そういった観点で見ると、例えば2番目のテキサノールであれば292倍、このMOEがどのくらいあればいいかということが次は問題になりますけれども、ここは優先順位を求める観点からは、この値が大きいほうはそれほど懸念がない。
小さい値であれば、ある程度の懸念があるというか、指標値をさらに毒性評価あるいは暴露評価をもっと詳しく調べて検討する必要があるのではないかという指標になるということにしています。
例えば、ごく一般的な話とすれば、慢性影響のデータがあった場合とヒトでのデータがあった場合のヒトでの無毒性量、ヒトでの最高暴露濃度の比が、通常の化学物質の場合ですと、100ぐらいが大体の基準になっている。それは安全係数に使うのは大体100だということから考えられるところです。
幸い、ここで見た値はぱっと見は100を切る値はないというところですけれども、今後はまた毒性評価を精査した場合は、微妙に値がずれていくので、最終的なリスクをあらわしているものではありません。
なお、実は検出濃度について、細かい話になりますけれども、これはトルエン換算での濃度の数値になっているところです。
実際に毒性の数値はそれぞれの化学物質の分子量を換算したときの濃度ですので、そこにはまた分子量の差が少し不確実係数として混在しているということで、トルエンより分子量が大きい物質の場合は、ひょっとしたらもうちょっとマージンが小さくなる結果になるかもしれません。
ともあれ、大まかな目安として、どういったところから手をつけていればいいのかということが導き出せるような初期評価を示したのが、この資料1-1になります。これがこれまで主に指針値、基準値が決められていなかった物質について調査して、優先的に高い物質であろうといった物質を選定わけです。
続きまして、資料1-2、こちらにつきましては、既に指針値が設定されている物質について見直しをしてはどうかという案で、これは毒性の評価の観点から資料として作成させていただきました。
既に指針値が設定されている物質のうちで、指針値自体が主に2000年から2002年、2003年の間に多分策定されていますので、既に15年以上時間がたっているということで、新しい毒性データもたまっている。その間にもっと感度の高いあるいはより妥当な毒性評価はないかということで、こちらについても2000年以降の新しい文献について調査した結果、従来の基準よりも低い値を見つけることができた物質として、4物質ありました。
その4物質はキシレン、エチルベンゼン、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシルの4物質でした。
それぞれについて、その発生源を示していますけれども、これはもとの検討会のところから出てきたものを抜き出しただけでして、これについて、室内の現行の指針値をそこで示しています。キシレンは870μg/m3 、エチルベンゼンは3,800μg/m3 、こういった値が2000年の評価での報告で指針値として策定されたわけです。
それについて、例えばキシレンでありますと、その最初の知見ということで、そこで過去の値と現状が説明されていますけれども、現行の指針値というものは、実は妊娠ラットの吸入暴露の中枢神経影響というものを根拠にして設定されたところですが、米国のATSDRという主に化学物質の評価を行っている評価文書によりますと、例えば慢性のしかも吸入暴露については、ヒトでの影響ということを指標について、そのときのLOAEL 14ppmを根拠に、不確実係数はそこに書いてある300という値を適用していますけれども、0.05ppm、μg/m3 に換算すると、約200μg/m3 が、妥当な指標値ではないかというのを、評価書レベルで公表されているところを見つけることができました。
これは従来の870μg/m3 よりも低い値ですし、従来の値は動物の値を用いた。
今回はヒトでのより低いところで幾ら出るというものを指標にしているので、基準値、指針値としては、870μg/m3 より200μg/m3 がよいのではないか。
これにつきましては、米国の評価をそのまま使うというわけではなくて、この後、もっと詳細な評価をして、指針値、米国と日本では体重からの呼吸への変換、あるいは体重のデフォルト値等々、実は細かいレベルで評価の設定が違いますので、この200μg/m3 がそのままになるわけではないですけれども、おおむねこのようなレベルになると思われます。
おおよそNOAELで比較すると4分の1相当ぐらい、動物は0.20ppm、ヒトの場合は、これは24時間暴露の平均がかかってくるので、そのまま比較することはできませんけれども、0.05ppmですね。
そういった観点から4倍ぐらい低く設定し直したほうがいいのではないかという最近の毒性の知見からのそういう提案ができるだろうということで、再評価の候補物質として、キシレンを挙げることができるということで、ここに示したところです。
同様の観点で、エチルベンゼンについては、2000年当時は13週間、短期の試験だったのですけれども、そのすぐ後ぐらいに、実は2010年の評価では、2年間の暴露のデータも新たに公表されていまして、それから求めると、これはかなり違うのですけれども、3,800μg/m3 から250μg/m3 相当、約10分の1近くになりますけれども、そういった値のほうが妥当ではないかということで、エチルベンゼンが示されているところです。
あと2つ、フタル酸ジ-n-ブチルとDEHP、こちらにつきましては、実は2000年の評価の当時、あるいは、経口暴露、これらの物質は吸入暴露の実験はほとんどないので、経口暴露の実験しかないのですけれども、そのときも厚労省あるいはIPCSというWHOの化学物質の評価の国際機構ですが、そこで求めたTDIを参考に、その値から吸入への換算を行って、当時は室内指針値を決めています。これも実は2014年に食品安全委員会で日本としてもTDIを再評価というか、時間もたったので再評価して経口暴露のTDIを設定したところ、当時2000年に厚労省あるいはWHOでつくった値よりも低い値が公表されております。これは換算の仕方を同じようにすれば、TDIの違いの比の分だけ室内濃度指針値をある程度低くすべきであろうと。例えば、フタル酸ジ-n-ブチルであれば、40μg/kg/dayから140μg/kg/dayというTDIだったわけですけれども、最新の食品安全委員会は5μg/kg/dayになっている。約10分の1近くは低い値がTDIとして設定されていますので、室内指針値も10分の1近く下げたほうがいいであろうと。
?DEHPについては、それほど大きな違いはないのですけれども、66μg/kg/dayから30μg/kg/dayなので、約半分ぐらいの低い値になるということが、再評価すると設定し直すことができるであろうと。そういった観点から、過去の指針値のうち、この4物質については、数倍から10倍近く低い値を設定したほうがいいのではないかということで、資料1-2を説明させていただいたところになります。
以上が、資料1-1、資料1-2の説明になります。