6:化学物質過敏症高リスク群と関連因子に関する研究 | 化学物質過敏症 runのブログ

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(4) ロジスティック回帰分析による検討単変量解析でP 値が0.25~0.15 以下の項目を独立変数として選出し、変数増加法(尤度比)によるロジスティック回帰分析を行った。
P 値0.25 以下の場合32 変数の選出、P 値0.15以下の場合は25 変数選出され、どちらの場合もstep9 で同様の9 変数で安定した。

モデルに選出された9 変数は、32 変数の場合も、25 変数の場合も“性別=女性”“アトピー性皮膚炎あり”“金属アレルギーあり”“手足の冷えあり”“疲労あり”“新居入居回数1 回以上あり”“異臭あり”“就寝時間23 時以降”“自覚ストレス:中程度・多い”であった。

モデルχ2 検定の結果はP<0.01 で有意であり、各変数も有意(P<0.05)であった。

モデルの予測精度を示すHosmer & Lemeshow の検定ではP=0.480 で予測精度は高く、判別的中率は91.0%.であった。
就寝時間23 時前を基準とした時に、23 時以降では偏回帰係数-0.34 、オッズ比.71(95%CI0.51-0.99)であった。

MCS 高リスク群で23 時前に就寝するのは11.3%、23 時以降は88.7%で、対照群では23 時前9.1%、23時以降90.9%でMCS 高リスク群のほうが23時前に就寝する割合が対照群より若干多かった(2.2 ポイント)。
このモデルに選択されなかった変数で分割表の検定で有意であったものは、改築・増築・リフォーム、高速道路、工場、ゴミ処理場、運動習慣などであった。

有意ではなかったが、MCS 高リスク群は平熱34.5-35.9 度が34.5%で、対照群は31.0%と高リスク群は低体温がやや多い傾向にあった。

これは、有意であった“手足の冷えがある”という状況が循環不全を示しており、低体温と何らかの関係があることを示唆している。

表6 MCS 高リスク群と生活要因等との関連

(5) MCS 発症予防に向けての展望
今回の調査結果から、女性やアトピー性皮膚炎、かび・ほこり・ダニアレルギー、蕁麻疹、食物/薬物/金属アレルギーをもつ人、新居入居・改築・増築・リフォームの経験がある人はMCS になる可能性がそうでない人に比べて高いと考え、日々の生活に気をつけるよう周知する必要があることが示唆された。
また、手足の冷えや疲労感、異臭を感じる場合は、MCS 患者によく見られる症状が現れているとも考えられる。
具体的な予防策としては、異臭については、多くのMCS 患者は嗅覚が敏感となるため、異臭を感じた対象や場所から即座に離れることも予防として重要である。

新居入居・改築・増築・リフォームをする際や、高速道路・国道、線路、工場、ごみ処理場が周囲にある場合は、極力、化学物質に被曝しないよう対策をとることが重要である。
生活習慣については、運動で汗出しをすることで化学物質を排出し、ストレスで免疫が低下しないよう、ストレス発散をしていくこと、また身体の冷えを取っていくことも予防策として有用であると考えられる。
また、今回の調査で、予想以上にアレルギー症状をもつ対象者が多かったため、アレルギー症状の有無をどれか1 つでも“ある”と回答した対象者にフラッグを付ける形で分析したところ、全対象者4,630 名が何らかのアレルギー症状を有していることがわかった。

症状の有無という自覚症状を聞く質問紙調査であるため、診断と直結しているかは不明であるが、この点については、今後、検討すべき課題と考える。
5.主な発表論文等
なし
6.研究組織
(1)研究代表者
鈴木 珠水(SUZUKI, Tamami)
群馬パース大学・保健科学部・准教授
研究者番号:80458471
(2)研究分担者
馬醫 世志子(BAI, Yoshiko)
群馬パース大学・保健科学部・講師
研究者番号:10458474