7:新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル | 化学物質過敏症 runのブログ

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(4)近年,注目されるフタル酸工ステル類や有機リン化合物など可塑剤・難燃剤の影響

シックビルディング(ハウス)症候群はアルデヒドや揮発性の高い VOCs 等,化学物質によってのみ起こるわけではない。

最近は世界的に内装材や家電商品の難燃剤などに使用されているいわゆる揮発性が低い準(半)揮発性物質(Semi-Volatile Organic Compound: SVOCs)に注目が集まっている。

特に日本では厚生労働省は室内化学物質濃度指針値を示し,同士交通省からも建築基準法の改正による建材の内装仕上げの制限や換気設備装置の義務づけなどの対策がなされた結果,ホルムアルデヒドやトルエンなど,建材由来と考えられる揮発性化学物質濃度は徐々にではあるが下がった。

一方,最近は荒木らが本号に別途に詳述しているように (16),プラスチック可塑剤のフタル酸エステル類や難燃剤のリン酸トリエステル類など沸点が高い準揮発性物質による影響が日本の調査で認められている。

ハウスダスト中の SVOCs 濃度が高い住居ほど,シックハウス症状を訴える者が多かった。

加えて日本では難燃剤として有機リン系化合物使用は海外よりも多いので,今後健康への影響の検証も必要になる。
そのほか,高断熱・高気密の住屠で換気不足の場合には,一般住居の中で混度環境が悪化し,窓の他に壁にも結露やカビが発生し,可塑剤が分解し,より低分子で揮発性の高い物質が発生することもありうる。

ビルの中でdi (2-etylhexyl) phthalate(DEHP)から 2-ethyl-1-hexanolが発生したという報告もある (16)。

その他の物質についてはほとんど研究されていないが,住居内で SVOCsが分解した結果,2-ethyl-1-hexanol 以外の別の VOC が発生する場合の健康影響も懸念される。


(5)微生物由来の(Microbial)VOC と症状の関係住宅側の要因では,「日に見えるカビ」や「カビ臭」はすべての地域でシックハウス症候群と有意の関連を示した。

そこで微生物由来とされる MVOC 類について人の健康との関係を疫学的に調べることにした。まずフィールド調査で有用とされた拡散法を用いた捕集方法と分析を確立し,実際に,住宅で,8 種の化合物の室内濃度を実測し,シックハウス症候群の症状との関連を調査した。

この結果,室内の MVOC 濃度は「目に見えるカビ」や「カビ臭」とは有意な関連を示さなかったものの,「窓と壁の結露」がある家では 3-methyl-l-butanol 濃度が有意に高く,結露ができることで壁紙の裏など目に見えない部位で微生物が生育している可能性が考えられる。

また室内の 1-octon-3-ol 濃度が高い家ほど,シックハウス症候群のうち粘膜への刺激症状を訴える者が多く,従来,ヒトへの実験的曝露研究で指摘されたように,同様の刺激が室内でも生じている可能性が示唆された。
しかし,測定した MVOC 類の室内濃度は,動物実験で得られた結果をヒトに換算した室内推奨レベルより低かった。

健康影響については今後さらなる研究が必要であると考えられる (8, 17)。