・出典:ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議
ニュースレター第111号 2018年6月
・加熱式たばこも受動喫煙防止法の規制対象に
―禁煙、分煙、嫌煙、新しいたばこにどう向き合う
理事 水野玲子
2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて、国や東京都の受動喫煙防止の法・条例が整備されつつあります。
「東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案」では、当初「加熱式たばこ(蒸気たばこ、たばこベイパー)」と紙たばこは同一に規制される予定でしたが、6月5日に加熱式たばこの規制は緩和されることになりました。
非喫煙者には、加熱式たばこはあまり知られておらず、見たことがない人も多いと思います。しかし、ほんとうに加熱式たばこには受動喫煙の恐れはないのでしょうか。
3月末に東京大学で開催された「加熱式タバコと健康―使用実態・科学的評価の現状と今後の課題」と題するシンポジウム(日本医学会連合主催)には、数百人の参加者が会場を埋めつくしました。
加熱式たばこの安全性は、今ホットな話題となっています。
急速に広がる加熱式たばこ
「副流煙がない」「室内の空気を汚さない」「有害性が低い」をうたい文句に、2013年以降メーカーが競って加熱式たばこの販売を始めました。日本で加熱式たばこは急速に売り上げを伸ばし、早くも世界シェアの98%を占めるに至っています。
そして受動喫煙の問題が騒がれている昨今、職場では紙たばこ、自宅では加熱式たばこと使い分け、併用する人が巷に増えています。
加熱式たばこは、“heat-not-burn”といわれるように、加熱するが燃やさないという新型たばこで、ニコチンを含むエアロゾル*1を発生します。
しかし、煙が見えなければ安全であると簡単にいえるのでしょうか。
加熱式たばこから発生するのは、無害な蒸気などではなく、たばこの有害成分を含むエアロゾルなのです。
加熱式 たばこは電子たばこ(VAPE:ベープ)とは違います。
電子たばこは、ニコチンを含んだ溶液(リキッド)などを加熱吸引する方式です。
ニコチン入りと無しがあり、ニコチン入り電子たばこは、日本では医薬品医療機器等法(旧薬事法)で不認可なので、ネットで海外から輸入する人もいます。
一方、たばこ事業法で認可されている加熱式たばこは、葉たばこを加熱して吸引します。
葉たばこに含ませたグリセリン類を熱し、煙とは違ったエアロゾルを発生させます。
燃やさないのでタール量は大幅に減ります。
加熱式たばこにも受動喫煙のリスクありそれでは、加熱式たばこの喫煙では体内に入る有害物質は減るのでしょうか。
また、非喫煙者の受動喫煙リスクは減るのでしょうか、加熱式たばこの方が紙たばこより安全という証拠はあるのでしょうか、いくつか疑問点があります。
見た目には煙が立たないので、副流煙が発生しないようでも、実験の結果、加熱式たばこを吸っている人から2m 以内で PM2.5を測定したところ、100~800μg/㎥認められました。
一見して副流煙は発生しないものの、受動喫煙に相当する汚染空気がでていることが判明しました。
米国 EPA(環境保護局)の空気質分類によれば PM2.5が150μg/㎥以上の空気質は健康に差し支える値*2です。