5:可塑剤・難燃剤等による室内空気汚染の実態とその曝露量評価 | 化学物質過敏症 runのブログ

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3) ビスフェノールA
BPAについては,現在,食品衛生法において容器包装に関する基準45)はあるが,室内空気中濃度に関する指針値は示されていない.

アメリカ環境保護局(EnvironmentalProtection Agency:EPA)では,ラットの長期毒性試験における体重減少を指標としてLOAELを50 mg/kg/dayとし,不確実係数(UFに相当)1,000を適用して,BPAの参照用量(Reference dose:RfD)(ADIに相当)を50 µg/kg/dayとしている46).
実態調査により得られた数値(Table 1)から,空気由来のBPA曝露量最大値を算出すると,主婦 0.001 µg/kg/day,会社員 0.002 µg/kg/dayであった.

これらの値を前述のRfDと比較すると,空気由来のBPA曝露量最大値は,RfDの0.003%を占めると推計された.
食事由来曝露量については,2002年~2003年の環境省の調査47)で,BPAの食事中濃度は<0.0005 µg/g~0.0019 µg/gであり,検出率は3/50であった.

一方,平成14年度に東京都はトータルダイエットスタディによるBPA曝露量の調査を行っており,幼児:0.005 µg/kg/day,大人:0.002 µg/kg/dayとの報告がある48).

この調査結果を空気由来の曝露量と比較すると,大人については空気由来曝露量最大値と食事由来曝露量がほぼ等しかった.

したがって,BPAについては,室内空気由来曝露量は通常では低いが,場合によっては,食事由来曝露量と同等になるケースがあることが判明した.
4) アルキルフェノール類
アルキルフェノール類については, 4-t-OP及び4-NPについて環境省がリスク評価を行っている49).

4-t-OPについてはラットへの経口投与時の体重増加抑制を指標としてNOAELを15 mg/kg/day50)とし,4-NPについてはラットへの経口投与時の,肝,腎臓の組織学的変化を指標として,NOAELを10 mg/kg/day60)としている.

しかし,TDIについては数値が示されていないため,仮にUF=1,000としてTDIを試算すると,4-t-OP:15 µg/kg/day,4-NP:10 µg/kg/dayと求められた.
実態調査により得られた数値から(Table 1),空気由来の曝露量最大値を算出すると,4-t-OP:主婦 0.012 µg/kg/day,会社員 0.012 µg/kg/day,4-NP:主婦 0.17 µg/kg/day,会社員 0.17 µg/kg/dayであった.

これらの値を試算したTDIと比較すると,空気由来のアルキルフェノール類曝露量最大値は,4-t-OPについてはTDIの0.07%~0.08%,4-NPについては1.7%を占めると推計された.
食事由来曝露量については,1997年度の環境省の調査では4-NPの食品中濃度はいずれも検出下限値(0.1 µg/g) 未満であった(n=45)43).

一方,平成14年度に東京都はトータルダイエットスタディによる4-NP曝露量の調査を行っており,幼児:0.14 µg/kg/day,大人:0.074 µg/kg/dayとの報告がある51).

この調査結果を空気由来の曝露量と比較すると,大人については空気由来曝露量最大値の方が食事由来曝露量に比べて約2倍大きかった.

したがって,4-NPについては,室内空気由来曝露量が食事由来曝露量を上回るケースがあることが判明した.
5) 臭素系難燃剤
臭素系難燃剤については,EU諸国でDecaBDE(BDE-209),OctaBDE(臭素数6~8のジフェニルエーテル混合物),PentaBDE(臭素数4~6のジフェニルエーテル混合物),HBCD及びTBBPAについてTDIが示されている52).

これらのうち,室内空気中濃度の最大値が最も大きかったHBCD,室内空気からの検出率が高かったBDE-47及びBDE-99について曝露量最大値を試算し,TDIとの比較を行なった.

なお,BDE-47及びBDE-99については臭素数4~5の化合物であるため,PentaBDEのTDI値を用いて評価を行なった.

EUのリスクアセスメント・レポートにおけるTDIは,HBCD:TDI=100 µg/kg/day,PentaBDE:TDI=0.045µg/kg/dayである52).
実態調査により得られた数値から(Table 1),空気由来の曝露量最大値を算出すると,HBCD:主婦 0.006µg/kg/day,会社員 0.007 µg/kg/day,BDE-47:主婦 0.0004µg/kg/day,会社員 0.0003 µg/kg/day,BDE-99:主婦 0.0008µg/kg/day,会社員 0.0005 µg/kg/dayであった.

これらの値を前述のTDIと比較すると,空気由来の臭素系難燃剤曝露量最大値は,HBCDについてはTDIの0.006~0.007%,BDE-47については0.68%~0.97%,BDE-99については1.1%~1.8%,を占めると推計された.
食事由来曝露量については国内の臭素系難燃剤の調査データはほとんど無く,TBBPAの食品中濃度は1998年度の環境省の調査で(n=57)いずれも検出下限値 (0.1 µg/g)53) 未満,BDE-209についても2001年度の調査で(n=50),検出下限値(0.0005 µg/g)未満であった54).