・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
・http://kokumin-kaigi.org/wp-content/uploads/2019/04/JEPAnews113_web.pdf
松井三郎氏(京都大学名誉教授)
生態系と人体にとっての微生物の働き
―有機農業と腸内環境での善玉菌・悪玉菌
はじめに
私は農業循環サイクル(図1)の確立のための研究に従事してきた。
その中で、微生物の働きについて面白いことがわかってきたので、本日はその話をしたい。
人の食と健康
人が健康を維持するには、腸内環境を整えることが大切であるといわれるようになってきた。人は一生涯で70トン(米6トン、小麦2.6トン、野菜7.5トン、乳3.4トン、魚3トン、ミネラル、水分など)という膨大な食品を摂取するといわれているが、健康を維持するために大事なことは、これらの食品をバランス良く食べることにより、腸内細菌のバランスを保つということである。
人の体内に棲む細菌数は約38兆個以上、重さにして約1.5kg といわれている。
これらの細菌には、大きく分けて①善玉菌、②悪玉菌、③日和見菌がある。これは人間にとって都合が良いかどうかで分類したものだが、その比率は概ね2:1:7であるといわれている。
デンマークの研究者のグラムは染色によってグラム陽性菌とグラム陰性菌に分類しているが、グラム陽性菌には乳酸菌、放線菌など概ね善玉菌が含まれ、グラム陰性菌には大腸菌など概ね悪玉菌が含まれている。
日和見菌は、人の体が弱っていなければ特に悪さはしないが、人の体が弱ってきたら、悪玉菌と一緒になって人を病気にさせてしまう。
腸管免疫のしくみ
人は食品から栄養を摂取しているが、これらの食品には、善玉菌のみならず悪玉菌・日和見菌や、さらには有害化学物質なども含まれている。
病原細菌も、食品同様に、タンパク質、炭水化物、脂質から作られているが、病原細菌を吸収しないようにするためには、悪玉菌や有害化学物質を排除するしくみが必要だ。
これを担っているのが小腸、中でも M 細胞とパイエル板である。
ここで善玉・悪玉や有害化学物質の判定を行うと同時に、リンパ系の作動や抗体反応の指示を行っている。
このような免疫システムの働きに重要な役割を果たしているのが腸内細菌なのである(木村‐黒田純子氏の講演録も参照)。