フレグランス*6に潜む健康リスク―米環境団体EWGの報告書から
一方、米国を代表するNGO「環境ワーキンググループ」(Environmental Working Group:EWG)は、「安全な化粧品キャンペーン」の一環として、フレグランス(香り)問題に取り組んでいます。
わたしたちが愛好する「バラの香り」は、「バラのような香り」であり、天然のそれとは全くの別物です。
人工化学物質を使って作られた自然界には存在しない合成香料です。
2010年 EWG は、香水、コロン、ボディスプレーなど市販されている17ブランドの製品に含まれる化学物質の試験をしました。
その結果、製品のラベルに表示されてない化学物質が38種類(1製品に平均14種類)検出されました。
それらの中には内分泌かく乱物質が12種類(平均4種類)、アレルギー反応を引き起こしやすい化学物質などもありました。
とくに、精子数減少や肝臓がん、乳がんなどへの影響について科学的証拠がでているフタル酸エステル類の DEP は、検査した製品の75%に含まれていました。
DEP は、2004年時点で米国人の97%から検出されているほど、人体を汚染しているのです。
香りつき商品に対する正確な認識を
「香り」「香水」と聞くと、その音の響きには良いイメージがあり、まさか危険な人工化学物質で作られているとは誰も思いません。
その誤解が香害の始まりなのかも知れません。
今日、香りつき商品との接触によって引き起こされるアレルギーは、欧米でも大きな健康問題に発展し、アレルギー誘発物質のトップ5のなかにフレグランスが入るほどです。
香りつき商品に接触しただけで、頭痛や吐き気、胸がしめつけられるように痛む人が出てくるようでは、健康な生活に差し障ります。
生活に溢れる香りの元は、ほとんどが人工的な合成香料です。
香害への対策は、まずその再認識から出発したいものです。
*1 サーベイ・サンプリング・インターナショナル(SSI)によるウェブ調査。
年齢、性別、地域を代表する1137人を全国から無作為に抽出したサンプルを使用。
*2 Steinemann A: National Prevalenceand Effects of Multiple ChemicalSensitivities. J OccupEnviron Med. 2018
*3 米国では芳香成分の入った空気清浄機はエアーフレッシュナーと呼ばれているが、日本ではアロマディフューザーと呼ばれる類似商品も多い。
*4 Unpacking the Fragrance Industry
(science director of Women’ s Voices forthe Earth)
*5 GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)とは、化学品の危険有害性(ハザード)ごとの分類基準とラベルや安全データシート(SDS)の内容を調和させ、世界的に統一したルールとして提供するもの。
2003年に国連勧告として採択され、日本を含め欧米各国は化学品の分類や表示をGHSを導入して行っている。
また、その結果はSDSに反映される。
*6 合成香料は、用途によって大きくフレーバー(食品香料)とフレグランス(香粧品香料)に分かれる。
フレグランスは、香水や化粧品、洗剤、消臭・芳香剤などに使用される。
*IFRAが公表した香料とその調合などに使う化学物質約3000種類のうち1506種の化学物質は、GHSで毒性や危険性ある化学品に分類されています。