2:ファブリーズ「瞬間お洗濯」広告が消えた裏事情 | 化学物質過敏症 runのブログ

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広告表示の問題点を提起
そんな団体からファブリーズの広告に疑問符がついたのだ。

P&Gとしては真摯に対応する必要があったのだろう。

ではどのような問題を消費者支援機構関西は提起したのか。

同団体は一般消費者からの情報提供を受けて、2017年12月19日に同社に対し、表示・広告に関して「お問い合わせ」をした。

その中で、以下のような説明をしている。

当団体は、適格消費者団体として、貴社が提供する「布用消臭スプレーファブリーズダブル除菌」(以下、「ファブリーズ」といいます。)の広告媒体であるテレビCM、webサイト、商品上の表記等(以下、「広告表示等」といいます。)に関し、不当景品類及び不当表示防止法上の問題がないか検討しております。
ファブリーズの広告表示等には、「瞬間お洗濯!」「新!ファブリーズで洗おう。」の音声あるいは文言が入っていますが、ファブリーズには「汚れを落とす」効果があるわけではなく、「汚れを落とす効果」があることを端的に示す言葉である「お洗濯」「洗おう」などの表示・表現がファブリーズの広告表示等で示されている点に問題があると考えられるからです。
そして、具体的な質問事項として、CMの開始時期や、表示の意味内容についての見解を尋ね、最後に以下の言葉で結んでいる。

当団体は、貴社が広告表示等で使用する「瞬間お洗濯!」「新!ファブリーズで洗おう。」というキャッチコピーから、「新しいファブリーズには汚れを落とす効果がある。」と誤認する消費者が出現することを懸念しています。

消費者がそのような誤認をする可能性の有無や程度に関する貴社の見解をご回答ください。
その後、支援機構関西は、同社との間で、書面による意見交換及び面談協議をおよそ1年半にわたり続けた。

本件は2017年の問い合わせも含めて非公開で行われており、その結果を2019年5月8日に初めて公開した。そこには以下の記述がある。

同社は、当団体のお問い合わせ活動における指摘に対して表示・公告の変更を約束されるなど、当団体の「お問い合わせ」活動に対して真摯に対応されました。

こうした事情に鑑み、当団体は、同社の表示・広告に対する不当景品類及び不当表示防止法に基づく差止請求を、現時点では見合わせることとし、2019年4月をもって、同社に対する「お問い合わせ」活動を一旦終了することにしました。
 

P&Gと合意した内容は
消費者支援機構関西とP&Gが合意した内容は下記のとおりだ。

1.「99.9%除菌・消臭」との表示について、「99.9%」は「除菌」のみにかかる。

そのことを明確にするため、「消臭&99.9%除菌」の表記に変更する。
2.「瞬間お洗たく」との表示を中止し、順次表示を変更していく。
また、同社は、お問い合わせの対象としていなかった表示についても、自主的に次の対応をとることを表明した。

1.「10秒スプレーで簡単お洗濯」との表示を中止し、順次表示を変更していく。
2.「空気を10秒お掃除」との表示を中止し、順次表示を変更していく。
消費者支援機構関西では、方針として、「問い合わせ」を行っている事実も含めて非公開に行っており、「申入れ」等に移行した場合、「申入れ」の内容およびそれに対する回答等、「申入れ」以降のすべての経緯とその内容を同団体ホームページ等で公開する方針をとっている。

適格消費者団体はすぐに差止訴訟を起こすのではなく、まずは申入れを行って、裁判外での問題解決を目指す。本件は申し出ではなく、さらにその前段階と言える非公開の問い合わせを行っている。そして、問い合わせ活動が終了した時点で、経緯と合意内容を公表している。

景表法は優良誤認、有利誤認等を不当表示として規定している。簡単にいうと優良誤認は一般消費者が当該商品の品質・性能等を著しく優良であると誤認する表示、有利誤認は価格などの取引条件が著しく有利であると誤認する表示である。
本件は前者の優良誤認に該当する可能性があるものだが、直接に効果・効能等を表示するものではなく、「洗濯」という言葉を使用しているところに判断の難しさがあったのではと予想する。

洗濯といえば、汚れを落とす行為を消費者は想定するであろうから、本商品を使用することを「お洗濯」と表現することが、本商品を使用するだけで、汚れが落ちると消費者が判断するかが問題である。

この点、ファブリーズのテレビCMでは「瞬間お洗濯」と音声で流れるのに対して、「消臭する工程を洗濯と比較。汚れを落とすわけではありません」(こうした表示を打消し表示という)の文字が表示されており、ネット広告の文字情報では「お洗濯」に比して小さい文字で打消し表示が書いてあるために、これをもって適切な表示と言うことができるかが、話し合われたのであろう。

クリーニングにかかわる業界団体、機械・資材団体などによって組織されるクリーンライフ協会が調査会社マクロミルに依頼して、消費者の調査(サンプル:全国に居住する20~60代の男女1550人、男女同数)を行っている。

そこでは、過半数がスプレーすると「汗などの見えない汚れが落ちると思う」と答え、汚れが落ちると思う最大の理由は「CMや広告でみたから」となっている。

また、スプレーしている衣類をクリーニング店に出す回数が減ったのは約3割だという。

日本女子大学家政学部被服学科の榎本一郎教授(テキスタイル整理学)は「スプレー式消臭剤を使うことによって、洗濯の機会が減ると汗などの汚れにより衣類に黄変が起こることがあり、汚れが落ちにくくなる場合もある」とも話す。

最終的にP&Gが表示を中止することを表明
最終的に、本件は当該表示の景表法上の違法性判断を避け、P&Gが自ら、該当する製品表示の使用を中止することで決着した形だ。

もともと景表法は行政法規であり、その施行主体は消費者庁であり、裁判を経ずに行政措置という形で不当表示の排除命令ができる。

適格消費者団体の場合は民事裁判に訴えて主張を確定させる必要があるが、その前段階の申入れや問い合わせも、その権限を背景として行われるものであるから企業にとっても訴訟リスクを前に真摯な対応が必要となるであろう。

不当表示は消費者の適切な購買行動を歪め、損害を被らせるが、まっとうな表示を行っている企業も不当に顧客を奪われるという意味で被害者である。

健全な消費者市場を確保する意味で、景表法の消費者庁による法執行に加え、適格消費者団体の活動が注目される。