症例がある.
d 症状の進展を抑えるために血漿分離療法が必要になる症例がある.
e 基礎疾患としての糖尿病の合併はTEN の予後不良因子となる.
専門医のためのアレルギー学講座問題の解答
第2 回薬物過敏症
「3.重症薬疹の病態と治療」:池澤善郎
3―1.正解e
3―2.正解a