・現在日本でもっとも普及しているのがフィリップモリスインターナショナルの「IQOS(アイコス)」で、その意味は「私は普通の喫煙をやめました(I Quit Ordinary Smoking)」です。
アイコスの主流煙中ニコチンの量は、紙たばこの約半分から同程度検出、または、ほぼ同じという報告があります。
また、その他の有害物質、ニトロソアミンは標準の紙たばこの5分の1程度で、一酸化炭素は100分の1程度。
有害物質のばく露量はかなり下がりますが、ニコチンの量はそれほど下がらないという結果です。
米国の食品医薬品局(FDA)や英国のリスク評価(2015年)では、アイコスから発生する有害成分は低減しているものの、紙たばこよりも健康リスクが低いとは現段階ではいえないとしています。
詳しい毒性研究がまだ十分蓄積されていないからです。
国や東京都の受動喫煙防止法案
受動喫煙対策の努力義務(第25条)が盛り込まれた「健康増進法」が施行されたのは2003年です。
そして、2018年3月に政府は受動喫煙対策を強化する健康増進法改定案を閣議決定しました。多くの人が利用する公共の場での禁煙を初めて罰則付きで義務付けるものです。
これまで受動喫煙防止の努力義務しかなかった飲食店も原則屋内禁煙となり、2020年の東京五輪・パラリンピックまでに全面施行される予定です。
この改正案では、加熱式たばこも規制対象にすることが追加されています。
ただし、紙たばこが飲食不可の喫煙スペースでのみ喫煙可なのに対して、加熱式たばこは喫煙室での飲食が認められており規制が緩くなっています。
2018年4月に発表された「東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」では、加熱式たばこと紙たばこが同一に規制されていました。
ところが、東京都は6月5日に骨子案の一部を変更し、加熱式たばこの規制を緩めました。
この変更によって、都の条例でも飲食店などでは分煙すれば加熱式たばこを吸えるようなりました。
子どもがいる室内ではNG!
煙が目に見えないから油断しがちですが、乳幼児のいる部屋で加熱式たばこを吸うことは、紙たばこと同じような注意が必要です。
最近では、ベランダで紙たばこを吸っていた若い父親が室内で加熱式たばこを吸いはじめ、知らずに乳幼児に有害物質をばく露させているケースが増えているといわれています。
自室内で使用した場合、同居者は低濃度であっても有害物質に長期間さらされることになるのです。
加熱式たばこについての知識がない人だけでなく、「加熱式たばこは喫煙ではない」「禁煙の場所でも使用可」という間違った認識を持っている人がまだ多くいます。
しかし、公共の場所、屋内に限らず屋外であっても“禁煙”の場所では原則として加熱式たばこを使用してはいけなくなるのです。
自分の家なら“公共”の場所でないから、と安易な気持ちで使用することは、やめてほしいものです。
*1 エアロゾルとは、気体中に浮かぶ微小な液体、個体の粒子の総称。例:虫ケア製品(殺虫スプレー)、台所用アルコールスプレーやミストサウナ。
加熱式たばこから発生するエアロゾルは無害な水蒸気を連想させる「蒸気」ではなく、たばこの有害物質を含む霧・ミストです。
*2 EPAの 空 気 質 分 類 で はPM2.5が150.5~250.4μg/㎥は 大 い に 危 険(veryunhealthy)、250.5μg/?以上は危害を与える(Hazardous)レベルとされています。
[参考文献]
『加熱式タバコと健康―使用実態・科学的評価と今後の課題』(公開シンポジウム抄録集)一般社団法人日本医学会連合、2018年3月25日