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その2は、腐植質(フミン質)が多いことである。フミン質とは、有機物を微生物が分解しきった残物で、これ以上どの微生物も分解できない物質のことだが、だからといって有用性がない訳ではない。
フミン質にはイオン交換能力があるため、チッ素、リン、カリ、マグネシウム等を保持することができる。
すると、植物は、クエン酸、酢酸等の有機酸を分泌して、これらアンモニア・硝酸、リン、カリ等を溶かして体内に取り込むのだ。
また、フミン質は水分保持に優れ、土壌の団粒状態の形成に寄与している。そのため土壌の保水力が増し、干ばつを防ぐ効果がある。
その3は、堆肥化で働いた微生物(善玉菌)を再活用することによって、連作障害を防止することができることである。
連作障害はウイルスや寄生細菌、線虫が感染して発生する。
堆肥中の枯草菌群(好気性超高温発酵菌)は、細胞中のタンパク質や脂質をエサにしており、食べることによって温度を上昇させる。
残った細胞壁はキチン質・セルロース等でできており、これを放線菌群(好気性中温発酵菌)が分解する。
また、やはり善玉菌の乳酸菌類(適性嫌気性高温発酵菌)も加わって、熱に弱い悪玉 菌やウイルスを死滅させ、連作障害を防止することができるのである。
その4は、善玉菌が分泌する植物ホルモン作用によって、野菜・果実の味が良くなり、糖度が増すことである。
枯草菌はオーキシン、放線菌はサイトカイニン、乳酸菌類はサイトカイニンとオーキシンの両方を、分泌することがわかっている。
この作用は重要で、これにより糖度が高く、日持ちが良い果物等の高付加価値生産が可能になる。
善玉菌の王者「乳酸菌」の活用
乳酸菌は人の健康にも、動物・植物の健康にも良い影響を与えることがわかっている。
私も乳酸菌を用いた水稲栽培にかかわっているが、乳酸菌を活用することで、稲の伸長が良くなり分けつ数が増える、茎が固くしっかりする、収穫数量が多くなることが証明されている。
また、無農薬でメロンを栽培したいというマレーシア農業公社に対し、乳酸菌利用のアドバイスもしている。
乳酸菌を使うことで、農薬を使わなくても、立派なメロンが栽培できている。
さらに、マレーシアとシンガポールで、抗生物質・抗菌剤を一切使わないニワトリや豚の飼育にも関わっている。
エサに乳酸菌を混ぜて与えると、糞も臭わず、安全・安心で美味しい生産物ができるのである。
抗生物質は悪玉菌を殺すために開発されたものだが、そのもとは放線菌から作られている。
抗生物質は人や家畜に多用されており、その耐性菌が数多く出現し、逆に人や家畜の健康を脅かしつつある。
しかし、前述の例のように、乳酸菌やビフィズス菌(放線菌の一種)などの善玉菌を活用することにより、抗生物質や抗菌剤なしでも動物の飼育はできる。
プロバイオティクス環境農業を発展させよう!
人も動物も植物も、その健康の基礎は免疫である。
免疫を強化するには、善玉菌と人・動物・植物の共生関係を確立する必要がある。
今、健康分野では、プロバイオティクスが発展中である。
これを農業分野に広げることにより、農薬等による環境汚染問題の解決につなげることができる。
安心・安全・美味の生産物はブランド化にもつながり、農業の高収益化をもたらす。
今後も、このようなプロバイオティクス環境農業を皆さんとともに発展させたいと願っている。
(文責・中下裕子)