● なぜ見過ごされてきたのか 「安全性軽視」や慣れあい?
「不良製品」や「施工ミス」がなぜ見逃されてきたのか。
そこには日本の電力業界に根ざす「構造問題」があるように思われる。
まず「安全性軽視」だ。
東電の場合、2010年度に実証実験を始めたが、福島第一原発の事故で中断し、仕様変更などをして14年4月に切り替えを始めた。
20年度末に導入を終えるという10電力会社の中では最短の計画を公表している。
そのために製品の製造と設置作業を急ぎに急いでいる(他社は中部電力の22年度末など、22~24年度)。
その過程で安全が二の次にされた疑いがある。
東電管内では16年5月から発火事故が起きていたが、東電PGがそのことを自社のサイト(ホームページ)で発表したのは、最初の発火から2年半後、東京新聞が報道した翌日の昨年11月19日だった。
そのサイトでは、発生したのは「メーター内部の基板部分の発熱による焦げ跡や異音などの不具合」であり、「メーターの各種部品には難燃性の部材を使っているので、建物に被害を与える可能性は極めて低い」と記している。
しかし、つくば市の場合など、真夜中に発生して気づくのが遅れていたら、どうなっていただろうか。
スマートメーターの突然の発火に驚き、水をかけて消火しようとした人もいたが、これは感電の可能性のある危険な行為だ。
「スマートメーターは発火する可能性があること」や「消火には粉末式消化器を使うこと」などを事前に広報しておけば、このような行為は防げたはずだ。
次に指摘できるのは、「ファミリー企業」で仕事を分け合うことによる慣れ合いの体質だ。
東電発注の検針器は、東電幹部が天下りしているメーター製造会社4社が受注してきた。
東光東芝メーターシステムズ(東電が35%出資する東光高岳の子会社)・大崎電気工業・三菱電機・GE富士電機メーターの4社だ。
スマートメーターでもこの「慣行」が続けば、コスト高・料金値上げの一因になると、原発事故の後、指摘され、メディアでも「スマートメーター利権」(『週刊ダイヤモンド』12年4月14日号)などと取り上げられた。
このため東電は、予定していた「指名入札」をやめ、「国際入札」にしたが、結果は従来と変わらなかった(網代太郎『スマートメーターの何が問題か』)。
その東光東芝メーターシステムズ製のメーターで、不良製品が9万台も出たのだ。
競争もなく身内同士の受発注で、製造工程や品質の管理に甘さがあったと言われても仕方がない。