・出典:東京都健康安全研究センター
http://www.tokyo-eiken.go.jp/archive/issue/kenkyunenpo/nenpo64/
研究年報 第64号(2013)
・室内空気中化学物質濃度の低減化対策について
住宅で使用される建材や施工材の他、家具、日用品、家庭用品等から放散する化学物質による健康影響が問題になっています。
以下に、室内空気中化学物質濃度の低減化対策について述べます。
化学物質の室内濃度は一般的に次のような性質を持つと考えられています。
化学物質の室内濃度は、それを放散する建材・施工材の使用量が多いほど高くなる
建材・施工材の選択によって化学物質の放散を低減できる
化学物質の室内濃度は時間が経るにつれ次第に低減していく傾向があり、この低減速度は建材・施工材の種類・放散する物質によって異なる
建材・施工材の温度が高くなると、化学物質の放散量が大きくなる傾向がある
換気量が多くなると化学物質の室内濃度は希釈されて低くなる
外装、基礎、床下、天井、構造躯体、内装下地材、内装仕上げ材の順番に後者ほど室内濃度への影響が大きくなる傾向がある
したがって、設計・施工者は住宅の設計・施工にあたって、
適切な材料選定を行うこと
現場での適切な施工管理を行うこと
通風、換気へ配慮した設計を行うこと
が、化学物質の健康影響の低減化のために重要です。
さらに、引き渡し時には、入居者に対し、化学物質による健康被害を低減していくための住まい方について説明を行うことが重要です。
特に高気密・高断熱仕様の住宅については、換気の重要性を説明する必要性があります。
具体的には、次のような処置が有効です。
化学物質の放散が少ない建材・施工材を選定する。ホルムアルデヒド放散量が最も少ない規格はF☆☆☆☆。
その他の建材や化学物質については、メーカーから入手できるデータを参考にして適切に選択する。
接着剤・塗料等は種類、使用量を適切にし、できるだけ養生期間をとる。
空気の流れを効果的にするため、適切な位置に窓、換気口、換気設備を設ける。
工期中から入居までの間、換気を十分にする。
リフォームの場合は、居住者の安全を考慮した施工方法(パーティションなど)をとる。
居住者は、上記のことを理解し、設計・施工者に指示し、設計や材料選択が適切か、建築現場で正しく施工されているかを確かめることが重要です。
住宅を購入する際には、上記のことが配慮された住宅かどうか販売者に確認する必要があります。
なお、日常の暮らしの上では、
窓の開放によって自然換気を積極的に取り入れる。
給気口をできるだけ開けた状態にする。
室内ドアを開放して通気経路を確保する。
窓を閉め切った場合は台所換気扇を運転する。
室内空気汚染源となる可能性のあるものは、それらをできるだけ持ちこまない。
等の配慮をすることが重要です。
入居後に室内汚染が問題となった場合、給気口や換気装置の設置・増設、発生源の剥離・被覆・除去、焼き出し(ベークアウト)、吸収剤の塗布、空気清浄機の設置等の対策が考えられます。
吸収剤や空気清浄機は、汚染物質によっては効果がないことがあります。
処置を行う前に、問題となった汚染物質に対して十分な効果が上げられるかどうかを施工者、販売者に良く確認しておきましょう。
参考文献
健康住宅研究会:室内空気汚染低減のための設計・施工ガイドライン及びユーザーズ・マニュアル, 1998.