薬物過敏症のアレルギー機序とその検査 | 化学物質過敏症 runのブログ

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1.薬物過敏症のアレルギー機序とその検査
杏林大学医学部皮膚科
塩原哲夫
Key words: drug allergy ―― drug-induced lymphocyte stimulation tests ―― drug-specific T cells
はじめに
薬物過敏症に関して述べるためには,まず言葉の定義から始めなければならないが,これが容易ではない.
教科書的に言えば,“immunologically mediated,unpredictableadverse drug reactions occurring only insusceptible patients(免疫学的機序により生じ,薬剤に感受性のある人にのみ起こる予知できないような過敏反応)”1)ということになる.

もう少し分かりやすく言えば“ある薬剤に反応する抗体やリンパ球を持つ人のみに起こる過敏反応”と言えるかもしれない.

しかしこの定義には多くの矛盾を含んでいる.

何ら薬物過敏症を呈さない人にも,薬剤に反応するような抗体やリンパ球は存在するからである.

それをあえて定義しようとすれば,“臨床症状を呈するレベル以上の抗体やリンパ球を持つ人のみに見られる過敏反応”という曖昧なものにならざるを得ない.

しかしこの定義の難しさ,曖昧さにこそ,薬物過敏症の概念が変わりつつある今日の姿が反映されているのである.

つまり従来信じられてきたほどには,アレルギーか非アレルギーかの区別は明確ではなく,薬物過敏症が発症するには薬剤以外の多くの要素が関与していることが分かってきたのである.
 

薬物過敏症の分類
この点に関し,国際的に統一されたものはないが,一応国際的に受け入れられている分類(表1)1)を引用しておく.

全身的なものと,臓器特異的な反応に分けた時,アナフィラキシーは全身性薬物過敏症の代表である.

教科書的に言えば,アナフィラキシーは薬剤摂取後直ちに(多くは数分から1~2 時間以内)生じ,全身の潮紅,浮腫,喉頭浮腫,血圧低下,意識消失などを呈する反応といえる.

IgE の関与が示唆されているものの,薬剤特異的IgE が証明されているのはわずかである.

血清病あるいは血清病様反応とは,薬物の他異種血清ワクチン投与後7~21 日後に生ずるもので,抗原―抗体複合体が関与する反応と考えられている.

薬剤熱という疾患名は今から100 年以上も前から知られているが,いまだにその定義,機序は曖昧なままである.

薬剤は,時にSLE や天疱瘡などの自己免疫疾患類似の症状を引き起こすことが知られているが,本当にそれらの症状が薬剤により生じたのか,薬剤はきっかけにすぎなかったのかの区別は極めて曖昧である.

臓器特異的薬物過敏症は,どこの臓器でも起こりうるが,皮膚において最も良く観察されている.

そのため薬物過敏症の話も,勢い皮膚症状(つまり薬疹)が中心にならざるを得ない.

他の臓器としては肝,肺,腎,血液などで生ずることが知られているが,因果関係を突き止めるのが難しいため機序の解明は殆ど進んでいない.

僅かに溶血性貧血,血小板減少症,顆粒球減少症が免疫学的機序により生ずることが示唆されているにすぎない.