3:薬剤性アナフィラキシーの診断と治療 | 化学物質過敏症 runのブログ

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・NSAIDs
NSAIDs による蕁麻疹型薬疹にはI 型アレルギーによるものとアスピリン不耐症によるものがある.

I 型アレルギーによる蕁麻疹型薬疹では皮膚テストが陽性となることが多いが,通常はNSAIDs 間の交叉反応はみられない.

アレルギー機序によるものは薬剤に対する特異IgE 抗体を介したI 型アレルギーによるが,薬剤を投与後に短時間で症状が現れる.

一方,アスピリン不耐症のような非アレルギ―性のものでは数時間後に発症することが少なくない.

最近の薬疹の統計によればアスピリン不耐症を除く蕁麻疹型薬疹では内服開始から症状誘発までの時間は1 時間以内が55 例中46例(83.6%),1―3 時間が4 例(7.3%)であったのに対してアスピリン不耐症では1 時間以内は11 例中0 例,1-3 時間が6 例(54.5%),3―6 時間が4 例(36.4%)であり,この二つのタイプの薬疹の間には症状発現までの時間には違いがある9).

アスピリン不耐症ではNSAIDs の内服により喘息,蕁麻疹やアナフィラキシー症状が惹起されるが,眼瞼や口唇の血管浮腫を呈することもある10).

しばしば多種の薬剤によって症状が惹起されるにも関わらず症状を惹起するNSAIDs間に交叉する化学構造上の共通点は見られない.

また,これらの薬剤に対する皮膚テストは陰性であり,薬剤自身は肥満細胞の脱顆粒を誘導できない.NSAIDs が持つCOX-1 活性と症状惹起のしやすさとの間には相関関係がある11).

アスピリン蕁麻疹ではCOX-1 抑制活性の低い塩基性消炎鎮痛薬やCOX-2 阻害剤などの消炎鎮痛剤を用いることができることが多いとされる12).

アスピリン不耐症ではコハク酸エステル型のステロイド薬に対する過敏があるとされる.

アスピリン不耐症(特にアスピリン喘息)ではコハク酸エステル型のステロイド薬による過敏症が起こりやすいのでその使用は慎重に行うべきである.

ただしコハク酸エステル型のステロイド薬による蕁麻疹・アナフィラキシーではアスピリン不耐症と関連なしに発症しているものが多い.

またアスピリン不耐症ではパラベンや亜硫酸塩などの防腐剤に対する過敏症を有する場合があるので,これらを添加物として含む薬剤にも注意する必要があるとされている.

しかし,コハク酸エステル型のステロイドおよび防腐剤を含むステロイドを禁忌とすると,使用できるステロイド薬は限られたものとなってしまう.

点滴静注用ステロイドを使用する場合は急速静注を行わないことが重要であり,点滴静注を1―2時間かけて行いながら経過を良く観察するべきである.
ヨード造影剤とcomplement activation-related pseudoallergy(CARPA)ヨード造影剤によるアナフィラキシーは通常造影後の3 時間以内にアナフィラキシー反応が見られることが多いが,重症例では心停止にいたる場合もあり重篤となる可能性がある.

非アレルギー機序によるものとアレルギー機序による双方のものがあり,皮膚テストや少量の使用テストによる副反応の予知は困難であるとされており,現在では皮膚テストや使用テストは行われない.

ただし,喘息の既往があるとアナフィラキシー発症のリスクは高い.

近年,ヨード造影剤による非アレルギー性の反応はこの薬剤が補体を活性化し,C3a やC5a を介して好塩基球や肥満細胞の脱顆粒を促進するという機序によるのではないかとの仮説が提唱されており,complement activation-related pseudoallergy(CARPA)と呼ばれている13).

ヨード造影剤による補体活性化の反応は速く,静脈注射後90 秒でCH50 の低下がみられるという.

ただし補体の活性化が起こっても必ずしも臨床症状を伴うわけではなく,補体の活性化と他のなんらかの惹起因子の作用との共存によりアナフィラキシー(様)反応が起こるのではないかと考えられている.

補体の活性化を惹起する薬剤はヨード造影剤の他にリポソームやポリオキシエチレンヒマシ油(クレモホールEL®)などがあり,前者はドキシル®,後者はタキソール®,ビタミンK® などに含まれておりこれらの薬剤によるアナフィラキシーではCAPRA によるものが含まれる.

喘息を有する場合は造影剤によるアナフィラキシーを起こす可能性が高いとされており,CARPA を発症させる副因子として何らかのアレルギーの存在があることが関与しているのかもしれない.