・2) 鶏卵16)・牛乳17)
国産の試料として鶏卵30検体は2002年,牛乳15検体は2003年に都内で購入した.
鶏卵はアセトニトリル抽出後,石油エーテルに転溶し,牛乳はエタノール,エーテル及びヘキサンで抽出後,それぞれフロリジルで精製,ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で脱脂操作を行いGC/MSで測定した.検査対象化合物は上記の豚・鶏肉と同じである.
定量限界は,鶏卵で全重量中濃度としてα-,β-,γ-,δ-BHC が0.0005 ppm、その他の化合物は0.0002 ppm.牛乳では全ての化合物で0.0002 ppmであった.
食肉と同様にいずれの品目もDDTの検出頻度が高い傾向が見られ,DDTの残留濃度は検出された鶏卵で0.0002~0.0022 ppm,牛乳で0.0002~0.0005 ppmであった(表2).
調査時に鶏卵の基準は設定されてなかったが,FAO/WHOの最大残留基準値(DDT:0.01 ppm)の1/50以下,牛乳は暫定許容基準(DDT:0.05 ppm)の1/100以下であった.
残留濃度は全重量中濃度であるため食肉に比べ低いが,脂肪中濃度に換算するとほぼ同じ濃度レベルを示した.
脂溶性の高いDDTなどの有機塩素系農薬は脂肪に蓄積されやすく,試料の脂肪含量が残留濃度に影響するものと考えられる.
3) サケ類19)
水産食品は食肉などに比べ品目が多様であるため,消費量もある程度多い魚種を定めて残留濃度の調査を考えた.
また,Hiteら20)は,サケ類に残留するダイオキシン,PCB及び有機塩素系農薬は天然に比べ養殖,特に欧州産の汚染濃度が高い結果を示し,摂食によるリスクの検討を示唆したことから数種のサケを対象に残留調査を実施した.
試料は2004年都内で流通するサケ類30検体を購入し,分析法は食肉の抽出方法を用い,フロリジルで精製後GPCで脱脂操作し,GC/MSで測定した.
検査対象化合物は上記の豚・鶏肉の項目とクロルデン(trans-クロルデン,cis-クロルデンなど),HCBとした.定量限界は全重量中0.001ppmである.
天然の試料数が少なく養殖との比較はできないが,原産地域により多少の傾向が見られた.DDTは畜産食品と同様に検出が30検体中23検体とその頻度が高い.
南半球のチリ,ニュージーランド産養殖サケの0.001~0.002 ppmに比べ北欧のノルウェー,デンマーク等では全ての検体から0.001~0.014 ppmの範囲で残留して,検出率と共に高い傾向が見られた.
そのほかDDTに比べ濃度は低いがディルドリン,cis-クロルデン及びHCBの残留も認められた.ポジティブリスト制で設定された魚介類(サケ目魚類に限る)の残留基準はDDT 3 ppm,ディルドリン0.1 ppm,クロルデン0.05 ppm,HCB 0.1 ppmで基準に比べ濃度は低いものの広く残留していることを示している(表3).
また,チリ及びデンマークでサケ養殖に使用される飼料の一部を検査したところ,チリの飼料からは定量限界を超えての検出は見られなかったが,デンマークの飼料からはDDT,cis-クロルデン,ディルドリン及びHCBが数ppbレベルで検出され,養殖サケでの残留パターンが酷似していた.
以上の結果から,養殖のサケは環境からの化学物質の暴露に加え,残留性の高い農薬等に汚染された飼料の摂取による生体濃縮によって,これが要因となって農薬残留が生じると考えられた.