表1 薬物過敏症の分類と機序
このように薬物過敏症とは言いながら,その多くの頁を薬疹に関する記述に割くことになるのは,筆者が皮膚科医であることを割り引いても故なきことではないことを,まずお断りしておきたい.
薬疹の分類としては一応広く受け入れられているものを表2 に引用しておく.この中で最も軽症とされるのは薬剤摂取のたびに同一部位にのみ皮疹を生じ,殆ど全身症状を伴わない固定薬疹である.
しかしこれも多発するとStevens-Johnson 症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)と区別がつき難い全身の紅斑, 水疱,高熱等を生ずることがある.
この中で最も頻度の高いのは播種状紅斑丘疹型である.
これは麻疹・中毒疹型とも呼ばれるように,麻疹と類似した小型の紅斑や紅色丘疹を全身に対称性に認めるものである.
このタイプはウイルス感染に伴い投与された薬剤により起こりやすく,ウイルス感染の関与がかなり高いと考えられる.
この紅斑がさらに拡大し隆起して,一見弓矢の的のような形(target lesion)の紅斑となったものを多形紅斑型と呼ぶ.これは一部に水疱形成がみられ,重症型のSJS へ移行する危険性を孕んでいる.
最も重症型として知られているのはSJS,toxic epidermal necrolysis;TEN,薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivitysyndrome;DIHS)である.
前2 者はともに皮膚・粘膜(眼,口腔,陰部)をおかし,全身に著明な紅斑,水疱,ビランを認め,高熱などの全身症状を認める.
SJS とTEN は一連の病態と考えられており,極期の際の表皮剝離面積が全体の10% 以下をSJS,それ以上をTEN とする分け方2)が一般的である.
DIHS はここ10 年程で一般化した病態で,6 型ヘルペスウイルス(human herpesvirus 6;HHV6)の再活性化を伴うユニークな病態である.
皮疹自体は播種状紅斑丘疹型,多形紅斑型に類似するが,原因薬剤開始後少なくとも3 週間以上(場合により数年)たって遅発性に発症する.
原因薬剤中止後もしばしば著明な増悪を認めるなど遅延した経過をとり,しかも多臓器病変を伴う3)ため誤診されがちな臨床型(表3)である.